2002年、NPO法人ETIC.(以下エティック)と日本電気株式会社(以下NEC)との協働で、社会起業家を支援する国内唯一のプログラムとして始まった「社会起業塾イニシアティブ」。時代の流れに合わせて、支援対象、協働企業ともに幅を広げながら、社会起業家支援のプラットフォームとして、事業推進、経営など組織基盤の課題解決を伴走支援してきました。これまで卒業生は156名(2024年度まで)、事業継続率は88%となっています。
2024年度は、計8組の社会起業家たちが「社会起業塾イニシアティブ」に挑戦。約半年の間、実際に事業を推進しながら、経営をはじめ組織や事業の課題に向き合う実践を繰り返してきました。
決して平たんではない、道なきところに道をつくる。社会課題を解決する事業を作り、世の中へと広げていくために──。
社会起業家たちが実際に事業を推進しながら、経営をはじめ組織や事業の課題と向き合う約半年間のプログラム「社会起業塾イニシアティブ」。エティックは、2024年度最終報告会を、2025年3月10日、都内で開催しました。
今記事では、2024年度に参加した計8組の卒業生のうち、沖野昇平さんの事業報告と各メンターからの意見をご紹介します。
<「社会起業塾イニシアティブ」2024年度卒業生>
卜田 素代香(うらた そよか)さん 一般社団法人THYME
北橋 玲実(きたはし れみ)さん 株式会社Estlaughtive
甲斐 隆之(かい たかゆき)さん 合同会社Renovate Japan
山家 ヤスエ(やまけ やすえ)さん 特定非営利活動法人希望の光
沖野 昇平(おきの しょうへい)さん in the Rye株式会社
武田 勇(たけだ いさむ)さん オヤシル株式会社
倉嶋 香菜子(くらしま かなこ)さん 株式会社ママのHOTステーション
土井 佑太(どい ゆうた)さん Marine Sweeper
<メンター>
大西 連(おおにし れん)さん 認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長
竹内 弓乃(たけうち ゆの)さん 特定非営利活動法人ADDS 共同代表・理事
土屋 有(つちや ゆう)さん 国立大学法人宮崎大学 地域資源創成学部 准教授、地域資源ブランディング株式会社 代表取締役、株式会社CNC 取締役
渡邊 享子(わたなべ きょうこ)さん 株式会社巻組 代表取締役
子どもたちが世界中の人と対話する平和開発教育プログラム
- 分野
教育・子育て
- 事業内容
「世界に興味はあるけれど、周りに外国の人は誰もいない」。これは、学びに積極的な子どもたちから共通して聞いた言葉。世間では”グローバル“や“SDGs”という言葉が広く浸透する中、日本人の約半数が「多様性と普段は関わりがない」という調査報告も(法務省 2023)。 in the Rye株式会社は、子どもたちが世界中の人とリアルな対話を重ねることにより、グローバルな世界で自分が今からできることを探究する平和開発教育プログラム「ミーツ・ザ・ワールド」を提供している。
- 活動地域
大熊町(福島県)・全国
子どもに対する大人の言葉が起こす行動格差に課題感
in the Rye株式会社は、地方を対象にグローバル教育を広げる教育スタートアップです。事業化のきっかけは、東日本大震災後、高校卒業と同時にボランティアに携わった東北で、大人が子どもにかけた言葉への違和感でした。「どれだけ頑張ってもお前には無理だから」と話していたのです。以来、こういった行動を抑制するような言葉などから起こる子どもの行動格差に大きな課題感を持っていました。
大熊町(おおくままち)は、東日本大震災後、住民全員が町を出ていくことを余儀なくされ、一度人口ゼロになった町です。その状態から少しずつ人口が戻り、0歳から15歳までの公立一貫校「学び舎 夢の森」も設立されました。以来、学びに切れ目のない教育法を特徴に、「教育の町」と呼ばれるなど各方面から注目を集めています。
また、「子どもたちはグローバルに対して自信がない」という課題があるものの、外国人との交流には「面白そう」、「興味がある」と意欲を見せてくれた小学生もいることが分かりました。私はここから大きなヒントを得て、オンラインで学校と留学生をつなげる教育プログラム「ミーツ・ザ・ワールド」を始めました。主体的な教育に一番大事なことは、多角的に世界とつながる経験だと考えたのです。
現在、大熊町の学校を拠点に、「日本で最も外国人と出会える学校」の開発を進めています。これまで1ヵ月で3ヵ国、10年で300人と交流し、5歳から15歳までの300人が世界中の人たちと出会える状態が実現できています。ポイントは、タブレットと通訳機能を活用すること。例えば、ブルガリア、中国、スーダンの人と出会える授業を行ったり、小学生が日本在住の中国人の方に日本の感想を聞いたりしています。
社会起業塾には、持続可能な事業化を目的に応募しました。当初は学校の方針に関係なく契約数を増やすことばかりを考えていましたが、事業の本質的な成功とは、子どもたちに質の高い出会いをつくることで、学校自体が「世界とどこよりも一番関わっている」と誇りを持てる状況を創造することだと気づきました。
現在、大熊町の学校は生徒数が当初の3倍になり、全国10ヵ所で授業を行っています。目指すのは、子ども自身がオルタナティブに成功していく状況が広がることです。昨年10月にはパレスチナ出身の大学生と子どもたちが出会い、史上最悪の紛争について知る機会がありました。さらに、独立行政法人 国際協力機構(JICA)からの声かけで、福島県の大熊町の学校から凧揚げをしながら平和のメッセージ動画を世界へ配信しました。
今、子どもたちが世界に関わり、世界の役に立つことが実現できていると実感しています。オンライン授業に興味ある方は、見学など可能ですのでご連絡ください。
顧客がどう成長するかにポイントを置いて事業拡大へ
<メンター : 渡邊氏のコメント>
沖野さんは、最初、「世界平和でノーベル賞を取りたい」とお話されていましたが、沖野さんの半年の成長ぶりを見ると、こういう人が世界平和をつくるのだろうなと思いました。
また、この半年間でビジネスの視点が確立されたことを感じています。顧客をどう成長させるかに着眼を置き、これから事業を拡大していこうと焦点を絞っているところに大きな成長を感じました。さらに、自分でも新たな事業を立ち上げていくという視点が生まれると、より安定性の高い方へ向かっていけるのではないでしょうか。ぜひこれからも世界平和への野望を語ってください。
行動格差が内省的につくられる影響に着目
<メンター : 大西氏のコメント>
感動するほどすばらしいプレゼンでした。最初のメンタリングで「世界平和を目指したい」と聞いたとき、どんな世界平和なのか、どんな人になりたいのかと思いましたが、行動格差が内省的につくられる影響など物事をコアの部分で見ているのが感じられました。
沖野さんのような人が各地域、各学校にいたら、日本はすごくイノベーティブな国になるのではないでしょうか。「自分の成功よりも人の成功」もめちゃくちゃ刺さります。それが当たり前だと思っていてもつい難しいと思うところも明文化されている。感動しました。
>> そのほかの「社会起業塾イニシアティブ 2024年度報告会」の記事はこちら
「社会起業塾イニシアティブ」2025年度の募集は5月開始!
あわせて読みたいオススメの記事
#ビジネスアイデア

#ビジネスアイデア

#ビジネスアイデア

#ビジネスアイデア



イベント
「社会貢献活動の真価を引き出す:インパクト評価を戦略・文化・顧客関係に組み込む方法」 〜ETIC. / World in You 共催特別セッション
東京都/港区汐留/新橋エリア
2025/05/13(火)?2025/05/13(火)


