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横浜市の社会起業家に聞く「ソーシャルビジネスの人材戦略」 by ETIC.横浜

2014.05.14 225view 

人口370万人を超える大都市、横浜。華やかで豊かな港町としてのイメージがある一方で、横浜市はあらゆる都市型の社会課題を抱えています。例を挙げれば、家族のあり方の変化による「こどもの貧困」や「孤育て」の問題。急速な高齢化が進む郊外団地においては、「交通弱者」や「空き家空地の増加」問題等があります。

2009年よりNPO法人ETIC.は、横浜市経済局と連携して、地域課題解決を目指す起業家(社会起業家)のスタートアップを応援するプログラムを実施してきました。今回は、起業家支援プログラム「Yokohama Changemaker’s CAMP」でメンターを務める3名の起業家の方々に、横浜市内での起業を目指す皆さんへの期待やプログラムの魅力等について語っていただきました。

今回参加してくださった起業家さんは、不登校・ひきこもり・ニート・家庭内暴力など、社会に馴染みにくい若者の自立を支援し、共に生きる場をつくることに取り組むK2インターナショナルグルー プ・NPO法人ヒューマンフェローシップ(横浜市磯子区)代表理事の岩本真実さん、「誰もが安心して暮らせる町づくり」をめざし、介護および福祉に関する活動や子育て支援活動を展開するNPO法人ワーカーズわくわく(横浜市瀬谷区)代表理事の中野しずよさん、そして顔見知りの親同士が子どもの送迎や託児を1時間ワンコインで頼り合える「子育てシェア」という仕組みを提供する株式会社AsMama(横浜市中区)代表取締役CEOの甲田恵子さん、のお三方です。

横浜市内で活躍する社会起業家による鼎談風景1

横浜市で活躍する社会起業家の皆さん。左から岩本さん・中野さん・甲田さん。

継続のための収益をどう確保するか

田中:皆さんは、ご自身も社会起業家として事業を推進する傍ら、次世代の起業家やNPO団体からも相談を受けていらっしゃると思います。相談を受ける中で感じていることを教えてください。

中野:この10年でだいぶNPOやソーシャルビジネスの理解も浸透してきましたが、相談を受けていると、まだまだ当事者の中にも「そもそもNPOやソーシャルビジネスって稼いでいいの?」というところで止まっている人がいるように感じています。私達の団体では、かつては納税できるようになったことが喜びでした。現在では新卒人材を雇用したり、賞与を支給することができるまでに団体として成長してきています。事業を継続していく上では、お金の問題は避けては通れない、必ずぶつかる壁だと思います。

岩本:補助金、助成金、国の事業なども使い方次第では、団体の基盤を整えることにもつながるものの、立ち上げ期に変な形で行政からお金をもらってしまうと、「私達って何がやりたかったんだっけ」と団体の存在理由を見失ってしまうことがあると思います。

本来やりたい事業をやるために、場所やお金を確保したくて補助金や助成金に手を挙げたものの、行政と組むことによっていつの間にか「行政の下請け」みたいになってしまうんですね。それは行政にとってもよくないし、団体にとってもよくない結果を生みます。ですから立ち上げ期にはきちんと自団体の存在目的を考え、毎日ミッションを読み上げるぐらいの感じで進んでもらいたいですね。

課題の当事者の声を徹底的に拾い、事業モデルに自信を持つ

甲田:ミッションもそうですけど、それにはやはり「課題の当事者の声をきちんと拾う」ということが入口になると思います。よく「○○の課題を解決したいんです!」という相談を受けて、「その課題はどれくらい深刻で、どんな人がどれくらい困っている課題なの?」と尋ねると、その裏付けが取れていない場合が圧倒的に多いんです。自分の思い込みでソーシャルビジネスを始めてしまうのはとても危険です。課題を正しくを捉えるべくトライ&エラーを繰り返して初めて自分達が取り組むべき事業の方向性が定まると思うので、それにはまず手足を動かして課題の当事者の声を徹底的に集めてくる、ということが必要だと思います。圧倒的な行動量で、自分たちがやろうとしていることへの確信を深めていってほしいですね。

田中:三人のお話を伺っていると、ソーシャルビジネス立ち上げ期にはしっかり団体のミッション、事業モデル仮説やキャッシュポイントを考えぬくことがとても大切なことがわかります。一方で、ある程度事業の方向性が定まってきて、試験的にサービスの提供を開始しているようなステージの団体や起業家になると、「人」の悩みで壁を感じている団体さんが多いように感じています。

横浜市内で活躍する社会起業家による鼎談風景2

資金調達から人材獲得まで、幅広く語っていただきました。

フェーズと目的によって異なる、社会起業家の人材戦略

中野:そうですね、事業活動をスタートしたばかりの起業家からは「自分と同じくらいの真剣度で語り合える仲間がほしい」という声は良く聞きます。立ち上げ期はいろいろな情報に振り回されたり、自団体の存在理由を揺さぶられるような出来事との遭遇の連続ですから、メンターによるブラッシュアップ(事業プランなどの改善)の機会はいいリズムになると思いますね。

一方一緒に手や足を動かしてくれる人材という意味では、雇用するお金がない場合がほとんどなのでボランティアさんに頼る、でもボランティアだとかえってうまくいかない、ということとままあります。私達の団体ではイベントお手伝い以外は「有償」で依頼するようにしています。

岩本:私たちの団体も人材の重要性は常々感じています。クォリティの高いアウトプットや専門性を期待するのであれば社会人「プロボノ(スキルを活かしたボランティア)」を巻き込むという手も考えられますし、クオリティよりもまず「コミットメント」や「泥臭い仕事でも一緒に手足を動かしてくれるパートナー」を求めたいのであれば「インターンシップ生」の方がよい等、その時々の事業課題によって、適切な人材像は異なるのだと思います。

社会起業家の人材獲得をサポートする「Advanced」プログラム

田中:「Yokohama Changemaker’s CAMP」では今年から、起業家のニーズに応える「チーム」をコーディネートして事業加速につなげてもらう「Advanced」というプログラムが新設されます。

この「チーム」の中には、起業家の事業の相談に乗り一緒に知恵を出し合いながらコーチ役として伴走する「メンター」や、専門性のあるビジネスパーソンが事業に貢献する「プロボノ」、時間的にコミットメントが可能な「インターンシップ生」等のポストを、事務局が一緒に人材募集・選考し、チーム結成から約半年弱の協働期間をコーディネートする、新しいタイプのスタートアップ起業家応援プログラムです。このプログラムについて率直なご意見をお願いします。

岩本:「人」の問題は難しい、でもスタートアップ期の起業家にとってその後も事業を続けていけるかどうかの分かれ目が2人目・3人目の人材の採用です。起業家がひとりで人材を探しても、なかなかいい人材と巡り合えない場合が多いですから、事務局が入ることで良いチームが結成できれば、確実に事業加速へとつながる予感はありますね。

甲田:せっかく参加するからには、必ず横浜で事業化する意志のある起業家に参加してほしいですね。メンターからのアドバイスでは時に、事業仮説をゼロから見直さなければならない局面もやってきますが、スクラップ&ビルドを恐れない姿勢が、その後の事業発展の鍵となると思います。また一見、自分の事業とは関係ないように感じてしまっても、「そこから何かヒントになることがあるはず」と前のめりで機会を掴みとって活かしていくような人にこそ、チャレンジしてほしいです。

中野:横浜市内でソーシャルビジネスとして活動を継続発展できている方々は多様な人材を巻き込んで力を借りながら事業を推進している場合が多いですから、CAMPに参加することで、そういった人材の特性を生かしたチームマネジメントの学びにもつながると思います。またせっかくこれまでの3期のCAMPプログラムで輩出された起業家コミュニティも少しずつ形成されてきていると思うので、そういった横浜のネットワークやつながりを大切にする人に参画してほしいですね。

田中:皆さん、お話ありがとうございました。

Yokohama Changemaker’s CAMP 2014 起業家向け説明会を開催します。 5/23(金)13:00-15:00

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K2インターナショナルグループ NPO法人ヒューマンフェローシップ 代表理事 /岩本真実

野村證券株式会社OL時代、コロンブスアカデミー(K2インターナショナルの前身)にてボランティアを開始。10年間、海外にて不登校児との共同生活をしながら、就労支援のためのレストラン、ブックショップ計4店舗の立ち上げに携わる。帰国後、統括責任者として170名以上の若者支援を通じてまちづくりや就労の場づくりに取り組み、商店街の活性化や福祉事業との連携等を行う。湘南若者サポートステーション統括コーディネーター/にこまる250食堂プロジェクトリーダー。NPO法人ヒューマンフェローシップ代表理事を務める。

NPO法人ワーカーズわくわく 代表理事/中野しずよ

結婚後、子育ての経験を生かし、近所の子どもを対象に自主的に預かり保育を実施。1989年、高齢化社会を生きいきと送るため、仲間とともに生涯教育学級「グループわくわく」を立ち上げる。1992年には、地域でのたすけあい活動を目的とする「ワーカーズわくわく」を設立。2000年に介護保険事業に参入し、翌年にはNPO法人格を取得。以後、介護保険事業、障がい福祉サービス事業、保育サービス事業、行政からの委託事業などを手がける。現在、常勤職員数20人、事業収入は1.9億円。 横浜市内の市民活動の中間支援役である認定NPO法人市民セクターよこはまの理事長を兼務している。

株式会社AsMama 代表取締役/甲田恵子

環境省の外郭団体、環境事業団にて役員秘書と国際協力事業企画を兼務。2000年、インターネットの台頭に第二の産業革命到来を感じ、ニフティ株式会社に転職。海外事業立上メンバーとして海外大手IT会社との提携やパートナーシップ業務に従事、マーケティングから事業企画、広報まで一貫して行う。産休・育休取得後はフルタイムで復職。海外業務のほかIR(投資家向け広報)主担当に就く。2007年、より経営に携わりたくベンチャーインキュベーション、ngi groupに転職、広報・IR室長に就任。2009年11月、代表取締役としてAsMamaを創業、今に至る。

この記事を書いたユーザー

田中 多恵

田中 多恵

2009年4月よりNPO法人ETIC.にて 横浜市内のソーシャルビジネス起業支援事業「Yokohama Changemaker’s CAMP」や、地域未来創造型インターンシップ事業を立ち上げ、現在も横浜ブランチにて、ソーシャルビジネ スに関心のある経営者や起業家、支援者のコミュニティ作りに取り組んでいる。

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