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#経営・組織論

「経済成長だけで、本当に人は幸せになれるのか?」クロスフィールズ創業ストーリー(4)小沼大地さん

2014.08.07 374view 

全4回でお届けする、NPO法人クロスフィールズの創業ヒストリー。松島由佳さんへのインタビュー前編後編、そして小沼大地さんの前編に続き、最終回となる本稿では、小沼さん自身について、そして共同創業者という存在についてうかがってみました。

オフィスにてインタビューに応える松島由佳さん(左)と、小沼大地さん(右)

写真:オフィスにてインタビューに応える松島由佳さん(左)と、小沼大地さん(右)

人生を変えた、小学校の先生の一言

石川:お話をうかがっていると、小沼さんはキャリアの王道を歩いているようでいて、実はかなり人と違った道を行く人だという印象を受けます。どうしてそうなったんですか。

小沼:色々な理由があると思いますが、「人と違う意見を持つことを恐れなくなった」という意味で象徴的なのは、小学生の時の経験です。小学2年生の時でしたが、国語の授業で、クラスを2つに分けてのディベートのようなものがありました。最初はいい勝負だったのですが、だんだん僕の賛同者が減ってしまい、最終的には僕一人だけになってしまいました。小学生にはなかなかつらい状況です。

泣きそうになりながらも、僕が自分の意見を主張していたら、先生が「皆さん、小沼くんに拍手!」と言ったんです。それでみんなが、わぁーっと拍手してくれて。まさか褒められるとは思っていなかったので、びっくりしました。でも、それが本当に嬉しかったんです。

石川:いいお話ですね。小沼少年には、とても大きな出来事だっただろうと想像します。

小沼:あの出来事があったから、今でも僕は、「人と違うことを考えるのは、おもしろい」と思えるのかもしれません。その後も良い先生に恵まれて、自然と教師を目指そうと思うようになりました。実は教員免許も持っていて、今でも時々先生になりたいなぁと思ったりしますね。

人を応援し続けた人

石川:外からは敏腕経営者・小沼さんとみられることが多いでしょうが、教師・小沼さんという側面もあるのですね。新たな事業を生み出すリーダーと、人材育成を担う指導者。クロスフィールズの経営という仕事は、どちらも兼ねているように思います。

小沼:僕は、「人が想いを持って活躍する」ということに関心があります。自分自身が社会を変革するというよりも、「誰かに可能性を花開かせるきっかけを提供して、その人が世の中を変えていく」ということにワクワクするんです。その一方で、起業家として世の中にない仕組みをつくって、硬直した社会に風穴を開けることにやりがいを感じる自分もいます。その意味では、人を支援するということにおいて、とても起業家的なのかもしれません。

石川:極めて起業家的ですね。

小沼:とはいえ、究極のところ「自分は何者として他の人に覚えられたいか」ということを突き詰めると「クロスフィールズを創業した人」というよりは、シンプルに「人を応援し続けた人」として記憶してもらいたい。「出会った人たちを鼓舞し続ける」ということは常々心がけていますし、やっぱり心から「人が可能性を発揮するお手伝い」が好きなのだと思います。

クロスフィールズに込めた想いについて語る小沼さん

写真:クロスフィールズに込めた想いについて語る小沼さん

シリアで直面した「経済成長だけで、人は幸せになるのか」という問い

石川:クロスフィールズという事業を通して、社会に伝えていきたいことはありますか。

小沼:僕が社会に問い続けたいことは、「経済成長だけで、人は幸せになるのか」ということです。例えば、「日本人とシリア人、どちらが幸せだと思いますか」という問いがあったとします。

仮に、友人や家族と過ごす時間の長さや、一日のうちで笑っている時間を幸せの尺度だとするならば、僕はシリア人のほうが幸せだと思います。残念ながら、内戦が激化した現在では、シリアは幸せな国とは言い切れません。けれど、当時僕が出会ったシリア人たちは、とても幸せそうだったんです。

僕は大学生のとき、「貧しさにあえぐ人々」の存在を本で知って、それ以来ずっと「世界の貧困の現状」を自分の目で直接確かめてみたいと思っていました。青年海外協力隊に参加しましたが、少なくともシリアでは出会えませんでした。経済的に貧しい人はいても、圧倒的に「かわいそうな人々」は、どこにも見当たらなかった。

「シリアは比較的貧しくないのかな」と思って、僕はアフリカ中を歩きまわりました。でも、どこへ行っても出会えない。雨露をしのぐテントすらない南スーダンの「貧困地域」の家族だって、楽しそうに笑って日々を過ごしている。そこに至って、僕が考えていたような貧困は存在しないのかもしれない、と思うようになりました。経済的に貧しいからといって、必ずしも不幸なわけではないということです。

石川:その考え方は、クロスフィールズのあり方にも反映されていますか。

小沼:そうですね、僕がクロスフィールズ、特に留職を通して伝えたいことのひとつは、「先進国と途上国は、相互に学び合うことができる」ということです。富める先進国が、貧しい途上国を支援するという一方的な関係ではなく、両者はともに学ぶ仲間だと僕は思っています。

現地のリーダーたちは「自分が社会を変えるんだ」という圧倒的な当事者意識を持っているだけでなく、本当に知的水準が高いし、ものすごい熱意と実行力を持っている。このことをもっともっと事業を通して社会に伝えていくことで、ビジネスやNPOといったセクターを超えて、想いやリソースが循環する社会にしていきたいですね。

石川:クロスフィールズの事業は、本当にうまく出来ていると思います。単に世の中のニーズに対しておもしろい仕組みを提示したという以上に、小沼さんと松島さんがずっと温めてきた想いが重なって、結実したというところが、僕はとても好きです。他にも、事業を通して表現したいことはありますか?

小沼:ちょっと大きな話になりますが、先進国は長らく「経済的に成功していれば幸せだ」という幻想にとりつかれていたと思います。当然ながら僕は資本主義を否定しませんし、経済という枠踏みで世の中を捉えることはとても大事だと思っています。でも、たったひとつのモノサシしか持っていない状況って、本当に幸せなのでしょうか。

経済的な面を捉えたら、今後の日本がアジアの新興国のように順調に成長していく可能性は低いと思います。それなのに、このままの価値観を変えずに生きていけば、間違いなく日本人の幸せ度合いは徐々に下がっていくでしょう。

これ以上経済力が上がっても、そんなに幸福感が増えるわけでもないし、全体としてすごい成長が望めるわけでもない。そんな成熟社会は、どんな新たな価値観をつくりだしていくのか。留職を通してクロスフィールズが提供しているものとは、自分の答えを見つけるために、これまでの価値観を揺さぶり、再構築する場だとも思っています。

お互いについて語る松島さんと小沼さん

写真:お互いについて語る、松島さんと小沼さん

ビジョンを徹底的に追求できる仲間

石川:最後に、共同創業者であるおふたりが、それぞれをどんな存在だと思っているのか教えてください。

小沼:僕にとって松島はなんでも徹底的に話し合える頼りがいのある存在です。例えば、ここ3ヶ月僕らは毎週末、「これからクロスフィールズをどう発展させていこうか」をディスカッションしています。土日に合わせて10時間以上ひたすら議論し続けているんですが、自分だけでは絶対にできないくらい話が深まるんです。

例えば、当初これからのクロスフィールズを”拡大期”と定義していたんですが、「プロジェクト数の拡大だけじゃなくて、質的にも変わっていくべき。だから、”発展期”にしよう」とか。そうやって根本的な議論ができる相手だから、将来のことを話すのが、本当に楽しい。

石川:深い信頼がありますね。松島さんはいかがですか?

松島:そうですね、私にとっても小沼は、「どうすればビジョンに近づくことができるか」を徹底的に追求できる仲間です。だから、ひとつひとつの留職に徹底的に想いをこめることができます。それに、彼は人の可能性を信じている人ですね。だから、何でも話せるし、ちょっと諦めたくなるような場面に出くわしても、チームで乗り越えていけるんだと思います。

加えて言うと、これは創業者である私たち2人に限ったことではありません。2人から始まったクロスフィールズですが、今ではインターン生を含めた10名のチームの全員が、創業メンバーとして一緒にビジョンに向かっています。メンバーが増えていっても、そこはこだわり続けていきたいと思います。

石川:他のメンバーにもインタビューさせていただきましたが、皆さん志が高く、プロフェッショナルの誇りを持っていることが印象的でした。本当にいいチームですね。松島さん、小沼さん、お話ありがとうございました!

クロスフィールズが入居するオフィスの前にて。

写真:クロスフィールズが入居する目黒川沿いのオフィス前にて

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この記事を書いたユーザー

石川 孔明

石川 孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。

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