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#経営・組織論

「本当にあなたが大事にしたい役割、自分に合ったスタイルは何ですか」。いいチームをつくる秘訣を、西條剛央さんと考えてみた【その4】

2016.07.11 669view 

第3回目(記事はこちら)では、地域の中小企業の2代目のエピソードから、組織を新鮮な状態に保つための秘訣が語られていきました。第4回目では、やることや役割がたくさんあるチームの中で、「自分が本当にやりたいこと」を見つめることがいかに大切かが語られていきます。

西條さんは現在、「ふんばろう」の経験を基に被災地支援のプラットフォーム「スマートサプライ」を構築、熊本地震においても導入されています。くまモンの生みの親・小山薫堂さんとの対談記事はこちらから>>熊本地震で考える「募金の生きた使いみち」【小山薫堂×西條剛央】
役割がたくさんあるチームの中で、本当にやりたいことは何?
哲学者・西條剛央さん

早稲田大学客員准教授・哲学者の西條剛央さん

西條剛央西條

ひとりの人間の中にも本当にいろんな関心があるから、自分の関心の「山」を把握するっていうことがすごく大事で。職業もさまざまな関心の総体だから、実際にはいろんなことをやらなきゃいけないんですよね。ここを把握しているのが一番大事かもしれない。

たとえば、「ふんばろう東日本」を立ち上げました、社会企業の団体のリーダーをやりました。じゃあその役職に関心があるの? と。じつは僕、マネジメントに関心ないんですよ。人や具体的な業務の調整はできれば他の人にやってほしくて(笑)。

宮城治男宮城
わかります(笑)。
西條剛央西條

立ち上げもやるし、アイディアを生み出したり、仕組みを作るのは得意とは思うけれど、マネジメントなら僕よりうまい人なんていくらでもいるし、そこに関わらずに済むなら越したことはない(笑)。そうして実践していくうちに、自分は経営そのものにそれほど興味があるわけじゃないなとか、でもファウンダー的な関心はあるな、とかわかってきますよね。書くことは好きだけど、ずっと論文だけ書いていれば満足するタイプではないなとか、やっぱり仕組みを作るのは好きなんだな、とか。

なぜなら、自分が自然とやっていることを振り返ってみると、すでに仕組みを作ってしまっているから。これは好きだから誰にも言われなくてもやるんだな、と。実践のなかで明確になることもあるんですよね。

鈴木敦子鈴木
他者からみたその人の関心と、その人の根底にある本当の関心とが全く違うということはあるんですよね。
西條剛央西條

そうですね。社会起業をやるんだといっても、その人がその社会起業という仕事のなかで、何をやりたいのかということですよね。事業をつくりたいのか、人を回したいのか。

そこを間違えてしまうと、たとえば「やりたくないことでも、今はこれをやるべきだし、自分が止めるわけにもいかない」と思ってしまうんですよね、責任があるから。でもしんどくなってくると、どこかで「やってあげている」という姿勢になってしまうんですよね。

そうすると、いつしか「おれもこんなに我慢してやってるのに…」と思うようになってしまう。たとえて言えば、中身が溢れそうになっているコップを持っている、というような状態なんですよ。そんなときに仲間内から何か言われると「…だったらお前がやってみろよ!」と(笑)。

一同:(笑)

西條剛央西條

相手も溢れそうなコップを持っていると、お互いに溢れたコップを持ち寄ってなんでもないことでトラブルになってしまったりして(笑)。よかれと思ってやっていたはずなのに、そういう態度に陥ってしまう構造があるんですよね。

そういうときには無理せず、自分はこういう仕事は苦手だから人に任せるとか、手を打った方がいい。まず今の自分の関心と、今の仕事で求められている関心のズレに気づくこと。苦手なことを抱えすぎているならば、これは他の人に任せようと取捨選択していくと、仕事がスムーズになって余裕が出てくる。

「やめてもいいんだよ」
NPO法人ETIC.代表・宮城治男

NPO法人ETIC.代表・宮城治男

宮城治男宮城

私もそうなんですけど、おそらくうちのコーディネーターは、起業家たちとそうした関心のズレに向き合おうとしているんだと思います。実は起業家自身も、周りにそういう対話をする相手がいないんですよ。

たとえば、事業の受益者となる人たちは起業家に対してすごく感謝してくれているわけですよね。けれどその感謝が、ある種お互いの依存を生み出してもいるわけです。そこから抜けられないということもあるし、一方で起業家たるものこうでなければならないというような、自分のなかの思い込みにも依存しちゃうわけですよね。

そこでわれわれは、「本当にあなたが大事にしたい役割、自分に合ったスタイルは何ですか」と、いつも聞いているんです。そう聞くと、「実は、仲間に経営のトップを任せたい。自分は現場をやる方が向いていると思っている」といった話もでてくる。だから場合によっては、その対話によって事業が前に進むんじゃなくて、後退することもあるんです。「組織を解散しちゃおうか」「やめようか」というような問いも、よく出します。それこそ人生かけて挑んでいる人たちにおいそれと言えませんが、どうしても言ってあげたくなる時がある。おそらく、自分の本当の関心について対話をするカウンターパートがないんだと思うんですよね。

西條剛央西條

ああ、それは大事なことですね。僕も震災から1、2年経ってからでしょうか「ふんばろう」をやめようかなってあえてときがあります。どういうときかというと、周りのスタッフに「やってあげてる感」が明らかに充満していたとき。

そんなとき、「もうそろそろやめようかな」って言うんです。どういう意図で言っているかといえば、「ボランティアなわけですから、ほんとうにやりたい人だけやってください」って伝えたいんですよね。みんなが「それでも続けたい」って思うかどうかを確かめている。本当にすぐやめようとは思っていないんだけど、やっぱりもともとの気持ちを思い出してもらいたいのと、それでもやめたければ、やめてもいいし。続けなければならないという「べき論」をなくすというのかな。そのためにも、「やめてもいいんだよ」って伝えることは大事なことですよね。無理してもいいことないですから。

鈴木敦子鈴木

いまETIC.も法人化してから15年経って、スタッフが4、50人ほどに成長してきているんですけれど、一人ひとりの心持ちがETIC.の構造の一部になっているので、本当に一人の心が「上から目線」になった途端、全ての構造が崩れてしまうんです。

だから改めて、「本当にやりたいのは何か」と問いかけていて。一人ひとりが「やりたいからやっている」という状態にしたくて。それを去年1年くらい、ずっとやってきているんです。

西條剛央西條
すごく大事なことですね。常にそこに問いかけなきゃいけないですよね、「本当にやりたくてやってますか?」って。
宮城治男宮城
そうした問いかけを、これまでは起業家に対してずっとやってきていたんだと思います。でもやはり、自分たちに対しても、もっと目を向けていこうというのが今の段階で。「やりたい」って自分で決めてやろうという流れを、加速させたいと思ってます。
プロジェクトに「時限爆弾」を仕掛けよう
NPO法人ETIC.事務局長・鈴木敦子

NPO法人ETIC.事務局長・鈴木敦子

西條剛央西條

それでいうと、「時限性」って大事だと思うんです。たとえば、「プロジェクトを開始してから1年経ちましたが、続けますか? やめますか?」という時限制の問いを投げかけて、「やっぱりまだニーズもあるし、やりたいな」といった形で、自分たちの関心を1回1回問い直してもいいんじゃないかなと思っていて。

いまも「ふんばろう支援基金」という、資金分配するための一般社団法人をつくってプロジェクトの後援をしているんです。それもとりあえず「数年はやる、3年は支える」と決めたけれど、その後どうするかはそのときに決めようって。3年後、本当にやるかどうかを話し合う。やる意味があると思ったらやるし、必要ないんだったらやめる。そうした時限性についてはわりと徹底しているかなと。

宮城治男宮城

それが本当に大事だと思います。ETIC.では社会起業家を支援しているんですけど、彼らがやっていることはすごく新しいチャレンジで。しかも大変なリスクを冒して挑んでいるんです。けれどその一方で、われわれにも言えることなんですけど、組織のあり方が結構古かったりもします。やろうとしていることが尊いぶん、「これはやるべき」という「べき論」で組織が作られてしまう。

「いいことをしようとしている」という意識が前提としてあるぶん、上から目線になりやすい構造もある。「先生」みたいなスタンスになりやすかったりして。だから、ここをどう突破していくかということが、われわれのなかでもテーマなんです。

鈴木敦子鈴木
やろうとしていることへの姿勢が崩れると、組織全体の構造が崩れてしまうというか。
西條剛央西條

やはり、人間の関心には「山」と「谷」とがあると思うんです。たとえば、すごく関心の低い仕事はほんの少しの作業でも「やらされている感」が出るんですけど、これがすごく関心の高い仕事だと、自分がやりたいことだから相当な負荷でもやれてしまう。

でもこれも、たとえで言えば、どんなにケーキが好きでも、10個も20個も食べさせられると「もう勘弁してくれ」ってなるんですよね(笑)。だから、負荷と関心のバランスが大事だと思うんです。

しかも関心は常に変化していく。たとえば、以前は「起業したい!」という強い関心があったけど、実際に起業してある程度満足したら、起業そのものへの関心は低下することもある。そのときには、負荷と関心とがもうアンバランスになってしまうことも起きやすい。だから、そのつど自分の関心を調整するというのかな。「いまの自分にはこのタスクは重いな。でもこっちのタスクはもうちょっとやりたいな」と、自分の仕事を見直していく。

宮城治男宮城

そうですね。自分たちも含めて、その関心へのフォーカスということを、もっとラジカルに捉えるべきだなと感じてます。それこそ一つひとつのプロジェクトをチームの単位で完結させていく、時限的なスタンスをもっとうまくチームに落とし込むような組織のあり方。

そもそもETIC.は、これまでの従来の社会のあり方とか従来の組織のあり方に則らないことをトリガーにして、仕事をしているわけです。お金や権威にではなく、それこそまさに関心にフォーカスを当てて仕事をしているはず。なのに、組織のあり方がそうなっていなかったりする。その結果、組織を守るため、継続させるために、組織にとって本質的でないグルーブにエネルギーを割かなくてはいけなくなる構造がある。

そういったことを脱して、関心のある仕事に自らが意思決定して臨めるという組織にしていきたい。そのためには、ちょっと極端と思えるぐらいの選択をしてもいいんじゃないかなと。

西條剛央西條
人間の主要な関心についてはいわばライフワークみたいなもので、あまり変わらないんですけど、それでもずっとやっていると飽きることもあるんですよね。「もうこれはいいかな」って(笑)。

一同:(笑)

宮城治男宮城
確かに、飽きてきた自分にも正直に向き合えることが大事ですよね。さっきの「べき論」で入ってしまうと、飽きるなんてことはならん! となってしまう(笑)。
西條剛央西條
とんでもない、と(笑)。
宮城治男宮城
そういうふうに考えるととても苦しいし、結果的に自分や誰かを責めるような構造になってしまう。
西條剛央西條

「ふんばろう」内部でも発展的に解消するとなった際に相当議論しましたけど、当然反対意見もでるんですよね。まだ東北も復興していないのにやめるべきではないって、それだけ聞くとすごく正しく聞こえるんです。でも最初から僕は組織の中に時限制の理念を入れていたから、「確かにそうだけど、『ふんばろう』は基本的には緊急支援のためのものだよね」と。たとえば自立支援事業といっても、4年も経つのに資金をもらえなければやっていけない事業なら、それは社会からは求められていないということなんじゃないかって。

支援は必要だけれど、本来の自立した事業は補助金ベースでやるものではない。そういう意味でも「ここまでは支援するけど、その先はもう自分でやるしかない」という形にする方が、まっとうじゃないかって。

そうした議論を通じて、ぼくは次に備えることに力点を置いていって、そのための仕組みである「スマートサプライ *」をもう作っていた。だから、ネパールの大震災が起きたときにも現地にその仕組みをすぐに渡すことができて、プロジェクトを開始できたんです。

*:マグニチュード9.0の超巨大地震と巨大津波により壊滅的な打撃を受けた東日本大震災の際に、3000箇所以上の避難所、仮設住宅、個人避難宅エリアを世界中から継続的にサポートすることを可能とした「ふんばろう東日本支援プロジェクト」の枠組みをバージョンアップさせた仕組みのこと。インターネットが使えない地域であっても遠方から必要なものを必要な人に必要な分支援することが可能になる、物資支援システム。

最終回はこちら>>想いを伝えたいなら、相手の関心をしっかりつかむ。いいチームをつくる秘訣を、西條剛央さんと考えてみた【その5】

第1回目>>いいチームをつくる秘訣を、3.11で3000人とチームをつくった西條剛央さんと考えてみた【その1】

第2回目>>組織は「内と外」があるけれど、チームは境界をのばしていける。西條剛央さんと考える、チームをつくる秘訣【その2】

第3回目>>人を育てるための「仕組み」は人を育てない? いいチームをつくる秘訣を、西條剛央さんと考えてみた【その3】

現在、西條さんは東日本大震災時に3000か所以上を継続的にサポートした仕組みから開発した「スマートサプライシステム」を、熊本支援プロジェクトに導入しています。2016年3月には、減災産業振興会主催の「第2回グッド減災賞」で最優秀グッド減災賞を受賞したスマートサプライ。熊本への支援にご関心のある方は、こちらから詳細をご覧ください。くまモンの生みの親、熊本出身の放送作家・脚本家の小山薫堂さんとの対談記事「熊本地震で考える「募金の生きた使いみち」 【小山薫堂×西條剛央】」はこちらから。ご著書『チームの力』はこちらから。

この記事を書いたユーザー

桐田 敬介

桐田 敬介

哲学者・遊び研究者/よはく代表。1986年生まれ、埼玉県育ち。大学で哲学理論を作る一方で映画制作や演劇などを楽しみ、大学院では日本各地の面白く豊かで多様な学校を訪れ図画工作と造形的な遊びの研究を行う。現在はベンチャーで勤務しつつ遊びの研究を続けながら、哲学とアートを遊ぶワークショップを運営する団体「よはく」を主催している。

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