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イノベーション教育を子どもの学びに「a.school(エイスクール)」 岩田拓真さん

2016.08.05 408view 

1 ビルの6階に上がると、入口にレゴブロックで作ったかわいらしい「a.school(エイスクール)」の表札がありました。扉を開けると、大きな窓のあるがらんとした、広い空間。左右に2段ほどの本棚がずらりと並んでいて、本棚の中は、スタートアップや起業家が好きそうな大人向けの本がぎっしり。ここが、受験塾でもなく、学習塾とも違う、「人を育てる」新しい小中高校生向きの塾「a.school 」の教室です。窓には、科学者アインシュタインの顔と言葉が描かれているこんな場所で、どんな授業が行われているのか、株式会社a.schoolのCEO、岩田拓真さんにお話を聞きました。 2

メンターと一緒に自分で「学びの本質」を見つけていく塾

― a.schoolでは、どういう授業が行われているのでしょうか?

今やっている授業は2種類あって、ひとつは算数・数学と英語という、科目ごとに勉強する「科目探究クラス」と、教科横断型でしている「探究創造ラボ」があって、通っている人数はそれぞれ同じくらいです。「科目探究クラス」は、勉強を「暗記すること」「つまらないもの」ではなくて、「自分なりに考えること」「ワクワクするもの」にしたいと思い、作りました。さらに、5教科だけではなく、より幅広い自然や社会のリアルで刺激的なテーマについて学んでほしいという想いで「探究・創造ラボ」クラスをつくりました。どちらも、子どもたち自身が学んでいて楽しいか、子どもたちが将来大人になった時に長期的に役立つか、という2つの視点を大事にしています。

授業は、どちらもワークショップ形式で行います。科目探究クラスのほうは、個別に大学生がついて普段の勉強をサポートする時間もあります。勉強の中身だけじゃなくて、将来のことや進路のことを考えたり、そもそも勉強の仕方や、学ぶ面白さを伝えたりもします。科目探究クラスのほうは、期間ごとに、テーマを決めて授業をしています。今、小学校4~6年生向けには「図形の探究」がテーマです。先日やった「図形の探究」2回目の「アートを作ろう」という授業では、まずどんな図形を美しいと思うかを考えます。そして、自分が美しいと思った図形を元に、絵を描いていくんです。そうすると、いろいろ気づくことがあるんですね。たとえば、円って、中心点からの距離が全部一緒だなあ、とか。三角だったら、鋭角にしたり鈍角にしたりすることで、いろいろな三角ができる。正三角形が美しいのがすべての辺と角度が同じだからだなあ、とか…。

2.5

子どもたちが図形で絵を描いた作品。「この子(右上の紙)は地道に同じことを繰り返していくことがすごく好きで、円を何個も重ねて行って六角形を描いていました」と岩田さん

― 授業の進行は、どういった方がされていますか?

うちのスタッフがやっています。スタッフは、起業時から手伝ってくれていて、うちのスピリットやミッションをとても理解してくれています。スタッフは授業では、メンター、ファシリテーターという立ち位置で授業を進めています。設計は僕がかなり担っていますが、進行は今、かなり任せてできるようになってきました。

3 この展示は算数の授業の「数と計算」がテーマの最終回で作ったものです。数や計算について、気になることを調べて展示を作りました。たとえばこの子は数字の書き方について調べています。学校でいろんな子に数字を書いてもらって、色んな書き方のパターンを展示にしました。また、算数と数学ってどう違いますか? というテーマ展示を作った子もいます。算数・数学は、計算や問題を解くスキルももちろんあるし、学校ではそういうスキルが評価されますけれども、こういうことを考えるのも、大事と思うんですよね。

― 算数という理系の科目なのに、文系の切り口の展示のようですね。

なにかひとつのことに対して、いわゆる「それって文系だよね」とか「理系だよね」とかいわれても、そもそも絶対そうではないし、分野を気にせず考えたほうが新しい発見があるような気がしますね。あんまり考えすぎてもよくないな、とは思いますね。分けちゃうとすぐに好き嫌いができちゃうので。

― 好き嫌い…というのは、よくないことですか?

よくない、というよりかは、誤解して「好き」「嫌い」を言っているところをクリアにしたいな、と。算数だったら算数の歴史が好き、計算が嫌い、問題を考えるのが嫌い、っていうのはわかるのですけれども、算数が嫌い、っておかしい話ですよね? 科目全部を否定しちゃうっていうのは、非常にもったいないと思います。

子どもの「学ぶ力」を評価し、育ちを見つめていく

― こういった授業をしていると、いわゆる成果というか…、生徒の学びを評価しにくかったりすると思うんですけれども、そこはどうされているんでしょうか?

既存の教育は、どちらか極端になっている気がしているんです。目で見える数字…成績と、そうでなかったらまったく目に見えない人間性を伸ばします、という、両極になっている気がして。 4 僕たちは、極端に寄らない「間(あいだ)」に居ることが大事だな、と思っています。それでやってみているのが、好奇心、創造力など、「10個の力」を定義して、評価の基準としています。こういうことができたら5点満点で、5点、こういうのができたら3点、という基準を作るんですね。こういう評価のしかたは「ルーブリック評価」といわれています。 たとえば「探究力」だったら、「好奇心が強くて、熱意を持ってテーマを決めて探究していく力がある」これは「5点」になります。小学3年生で、ひたすら武将の死に際を調べている「武将の死に際オタク」みたいな子がいるんですけど(笑)。こういう生徒はすごく探究力があると思います。

こういった感じで、スタッフが生徒を観察して評価をつけていきます。と同時に、生徒の自己評価をつけあわせて、保護者の方にフィードバック頂いて…、という感じで、保護者の方には年2回お渡ししています。この「10個の力」はa.school独自のもので、国際バカロレア(*)のものなどを参考にして作っています。

(*):国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラム。 平和でより良い世界の実現のために貢献する、探究心、知識、そして思いやりのある若者の育成を目的としています。

― これは面白いですね。いわゆる問題が解けるようになった、ということではなくて、その子自身を見て評価する、という…。

僕たちは「思考行動特性が変わった」ということを重視にしています。こういう本を読むようになったとか、知らない人でも話せるようになった、とかですね。それが、実際に成績とイコールというわけではなく、結果がどのように出るか、というのは、その子次第だな、と思っています。もちろん、成績が上がる子もいるのですけれども。こういった視点でじっくり見ていく場というのは、なかなかないと思うので、学校以外の第三の場として、うまく機能できるといいな、と思っています。

― ずっと通ってくれるといいですね。そんなa.schoolを選び、通っている子どもや親は、どういう方なのでしょうか?

いろいろな方がいらっしゃいますが…保護者の方でいうと、クリエイティブな仕事や自分で経営されている方など、自分なりの考えを持って仕事されている方が多いですね。そういった方は、これからは自分で表現したり、考えたりするスキルがすごく大事ということを、身を持って体感されて、確信されていると思います。 そういった体験がまったくなくて、メディアでの記事を観てなんとなく来られる方もときどきいらっしゃいますけど、そういう方は「みんなは他の塾に行っているけど大丈夫かな」って迷われたりすることも多いです。そこに対して、僕たちは「大丈夫ですよ」と説明しますが、まだ説得しきれない部分もあって……。

「結局は、全部つながっている、という感覚」

― 教育って「何を成果にするのか」ってところは非常に難しいですよね…。そもそも、教育に関心を持ち事業にするまでになったのは、どういう経緯なんでしょうか?

ひとつではなく、いろんなことが重なって、今があると感じています。それこそスティーブ・ジョブズの「コネクティングドット(**)」のように、「つながった」というのが本当のところかな、と思っています。

(**) スタンフォード大学の卒業式辞での、スティーブ・ジョブズの言葉。あちこち関係ないことをしていても、いつかそのすべてがつながり、役に立つようなことをするものだ、という内容。

子どもの頃、僕は学校の中でいわゆる個性的なタイプで、なかなか自分のやりたいことを突き詰めてやろうとすると、周りの環境とぶつかってきた、ということがあって、学校に違和感を持っていたことはいえると思います。 高校の時に社会人の方を授業に連れてきてくれる面白い先生がいて「大人はいろんなチャレンジをして、いろんな生き方をしているんだ」と知ることができたことも大きいです。そして、産業界でイノベーションをおこす人材をどう育てるか、というコースに大学の時に入って、「あ、こういう力って育成できるんだ」ということに気づきました。

そこで、この大人向けのイノベーション教育を、子ども向けに提供する場を作ろう、と思いました。 まずは、そのコースを一緒に受けていた仲間と一緒に、土日にNPO活動としてスタートしました。3〜4年間かけて継続的に活動していくうちに、ぼんやりとした教育への想いが段々と固まっていきました。また、その活動の中で実際に家庭や学校で楽しく学べない子どもたちに「学ぶのって楽しい」という変化を起こすことができたのが一番大きかったです。その「子どもたちの中に変化を生み出せた心地よさ」がきっかけで起業を決意し、それは今も仕事のやりがいの中で最も重要な要素の1つです。

ein ― 事業を広げていくうえで今後チャレンジしていきたいことはなんですか?

今、a.schoolのノウハウを他の塾にお渡しするシステムフランチャイズのような事業をはじめているところです。単にやり方だけではなくて文化も伝えていく、ということをチャレンジしています。そして、a.school本校でも、学生スタッフをふやして、スタッフ教育にあたっているところです。僕たちは「文化」を一番大切にしたいと思っていて、システマチックにマニュアルを作りすぎてしまうと、できあがったものに本質が詰まってない、ってことも起こりえます。生徒が育っていくためには、どうすればいいだろう、と考えていくと、僕たちは見えないところを見つめなくてはいけない…。

kabe

もっともっと先の話としては、公教育にいつかはa.schoolのコンテンツを取り入れてもらうような事業をしてみたいと思っています。公教育っていうのは、短期間にドラスティックに変えることはできないので、現在、仕事で手一杯の先生たちを助けるような形で、入っていけたらいいな、と。僕らが外で自由に挑戦したことを、公教育にフィードバックしていくような関係になればと思っています。また、カフェと併設など、ハード面でもユニークなa.school的な塾のアイディアもあります。

― お話を伺っていますと数値的な、社会で評価しやすい部分と、もっと生態系みたいな目に見えない部分、というか、その間をとるみたいな姿勢が一貫してあると思うんですけれども…。

それが美しくないですか? 感覚的にも、論理的にも組み合わさって調和しているものをいいな、美しいな、と思うんですよね。

― その部分が、a.schoolのステキな個性になっていますよね。両方欲しいって、きっと、欲張りなんですね(笑)。

欲張りです(笑)。たぶん。色んな要素を学びの中に詰め込みたい…というか、結局は、全部つながっている、っていう感覚があるんです。

edubana

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