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観る→繋がる→アクション! 映画は社会を変える?

2016.07.23 565view 

映画。劇場に足を運ぶ人もゆったりお家で観る人も、息をつかせぬアクション映画からラブストーリーまで、楽しみ方は人それぞれ。そんなみんなに愛される映画で「社会の課題解決」を目指す一風変わった会社があります。ユナイテッドピープル株式会社・取締役副社長 アーヤ藍さんにお話を伺いました。

ユナイテッドピープル株式会社・取締役副社長 アーヤ藍さん

ユナイテッドピープル株式会社・取締役副社長 アーヤ藍さん

映画館から街のカフェまで。映画を届けるために、どこまでも!

— ユナイテッドピープルのお仕事について教えてください。 アーヤ藍さん(以下、アーヤ):「社会の人と人をつないで社会の問題を解決する」というミッションのもとに、社会問題をテーマにした映画を主に海外から買いつけをして日本に届けるという仕事をしています。扱うテーマは多様で、環境問題や人権問題、もっと大きな視点で資本主義の問題点について、さらには「人の幸せとは何だろう?」と問いかけるような映画もあります。 通常の映画の配給は、映画館での上映やDVDの販売、ネット配信ぐらいで終わりなことが多いですが、弊社は映画館での上映後にいろんな方に映画を貸し出す「市民上映会」に力を入れています。カフェやレストラン、公民館や大学で上映をしてもらい、上映後にトークやディスカッションしていただく中でその映画のテーマについてさらに掘り下げて考えてもらうんです。 アーヤさん2

ぶっちゃけ映画を上映して社会は変わるの?

— 基本的には映画は「観る」もので、具体的なアクションの場を提供するものではないですよね。そのような前提がある中で、社会派なドキュメンタリー映画を配給することに対してどのようなお考えをお持ちですか? アーヤ: 私も、映画が存在してるだけでも映画を観ただけでも社会は変わらないとは思っています。ただ「観る」ことで終わらずに映画を観た人同士でつながることによって、今度は自分たちの身近な問題に引きつけて考えてみたり、自分たちでこれをやってみようよ!というアクションにつながってくのだと思うんです。だから、「アクションを起こす仲間を増やす活動」が私たちのやることなのだろうと思っています。

映画は、対話のための「肴」である

— 仲間を増やしていく…ですか。どのように仲間は増えていくものなのでしょうか? アーヤ: 映画で扱われているテーマについて、配給側の私たちもそれぞれに意見を持っていますし、製作者たちも強い思いを持って作品をつくっています。でもそうした特定の意見を押し付けることは絶対にしたくないと思っています。あくまでも観た人が自分の考えをさらに深く問いなおし、他の人たちと意見を交わして、これから社会をどうしていくかを一緒に考えていくことが大事だなと思っています。配給というよりは「共有」することでコミュニティをつくり、その中で対話するイメージですね。 アーヤさん3 — 「対話」を重ねて仲間が増えていくのですね。 アーヤ: 例えば去年、私自身がシリアと縁があることもありシリアの内戦を追ったドキュメンタリー映画を配給したのですが、そのときも反政府側の意見に近い友人が、政府側の意見を持っている友人と一緒に観に行ってくれて、鑑賞後にも一緒にいろいろ話をしてくれたんですよ。 — 普段の生活ではまったく違う、それどころか対立するような意見を持つ人同士の対話を生む力を、ドキュメンタリー映画は持っているのですね。 今後、そのようなドキュメンタリー映画の力をますます発揮させるために創られていこうとしてる仕組みや社会の流れはありますか? アーヤ: 「ここに行けば必ずこういう映画が観られる」とか、「この時期にこういう映画が上映している場所がある」とか、「ここに集まってくる人はそういうものに関心を持っている」という場所が増えてくと、人々が集まりやすくなるのだろうなと思っていて。定期的に上映会をやってくださる方々を増やして、人が集まりやすい拠点を作ろうとしています。 今の仕事に就いてから、世の中には本当に良い人がいっぱいいるんだって感じるようになって(笑)。こんなに社会問題に関心を持っている人がいるし、こんなに何か熱く語りたいものを持っている人がいるんだって、実感しました。その実感から、「しゃべって大丈夫だよ」という場だったり、「みんな関心を持っているよ」という一体感を感じられる場をもっと増やしていきたいと思っています。

先日行われた、映画『ポバティー・インク〜あなたの寄付の不都合な真実』試写会のようす

先日行われた、映画『ポバティー・インク〜あなたの寄付の不都合な真実』試写会のようす

映画は消費するより発信した方が面白い!

— 「映画」自体は随分と前から存在しているメディアですが、いまユナイテッドピープルさんは「映画」をどのようにアレンジして観客に届けようとしているのでしょうか? アーヤ: 弊社が市民上映会を始めたのは、現状の映画の観られ方や置かれている環境に対する問題提起からでもあります。ミニシアター系の映画を上映してくれる映画館がどんどん失われている現状もありますし、1つの映画が上映される期間もかなり短くなってきていて、いまは1〜2週間のみの上映が大半です。ある意味、映画が「消費されているな」という感覚があって。なんだか、ただ観て、その瞬間は楽しいけれど別に何も残らないという状況がどんどん生まれているなあと感じているんです。 けれど映画には、深い想いを持って作られているものがたくさんありますし、その想いが詰まっている映画には観た人に必ず響くものがあるはずだから、それをもっと伝える場所を創っていこうと思っています。その一つの答えとして出てきているものが、市民上映会なのかなと。かつては映画を映すには、大掛かりな機械と専門の映写技師さんがいないといけなかったですが、今は、白い壁とプロジェクターとDVDさえあれば本当にどこでも映画館になり得るので、映画を消費する側から発信する側に回ってもらうという取り組みでもあるんです。

鑑賞後のディスカッションでは、輪になって活発に語り合う

鑑賞後のディスカッションでは、輪になって活発に語り合う

— そういった、「既存のものをバージョンアップして届ける」、「新しく創造しなおす」ということはどのような営みだと思われますか? アーヤ: 「昔からある遺産を掘り起こしてくる」みたいな感じですかね。この間茨城県に遊びに行ったときに、古物の修理をしている場所の説明を聞いたんです。昔は見学できたけれど今は完全にクローズドで、というのも古物を修理するときって、ほこりを1回どかしておいて、修理が終わったらもう一度乗せるんですって。だから、ほこりが飛んでいかないように人を入れられないんだそうで。 — そうなのですか! それは、どういった理由で? アーヤ: そのほこりも、年月をかけて積み重ねられた財産。一度失われたら、もう二度と取り戻せない、という考え方なのだそうです。「新しく創造しなおす」という営みは、ある意味それなのかもしれなくて。ほこりだと思っているものを払うわけではないし、もう古びていると思われるものを捨ててしまうのではなくて、そこに価値を見出しながら、より魅力的に見えるにはどうすればいいのかとか、もっと価値を持ち続けるにはどうすればいいのかとプラスに変えていくことなのかなと思ったりします。

儲けは投資のため。「非営利企業」が資本主義を変える?

— アーヤさんご自身はずっとシリアにご関心を持たれていたようですが、NPOやNGOなどの現場に入らず映画配給のユナイテッドピープルさんに入られた理由を教えていただけますか? アーヤ: NGOやNPOの活動に大学時代は興味があったのですが、どこも資金難に直面していて、やるならば継続的なモデルでの支援をという思いがあり、NPO・NGOは避けていました。 一方、株式会社での儲けのお金って、「いいな」「ほしいな」っていうお客さんのニーズの表れだと思うので、そうやって資金を自分たちで生み出して社会的な活動をしていけたらそれがベターだなと思って、株式会社にこだわりたいとも思っていました。弊社の代表はよく、うちのような企業は「非営利企業」だよねとも話しています(笑)。 — そういった言葉、最近よく耳にするようになってきました。 アーヤ: 「儲けるため」に稼ぐのではなく、儲けを次の挑戦に投資するために稼ぐという捉え方ですよね。そういった会社が増えていくと、おそらく今の資本主義で問題視をされている貧富の差であるとか、一握りの人だけが富を持っている状況も改善していけるんじゃないかと思っています。小さい会社ではありますが、資本主義に新しい風を吹かせることができるんじゃないかという、すごい野望を抱いています(笑)。 アーヤさん4

「寄付」の現実から、スタートアップのヒントを

— ビジネスで生み出したお金の流れで社会を良くしていきたというお話をうかがいましたが、来月には「寄付」をテーマにした映画の上映も始まるそうですね。 アーヤ: はい!『ポバティー・インク 〜あなたの寄付の不都合な真実〜』という映画で、善意による海外への支援や寄付が、ビジネス化され利用されてしまってる実態とか、現地の人たちに逆に困難を巻き起こしてしまっている現状を映しているドキュメンタリー映画です。

映画『ポバティー・インク〜あなたの寄付の不都合な真実』

映画『ポバティー・インク〜あなたの寄付の不都合な真実』

ハイチとアフリカの国が主な舞台になっていますが、国内の震災後の寄付ですとか、誰かを助ける、困っている人を支援するという構造であれば、NGO,NPO,企業といった形態にも関係なく、共通するであろう問題提起を含んでいる映画です。たとえば、いらなくなった服を集めて無料で送るような活動が、実は現地の服飾産業に打撃を与えてしまっている現状が描かれていたりも。あらゆる行動にポジティブな面とネガティブな面が付随してくるので、自分の行動がもたらす影響に思いを馳せる大事さを感じることができる映画になっています。本当の意味で「人のニーズをどうやって汲み取ればいいのか」という視点もつまっているので、スタートアップへのヒントにもなる映画なんじゃないかなと。8月6日(土)から渋谷アップリンクにて上映予定ですので、ぜひ足を運んでみてください! — 本日はありがとうございました! 映画の詳細はこちらから。事業を創るうえでのヒントを探しに、普段何気なくしている寄付のことを知るために、ぜひ足を運んでみてくださいね。 ポバティー・インク

ユナイテッドピープル株式会社・取締役副社長/アーヤ 藍

1990年生まれ。 長野県で自然と戯れながら育つ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。在学中は5つのゼミを渡り歩いた末、最終的にアラブ・イスラームについて学ぶ。2011年3月に研修で訪れたシリアが帰国直後、内戦状態に。シリアのために何かしたいと思っていたなか、ユナイテッドピープルに出会い、2014年6月入社。

聞き手/DRIVE編集部・桐田理恵

NPO法人ETIC. DRIVE編集部。1986年生まれ、茨城県育ち。早稲田大学第一文学部卒。医学書専門出版社での精神医学や在宅医療、緩和医療の書籍づくりを経て、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。

カメラマン/新宅司

早稲田大学文化構想学部3年。映画や演劇など多方面の表象文化の研究をしながら、自身が代表を務める学生団体、早稲田リンクスではフリーペーパー制作、イベント、ウェブの運営を行う。代表としての仕事の他、フリーペーパーなどで使用する写真を撮るカメラマンとしても活動している。

この記事を書いたユーザー

小梁川 裕也

小梁川 裕也

1994年神奈川県生まれ。横浜国立大学経済学部。入学後、NPO法人かものはしプロジェクトでインターン。2年次に海外ビジネスプログラムなどを経て3年次には大学を休学。NPOの資金調達をテクノロジーで支援するため日本法人立ち上げ期のマルケトにインターンとして加わると、日本最年少で認定エキスパートとなりマーケティング オートメーション”Marketo”のNPOへの全導入を行った。復学後の現在は個人でコンサルティングを行う傍ら、NPO法人Make it Betterを設立し共同代表として活動中。

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