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NPO・ソーシャルベンチャー初心者向け! 活躍の世界を広げる業界マップ

2015.07.09 

近年、NPOやソーシャルベンチャーへの就業の裾野は広がりつつあります。しかしながら、身近にそうした働き方をしている人が少ないことで、まだまだ特殊な働き方に感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、「NPOやソーシャルベンチャーに興味はあるけれど、どんな仕事を手がけているのだろう?」「一般企業と何が違うのだろう?」そんな思いを持っている方へ向けて、どのような組織が、どのような仕事を手がけているのかを、「NPO・ソーシャルベンチャー業界マップ」と題してご紹介したいと思います。 業界地図

NPOやソーシャルベンチャーってどんな組織なの?

みなさんは、NPOやソーシャルベンチャーにどのようなイメージをお持ちでしょうか?

大きな括りでいえば、「社会の役に立つことを行っている」そんなイメージが強いかもしれません。実際のところ、それはNPOやソーシャルベンチャーが運営される基本の考え方であり、この組織運営の目的の違いが一般企業との大きな違いとも言えます。

現在日本には多くのNPOやソーシャルベンチャーが存在し、社会の課題解決を目的とした事業を主軸に、それぞれのフィールドで活動を展開しています。社会の課題解決や社会貢献というと「ボランティア」のような奉仕活動と誤解をされやすのですが、実際には社会課題解決事業を通じて収益をあげ、その収益を社会課題解決のために再投資していく継続的な組織運営が求められています。

特にNPOは資本金を持たない組織のため、立ち上げ時には多くの場合助成金などを利用します。しかし、そこから資金のサイクルを作る必要があり、極めてシビアな経営視点が必要となるので、組織運営の目的は違ったとしても、一般企業と変わらず自立した組織として運営されているのです。

どのようなNPOやソーシャルベンチャーがあるの?

それでは、具体的にどのような組織があるのでしょうか? 実際のところ、社会の課題解決という言葉には本当にたくさんのテーマが含まれています。

ここからは、DRIVEで過去にご紹介をしたことがある団体を中心に、現在の日本に多い団体をテーマごとにご紹介していきます。

(1) 日本の“ひと”に対する問題解決を手掛ける業界

まず挙げられるのが“ひと”を軸に課題設定をしている団体です。生まれたばかりの赤ちゃん、子どもから高齢者に至るまで、キャリアの中で直面するさまざまな課題がテーマに据えられ、それぞれの支援を行っています。

子ども・教育

子ども・教育というテーマの中では、教育格差の是正、キャリア教育、被災地での教育支援といった課題から、食育やアートを通じた教育などさらにプラスの効果を生み出すアクションまで幅広く活動団体があります。

例えばこんな団体1:認定NPO法人カタリバ 教育環境や機会が、平等ではないことへの問題意識から始まったNPO。 高校生とボランティアが語り合い、キャリアを前向きに考えるきっかけを提供する「カタリ場」や、被災地の子どもたちの学習支援を行う「コラボ・スクール」を運営。 認定NPO法人カタリバ 例えばこんな団体2:特定非営利法人 放課後NPOアフタースクール 子どもたちが1人で過ごす孤独な放課後を楽しく学べる時間に変え、時代を追うごとに多忙になるご両親の不安解消やサポートのプラットフォームとしても機能しているNPOです。アフタースクールの運営や企業との子育てプロジェクトを通じて、子どもたちが好きなことや得意なことを見つけて輝けるように支援をしています。 アフタースクール

人材育成

人材育成をテーマにする団体では、地域社会の中でのリーダー育成や、企業内での人材育成の支援、インターンシップを通じての学生の人材育成支援、若者の就業支援という形での人材育成など、それぞれのキャリアステップごとの能力開発に主軸をおいて支援を行っている団体が数多くあります。

例えばこんな団体1:NPO法人クロスフィールズ グローバル化する社会の中で「社会の未来と組織の未来を切り拓くリーダーを創ること」をミッションに、企業で働く人材を新興国のNPO等に一定期間派遣し、本業で培ったスキルを活かして現地の人々とともに社会課題の解決に挑む「就留」プログラムを主事業として運営しています。 クロスフィールズ 例えばこんな団体2:NPO法人 G-Net 都市部への一極集中や地域からの人材流出などの課題から、岐阜という地域に活力を与えるべく、中小企業と若者をつなぐインターンシップコーディネート事業などを通じて人材育成に取り組む団体です。 c7d8e68946cd59dfcdcead32aaf6f27f-616x3701  

医療・介護

高齢者の健康づくり、高齢者が多い地域での生活支援といった高齢者向けの課題から障害のある方の雇用促進、うつ病再発の防止支援などパーソナルな課題に関するものまで、幅広い課題とそれに対して取り組む団体がある業界です。

例えばこんな団体1:株式会社ソーシャルプロジェクト 高齢者向けの宅食事業で地域の方々に役立つとともに、軽度の障害のある方を雇用し食事の盛りつけや配達などを行ってもらう双方型問題解決の事業を展開しています。 株式会社ソーシャルプロジェクト 例えばこんな団体2:なないろレディースクリニック 産科、婦人科の医療業務だけでなく、出産後も地域とつながっていくコミュニティ作りにも取り組むクリニックです。今後新たに行う「地域とつながるクリニック計画」では、託児所、カフェ、コミュニティーホールの併設と運営を通じて、「安心して産んで子どもを育てていくことを考える場づくり」の実現を目指しています。 top21  

社会福祉

社会で生活していくうえで必要な支援を提供する業界が、この社会福祉の業界です。子育てママの支援や就業支援、生活に苦労がある人たちの新しい生活の立ち上げサポートなど、社会で生きていくことの根幹を支援する団体が数多く存在しています。

例えばこんな団体1:認定NPO法人 ビッグイシュー基金 ホームレスの人たちの自立を支援し、再び社会復帰ができるようサポート事業を行っています。メインであるホームレスの自立応援プログラムでは「路上脱出ガイド」の配布や、すぐに働けるビッグイシューの販売などの機会を提供するといった活動を幅広く展開しています。 認定NPO法人ビッグイシュー基金 例えばこんな団体2:株式会社Kaien 発達障害の方に特化した人材サービスを手がける企業です。人材紹介や就労支援事業を通じて、発達障害を持つ人たちの強みを引き出し、企業の戦力として活躍できるようサポートを行っています。 kaien

(2) 日本の“地域・場所”に対する問題解決を手がける業界

次に挙げられるのが、地域や場所の持つ課題を軸に事業展開を行う団体です。ここに該当する団体では、ターゲットとなる“ひと”はもちろんいますが、課題設定の主軸に“地域・場所”というテーマが必ず含まれており、その土地ならではの課題に対して、地域社会と協力をしながら活動を展開している点に特徴があります。

地域活性・まちづくり

過疎地の持続可能な地域づくり、地域を担う人材育成、商店街の活性化など、それぞれのまちの持つ課題に取り組む団体は非常に多く存在しています。

例えばこんな団体1:株式会社西粟倉・森の学校 「百年の森林構想」を掲げる西粟倉村の地域ブランド向上を目的に、間伐材を利用した木材製品の制作・販売をメインとし、自社の培ってきたノウハウを活かしてのローカルベンチャーの育成なども手掛ける団体です。 株式会社西粟倉・森の学校 例えばこんな団体2:株式会社小高ワーカーズベース 原発事故避難区域である南相馬市小高区でシェアオフィスを運営し、これから地域に帰還する住民の生活インフラとなるサービスを創出するべく、ゼロからのまちづくりに取り組んでいます。 株式会社小高ワーカーズベース

被災地支援

2011年の東日本大震災以降、被災地支援の団体も非常に増えています。地域づくりの支援や子どもたちの教育支援などの課題に対し、東北各県の団体だけでなく、日本各地の団体が活動に取り組んでいます。

例えばこんな団体1:一般財団法人APバンク 環境問題の勉強会としてスタートしたこの団体は、自然エネルギー事業や農業生産に関わる事業を主に手がける一方で、現在は東日本大震災の復興支援事業「ap bank Fund for Japan」も主要事業の1つとして手がけています。ap bankが行った音楽活動などで得た資金の融資や人材支援活動を通じ、復興の一翼を担っています。 kurkku farm village プロジェクト 例えばこんな団体2:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン 「すべての子どもに平等な教育の機会が与えられ、それぞれが自分の夢に向かって進んでいける社会」の実現を目指す団体です。東日本大震災後、被災によって経済的な困難を抱える子どもたちに対し、学校外教育バウチャー事業を通じて、塾や習いごとなどの学習機会の提供を行っています。 チャンスフォーチルドレン

環境・自然

森林や野山保護、自然に関しての教育活動や自然の多い地域での暮らしに関する支援などを行う団体がここに該当します。

例えばこんな団体1:特定非営利活動法人 芦生自然学校 西日本最大級のブナ林が残る京都・芦生の森の近隣では、近年過疎化や高齢化が進み自然や文化の保護が難しくなっています。同法人では芦生の森などの山歩きガイドの実施などを通じて子どもたちへの自然体験活動の機会を作ることで、地域の人づくりに貢献しています。 特定非営利活動法人 芦生自然学校 例えばこんな団体2:自然電力株式会社 「エネルギーから世界をかえる」をビジョンに掲げ、太陽、風、水、緑、大地などの自然の恵みを活かしたエネルギーを現代の技術を活かして実用化するとともに、そのエネルギーの使い方まで提案することで、地域づくりにも貢献する企業です。 自然電力株式会社

(3) 世界の“ひとや場所”の問題解決を手がける業界

3つめに挙げられるのは、日本を飛び出して世界の“ひとや場所”の問題解決を手がける業界です。

特に多いのが、開発途上国の課題に取り組む団体です。児童労働の根絶、難民支援、途上国での人材育成など、その課題は多岐に渡ります。数多くある課題の解決はもちろんのこと、開発途上国の人たち自身が解決に取り組める仕組み作りを支援する団体が多いのも特徴です。

例えばこんな団体1:特定非営利活動法人 ARUN Seed 途上国の課題をビジネスで解決するという視点から、日本の個人・企業の方々から出資頂いた資金を、途上国の「貧困」などの社会課題解決に取り組む社会起業家に対して投資する事業を行っています。 ARUN SEED 例えばこんな団体2:株式会社ボーダレス・ジャパン 貧困、環境、人種差別など、世界中に広がる課題の解決を目指し「ソーシャルビジネスの専門商社」としてさまざまな社会的事業を手がける企業です。

「偏見のない世界をつくる多国籍コミュニティハウス」を皮切りに、「バングラデシュから児童労働をなくす子供服」、「発展途上国の貧困村にモノを届ける物流インフラ」など幅広い事業を創出しています。 ボーダレスジャパン

(4) NPOやソーシャルベンチャーを支援する業界

最後に挙げられるのが、NPOやソーシャルベンチャーそのものの活動支援を行う、いわゆる「中間支援型」の団体です。 NPO運営のコンサルティング、資金調達の支援、人材育成など、NPOやソーシャルベンチャー業界の基幹となる課題に対して主に支援を行っています。

例えばこんな団体1:NPO法人 ETIC. 次世代の起業家型リーダーの育成と社会へのイノベーション創出などを目的に、インターンシップ事業での人材育成やNPOやソーシャルベンチャーに対してさまざまなコミュニティ作りや採用支援を行っています。 ETIC. 例えばこんな団体2:特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会 日本の民間非営利団体におけるファンドレイジング担当者の情報共有やスキル向上などを目的に、イベントの実施、ジャーナルの発行、定期的な研究会の実施などを通じて、さまざまな団体の運営を支援しています。 TOP2-1280x8533  

自らの手で社会を豊かにしていく世界が待っています!

ご覧いただた通り、本当に幅広いテーマに対して活動している団体があります。1つの課題に対し突き詰めて活動する団体もあれば、現在活動しているフィールドに存在する複数の課題を同時に解決する仕組みを考えているケース、またそうした活動を行う団体の支援を行う側など、さまざまな関わり方があるのです。

取り組むテーマはさまざまであれ、「この事業を通して、社会を良くしていきたい」という思いは共通しており、真摯な想いで活動している人たちに溢れている業界です。新卒採用を実施する団体も増えてきていることから、20代での転職者も数多くいます。

より具体的に団体ごとの詳細について知りたい方、自分の手で社会を豊かにしていきたいという熱い想いを秘めた方は、ぜひDRIVEで紹介している団体についても情報を見てみてくださいね。

 

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村上 萌

1988年静岡県生まれ。高校卒業後、管楽器の修理人を3年間経験後一念発起して大学へ。法政大学卒業後は人材系企業で自社運営の新卒採用求人サイトの大学・学生向けプロモーションや、中途採用人材紹介の法人営業に従事。2015年3月より、配偶者の転勤により南アフリカ共和国在住。現在はクラウドソーシングでコラム執筆などを行っている。