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「何がやりたいかわからない大人を生まない」DRIVE×NEWVERYトークライブ”いま、キャリア教育を考える”レポート(4)

2013.12.09 762view 

有山篤利先生(聖泉大学教授)、今井紀明さん(NPO法人D×P?共同代表)、岩切準さん(NPO法人夢職人?代表理事)、斉藤寛子さん(フリーキャリアアドバイザー)、山本繁さん(NPO法人NEWVERY?理事長)、渡辺一馬さん(一般社団法人ワカツク?代表理事)ら6名のキャリア教育実務家が集まり、これからのキャリア教育を考える機会となったDRIVE×NEWVERYトークライブ「いま、キャリア教育を考える」。前編に引き続き、どんなやりとりがなされていたかを、紹介します。

■「社会関係資本が、生徒のレジリエンスに影響する」トークライブ・レポート(1) ■「学生を、価値の消費者から生産者に変える」トークライブ・レポート(2) ■「1人が複数の仕事を持つことで、地域を維持できる」トークライブ”・レポート(3)

「何をやりたいのかわからない」40代を生まないために

山本:フリーでキャリアアドバイザーをしてる斎藤さんにも、活動のお話を伺えたらと思います。どんな気づきや問題意識から、独立されたんですか。

斉藤:前職のパソナでは、キャリアアドバイザーとして転職をしたい人の相談にのっていました。2000名くらいの20?50代の方々の転職支援をしてきています。その中で社会人1年目にものすごく感じたのは、「この国はヤバい」の一言でした。転職がしたいと言ってくる方々は、もうホントに疲れ果ていて、希望を失ったような顔をして相談にきて、所属している会社の愚痴などを話す。こんな暗い人ばかりなのだろうかと感じました。40代になっても「自分が何をやりたいのか」がわからないままの人たちがたくさんいることにも、結構驚きました。

その人がダメだという話ではなく、やりがいを考える余裕が無いまま生活するために必死になって働いてきて、転職したいと思った時には求人も無く、方向転換するのも難しいという状態です。就職して20年経って、この仕事では家庭も子どもも持てないという現実を突きつけられる状態が、すごく不条理だなと感じました。もっと小さい時にいろいろ知っていたらそういう選択肢を取らなかっただろうなあと考え始めたのが、私が教育にシフトし始めたキッカケなんです。

そうして教育関連の世界に携わる中で思ったのは、あまりに日本の教育が受け身であるということです。私はいま、就職・転職できないような人たちに向けてのセミナーやカウンセリング、芸術系大学のキャリアの支援をさせていただいていますが、20代そこらで無力感の塊になっている人が多い。自分には何もできない、何も役に立つことがない、就職なんてできるわけがない、と自分を決めつけてしまっていたりします。

高学歴・低学歴や、地方出身と都会出身の差など、情報化社会の中で情報が氾濫していて、試したり経験したりする前に、全てにおいて上下関係が全部出来上がってしまっているかのように勘違いし不安になってしまう。その上下関係の中で下の方にいる人たちは、それだけで自己肯定感を失ってしまうような状態の社会になってしまっているなと思っています。私自身も、もともとすごく自己肯定感が低い人間で、失敗したら一巻の終わりでそこから抜け出すことが出来ないのではという感覚を持っていました。なんとかそこを底上げする方法ってないのだろうかという風に思っています。

正解を求めず、自分が幸せを感じる瞬間を知ること

山本:そういう現状がある中で、キャリア教育で必要なことや私たちがすべきことは、どう考えていますか。

斉藤:正解を求めすぎなくていいという価値観を教えてあげることが必要だと思いますね。育つ環境や進学先はいろいろだと思いますが、それぞれに合った選択肢が必ずどこかにあるんです。でも、こういう選択肢をとったら失敗だとか成功だということばかりネットで取り上げられていて、有山先生がおっしゃっていたような、ごくごく普通の生活をしている人々が、どういうキャリアを歩めばいいのかが顕在化していないんです。すごい人たちが見せる生き方のセオリーみたいなものではなくて、本当に普通に生きてきた人たちが、リアルな紆余曲折も含めてどういうキャリアを歩んできたのかを子どもたちに伝える必要があると思います。

また、私は社会人2年目から、外部の朝活などに出て他のコミュニティーを見たりしていたのですが、同じ会社で同じ部署でも、目が死んだ魚のような人と、目が爛々と輝いている人がいるわけです。それを見て、立ち位置や優良企業か否か等の属性ではないところに、その人自身が幸せなキャリアを築けるかどうかの差があるはずだと感じました。個々人が自分が幸せを感じる瞬間やいきいきできることを知っているかどうか、自分が世の中を変えられると思えているかどうか、この2つが非常に大きいと思っています。

あとは、承認してあげること。情報化社会の中で別に人と関わらなくても生きていける社会になってしまったからというのもあるのですが、人との関わりが少ないことで承認に飢えている学生もすごく多くいます。少しでも周囲が認めてあげることができれば、その子自身が自信を持って自分の思う方向に一歩踏み出せるような力になるはずと思っています。

違うキャリアを認めあえる柔軟性が、日本にも必要

山本:自分の問題意識について考える中で、出会った面白い事例などはありますか。

斉藤:NEWVERYに関わる前にTeach for Japanという団体に少し関わっていたのですが、去年フィンランドに行き、小学校と高校の教育を見させていただいたんです。フィンランドの先生方が口々に仰っていたのが、「教育って子どもたちのものだよね」「先生ってものすごくクリエイティブな仕事だよね」という話でした。ものすごく感動して衝撃を受けたと同時に、なんで日本にはこういう先生が少ないんだろうかと思いました。

でも、日本のその先生たちもそういう想いを持っていないわけではないんですね。ただ、指導要領や制度にがんじがらめになってしまっていて、基本的に余裕がない状態になってしまっているんです。フィンランドでは、どういう教え方をしているかを教員同士で意見交換やブレストをしつつ改善しながらやっていくんですけれど、そういう風土は日本にはあんまりない。フィンランドでは、教室も決められた知識を教える場というよりは、社会に出て自分の力で生きていくためのものと捉えられています。

そういう臨機応変さや柔軟さは、学校教育だけでなく社会全体において、日本にものすごく足りてないところだなっていう風に私自身は感じています。採用面でも会社の制度でもそうですが、効率化を求め過ぎて柔軟性を排除するような構図になってしまっているような点が問題なのではないでしょうか。これからのキャリア教育というところでも、柔軟な思考というか、どのコミュニティをフィールドにするのかを自分でちゃんと選べたり、他人とお互い違っていてもいいんだよね、と思えたりする風土をちゃんと社会側で作ってあげることが重要かなと思います。

学校に押し付けるのでなく、NPOや地域も教育を担う必要がある?

岩切:多様なコミュニティや働き方があることを、小中高大の成長のプロセスの中で学ぶことが大切ですね。ある教授の話を聞いたときに、「キャリア教育の授業とは学校の勉強と仕事がどう繋がっているかを教えるものだ」と話していたんですが、僕は、全部の授業がそうなんじゃないかと思っているんです。学校教育の中で、職業と学校の勉強のつながりを伝えていくべきだなと思います。

ただ、学校に求めすぎだなとはすごく感じますし、全部を学校が背負う必要はないんですよね。ヨーロッパは学校と言うよりは、地域に特色があるのだと思います。ドイツは失業率が非常に高いんですが、その対策として児童や青少年の成長を支えていくことを義務づける法律を定めて、NPOや地域団体が多様なスポーツや体験のプログラムを提供し、放課後に子どもたちが自分にあったプログラムを選んで受けたりできるような仕組みを作っているんです。

自尊心や自己肯定感は、自分がやってみない限り得られないわけです。座学でインプットするだけでなく、どこかの現場や地域にアウトプットしていかないといけない。そういう意味では、学校の役割を明確にしつつ、それ以外のNPOや地域もきちんと教育機能を果たしていかないと厳しいと思います。僕は公立小学校の学校評議員を8年間以上続けていますが、先生たちは休みなく夜中まで働いて、地域行事まで出ているんです。

基礎的な学習以外の選択肢をすべて学校に求める必要はなくて、アートやビジネスやスポーツなどの機会は、地域でそれぞれが用意しても良いと思います。そこを後押しする仕組みが日本には全然足りてない。親と先生だけが教育を担って、追いつめられるという状況でよくなるわけがないんですよ。社会総がかりで教育をするって言っていても、なかなか総がかりになっていないのが、日本の問題だと思っています。みんなでやっていった方が、結果的にうまくいくんじゃないのかなとすごく思います。

有山:僕は、就職する仕事なんて何でもいいと思っています。岩切さんが言うように、自己肯定感や自信って、やった後にしかできないんです。何の仕事に就いたって、その仕事にあう能力がつくようなマインドを作ってやらなきゃいけない。一番大事なのは、私は絶対に人の役になれるっていう勘違い、想像力だと思います。自信はやった後にしか生まれないので、やる前にあるのは過信だけじゃないかなと私は思ってますし、それを発揮できる現場をつくることがキャリア教育で大事なんじゃないでしょうか。

■「社会関係資本が、生徒のレジリエンスに影響する」トークライブ・レポート(1) ■「学生を、価値の消費者から生産者に変える」トークライブ・レポート(2) ■「1人が複数の仕事を持つことで、地域を維持できる」トークライブ”・レポート(3)

<本記事にメイン登場する斉藤寛子さんの活動や情報は下記よりご覧ください>

NPO法人NEWVERYチェルシーハウス(斉藤さんがキュレーターを務めています!) 2014年春にOPENする、本気で大学生活を充実させたい学生が集まる学生寮。 12月15日にチェルシーハウス入寮説明会が行われます。

協力:本記事の文字おこしは、竹田周平さん、溝渕加純さん、渡部寛史さんにサポートいただきました。

この記事を書いたユーザー

田村 真菜

田村 真菜

フリーランス/1988年生まれ、国際基督教大学卒。12歳まで義務教育を受けずに育ち、野宿での日本一周等を経験。311後にNPO法人ETIC.に参画し、「みちのく仕事」「DRIVE」の立ち上げや事務局を担当。2015年より独立、現在は狩猟・農山漁村関連のプロマネ兼ボディセラピスト。趣味は、鹿の解体や狩猟と、霊性・シャーマニズムの探究および実践。

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