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#経営・組織論

「NPOの成長ギアをあげるのは”一之倉聡”だ」NPOで大切なことはマンガから学んだ(1)工藤啓

2014.04.17 1,931view 

DRIVEのご担当者から原稿執筆の依頼があった。かなり真面目なトーンで「『NPOで大切なことはマンガから学んだ(仮)』を執筆しないか?」と。日本が世界に誇るマンガの総量は膨大であり、どのマンガを選定し、どのシーンを取り上げてNPO活動に重ねるのか。大好きなマンガを切り口に、NPO活動について何を書くべきかを真剣に考え過ぎてしまい、手をつけるのに時間がかかってしまった。

打ち切り最終回の可能性もある第一回のテーマは、「NPOの成長ギアをあげる人材」について書いてみたい。

追い風受けやすき創業期

NPOやソーシャルビジネスの起業家はその設立から一定期間は注目されやすい。20代前後で起業し、社会課題を解決していく勇気ある行動を誰もが応援する。マスメディアからは取材を受け、大学ではゲスト講義、講演活動は忙しくなる。露出の効果もあり、顧客との接点は持ちやすく、寄付も予想外に入る。企業から協働提案が舞い込むこともあるだろう。

起業家の努力はもちろんだが、社会の期待という追い風により成長ギアはあがっていく。加速したスピードにより活動の安定度が高まる。ちょっとやそっとの小石で車体は揺らがない。しかし、遅かれ早かれ起業家への期待とともに成長してきたNPOも、背中から圧力をかけるように吹く風が小さくなることに気がつく。そして周りを見渡す余裕が出てくると、これまでスピードに物言わせて走り抜けてきた風景や足元の小石がよく見えるようになってくる。

期待というプレッシャー

私は、NPO活動の成長と安定には創業メンバーの存在が重要だと考えている。名だたるNPOを牽引しているのは起業家かもしれないが、とにかく社会課題という大きな山に穴を開け続ける人間の後ろに寄り添い、周辺を補強しながら、ときに方向を確認して修正を促しているのは創業メンバーだろう。表に立つ起業家を支える存在としてNPO活動を支えている。 起業家および創業メンバーの存在と周囲の追い風がうまく絡み合うことで成長ギアはあがっていく。

しかし、創業期からの成長ギアがいったん上がりきり、ややスピードが落ち着いてきたとき、予想以上に職員数や外部パートナー、ステークホルダーが増えているだろう。組織としての経済資本、関係資本、文化資本が総合的に高まっており、それを梃子にもう一段階ギアをあげようと試みる。既存事業をスケールするのか、新規事業を立ち上げるのか、それとも別の形での成長を模索するのかは戦略次第だが、創業期のような追い風が自然に吹くことは考えづらく、むしろ、組織規模やステークスホルダーの増加、認知度の向上によるこれまでになかった「期待」というプレッシャーにさらされているかもしれない。

このフェーズで必要な人材として、マネジメントができる、マーケティングスキルを持っている、営業力が備わっているなど、希望要件をあげればいくらでも出てくるだろう。そのような状況において忘れてはならないのが「一ノ倉聡」人材だ。

山王工業・一之倉聡

一ノ倉聡とは誰か

そもそも一ノ倉聡と聞いてすぐにわかるひとは素敵だ。

スラムダンク(SLAM DUNK)という少年マンガをご存知だろうか。神奈川県下の高校バスケ部を舞台に、主人公の桜木花道を中心とした多彩なキャラクターが織り成す青春マンガだ。著者は井上雄彦氏で、2013年時点の累計発行部数は国内で1億2029万部(完全版含む*1)だそうだ。

*1:http://ja.wikipedia.org/wiki/SLAM_DUNK

桜木花道は湘北高校に所属し、数々の難敵と死闘を繰り広げながら準優勝で夏のインターハイに出場することになる。最大の山場は、インターハイ三連覇を果たしている秋田県代表の山王工業高校との決戦である。山王工業高校とは、名だたるバスケットプレーヤーを排出し、バスケをする小中学生のあこがれであり、高校の頂点に立ち続ける最強のチームだ。しかも、この年は過去最強との呼び声が高いほどの人材が集まっている。

全国区のスーパースターが揃う山王工業高校に一ノ倉聡は所属する。身長やスピード、シュートといったスキルは周囲に比べて目立たない。それでもなお一ノ倉聡がメンバーに入っているのはチームNo.1のスタミナと忍耐力による「スッポンディフェンス」があるからだ。とにかく、マークする相手チームのキーマンにバスケをさせない。粘り強く腰を落としてへばりつき続けていく。その忍耐力を裏付けるエピソードとして、山王工業高校最強メンバーも一度や二度は厳しい練習から逃げ出した経験を持っているが、一ノ倉聡は逃げたことがない。構内マラソンでは陸上部にも負けない。学校の試験中に腹痛を起こしながらも我慢し過ぎて失神。救急車で運ばれるまで耐え続けた(虫垂炎だった)。「我慢の男、一ノ倉聡」(自称)なのだ。

まさにディフェンスのスペシャリストであり、NPO活動のさらなる成長のためになくてはならない人材である。

盲腸に苦しむ一之倉聡

安定感あってのさらなる挑戦

NPOがスピード感を持って成長しているときは、バタバタしながらもその加速による安定により、自分たちでも気がつかない細かいミスや課題を通り越すことができる。創業時特有のミスは許されることもあり、暖かい眼差しで諸注意やご指導をいただける。しかし、ある規模や創業年数になれば、当たり前のことができていないと信頼は揺らぐ。

例えば、消費税や保険料率などの変更に対応する経理処理。設備品購入や建物管理、福利厚生制度の対応と整備を担う総務。クレーム処理や冠婚葬祭、地域社会とのコミュニケーションなども多くなってくる。ブランディングの観点からこれらをオフェンスだと捉えることもできるが、一般的にはディフェンス部門であり、その崩壊は失点につながりやすい。バックオフィス部門を軽視することはないだろうが、成長目標を掲げるときにはどうしても思考はオフェンスに偏りがちだ。だからこそ意識して一ノ倉聡を探さなければならない。

なぜ、一ノ倉聡なのか。それは試合に勝利するビジョンにぶれることなく、ディフェンスのスペシャリストであることに誇りを持ってチームに貢献する人材だから。どんなにつらい状況でも逃げない。投げ出さない。守りきる。NPOは掲げたビジョンやミッションに共感するひとが集い、持ち得る価値を最大化していくことに面白味と難しさがある。特に総務や管理といった部門にしっかりと一ノ倉聡人材を巻き込んでおけば組織の安定感は増していく。守備力が高いからこそチャレンジできる。その意味から、一ノ倉聡は挑戦を支える土台であるとも言えるかもしれない。

※虫垂炎レベルの腹痛時はすぐに病院へいくべきである。

この記事を書いたユーザー

工藤 啓

工藤 啓

NPO法人育て上げネット 理事長/1977年東京生まれ。成城大学中退後渡米。Bellevue Community College卒業後帰国。育て上げネット設立。2004年NPO法人化。理事長就任。厚生労働省、文部科学省など委員を歴任。金沢工業大学客員教授。

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