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「住民の生活再建に向けて、ボランティア活動の推進体制を」―能登半島地震復興支援 第2回活動報告・意見交換会レポート【前編】

2024.04.25 

 

1月1日に石川県・能登半島で地震が起きてから約2ヵ月。現地では、日々状況が変わる中、命を守ることを最優先とした支援活動から、現在は生活再建に重点を置いた支援へと移行しています。

 

全国の中間支援組織のネットワーク「チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト(チャレコミ)」(事務局 : NPO法人ETIC.[エティック])では、発災当日から支援活動を行っています。2月22日には、2回目となる活動報告・意見交換会をオンライン開催しました。

今回、その一部をご紹介します。

 

※記事の内容は2月20日、意見交換会開催時点のものです。

<登壇者>

森山奈美さん 株式会社御祓川 代表取締役社長/能登復興ネットワーク 事務局長/七尾未来基金設立準備会 事務局

仁志出憲聖さん 第3職員室 理事/株式会社ガクトラボ 代表取締役

高桑鉄則さん 京都府災害ボランティアセンター 副センター長

<ファシリテーター>

瀬沼希望、山内幸治(NPO法人ETIC.)

七尾市の避難所29ヶ所で住民に聞き取り調査

 

瀬沼 : 現在、七尾市を中心とした支援活動が行われています。活動の拠点となる能登復興ネットワーク(NRN)は、地元の人たちなどが中長期の能登復興を見据えて1月2日に設立した団体です。事務局は、能登の里山里海を持続可能にしていくためのお金の流れをつくることを目的に設立された七尾未来基金設立準備会が担っています。

 

主な活動として、避難所アセスメント、支援物資や炊き出し調整、被災者の仕事作りを行っています。まずは、避難所のアセスメントについて、NRN事務局長の森山奈美(もりやま・なみ)さん、説明をお願いします。

 

森山さん : 2月第2週まで約3週間にわたり、一般社団法人みらいずさん、NPO法人ブレーンヒューマニティさん、PEADさん、NEXCO中日本さんなど、いろいろな団体からボランティアスタッフを派遣いただき、避難所を回りながらアセスメントを行ってきました。

 

また、住民の皆さんの生活再建サポート活動を推進するために、2月1日から2月16日まで、七尾市の避難所29ヵ所(自主避難所含む)にて、被災者の方お一人お一人に今後の意向について聞き取りを行いました(回収:364世帯)。

 

現在、自宅の建て替えをどう進めていこうと考えているのか、また、市の補償制度などの調査を世帯ごとに行いました。その結果、2月中旬時点で避難所に身を寄せている方の約半数は、自宅が大きな被害を受けていること、その約3割は仮設住宅が見つからなければ避難所から出ることができない状況だといったことが分かりました。しかし、約3割の方の半数は、仮設住宅への入居は希望しておらず、みなし仮設の方についてもまだどうするか決められない方が一定数いる状況です。

 

調査の結果、避難所で個別対応が必要だと思われる方々について、高齢者支援団体、また七尾市役所の高齢者支援課を通して、都市建設課、地域づくり支援課に聞き取り情報を共有しています。ただ、1週間、2週間と週を重ねる度に、避難所などで避難されている方の行き所のない不安やフラストレーションが募っていくのを私たちも感じています。例えば、自宅の被害について罹災証明を出してしばらく経つのにまだ審査をしてもらっていないといった状況が続いています。

炊き出し支援、自主勉強会には七尾市外の人も多く参加

 

瀬沼 : 炊き出し支援に関しては、2月初旬頃、WEBサイト「炊き出しニーズ&支援者&生産者のマッチング・プラットホーム」がオープンしました。炊き出し支援を希望される避難所と、駆け付けたい支援者の皆さんとがスムーズに調整できるように、任意団体JVP(Japan Vitalization Platform)やサイボウズ株式会社さんなどの力を借りてリリースしました。ぜひアクセスしてご活用ください。

 

WEBサイト「炊き出しニーズ&支援者&生産者のマッチング・プラットホーム」。

炊き出し支援を希望する避難所と、駆け付けたい支援者をつなぐ

 

森山さん : 炊き出しには、避難所以外に学校からも支援の希望がありました。事情をお聞きすると、給食がまだ十分に行き届いておらず、栄養面でも不十分な面が拭えないとのことでした。

 

瀬沼 : 第1回意見交換会(1月23日)から約1ヵ月間は、自主的な勉強会も能登復興ネットワーク理事で株式会社百笑の暮らしの山本亮さんと株式会社雨風太陽の高橋博之さんの協力のもと行ってきました。今後も能登復興ネットワークでは勉強会を続けたいと思っています。

 

勉強会の様子

勉強会の様子

 

森山さん : 勉強会は、地元の人や支援をしたい人たちの想いをつなぐ、学び合うことを通して、実際に行動する地元の人たちの目線を合わせていくために行っています。最初、高橋さんからの呼びかけから、地元の人や市外県外の方々も参加し、復興活動に必要な状況把握や知識を一緒に学んでいます。今後は、2016年に起きた熊本地震の事例から学ぶ会、宮城県・女川町や気仙沼市など東北の知見を学ぶ会などを行い、過去の支援活動をもとに住民の皆さんの意見を活かした復興計画を形にする予定です。

2月に「一本杉復興マルシェ」を開催。地元の商店街と連携

 

森山さん : 1月11日から、能登の物産を販売するWEBサイト「能登スタイルストア」を再開していますが、たくさんご注文をいただいています。発送業務をはじめボランティアの方からのご協力、また地域外での物産展開催に関するお申し出もたくさんいただいています。

 

2月11日には、第1回「一本杉復興マルシェ」を開催しました。11店舗が出店し、多くの来場者に恵まれました。3月以降も、地元の商店街などと連携しながら開催する予定です。

 

「一本杉復興マルシェ」に集まった人たち

「一本杉復興マルシェ」に集まった人たち

 

また、能登の人事部〈(株)御祓川〉では、事業者の経営相談、さらに今後は、地元業者をサポートする人材募集のクラウドファンディング、右腕人材の展開などを考えています。

 

七尾未来基金設立準備会がサポートする3つの実行団体でも、震災の影響を受けやすい弱者の支援として、ひとり親家庭、不登校の子どもたちなどを支える活動が発災前から行われており、その取り組みをより強化しています。

二次避難先の金沢で子どもたちに公共シェアサイクルを無償提供

 

山内 : 子ども支援について、居場所作りを推進している第3職員室の仁志出さんから現状の説明をお願いします。

 

仁志出さん : 私たちは二次避難先の金沢市を拠点に活動していますが、1ヵ月前から状況は進んでいます。1月1日、発災直後から子どもたちの不安定な環境下での声が次々届き、1月4日に認定NPO法人カタリバさんと協働で、七尾市に0歳から18歳を対象にしたみんなのこども部屋を立ち上げました。その後、金沢市内でも1月10日にみんなのこども部屋を立ち上げ、1月21日には10代のためのユースセンターも開設、いずれも毎日運営しています。

 

ただし、続く余震に対して、揺れを感じると泣き出してしまうなど被災体験による不安が症状として表れている子も少なくありません。学校の再開後も、避難による孤立で友達と会うことすらできないといったつながりの損失、親御さんたちが子どものそばで家の片づけをすることが難しいといった復興の課題など、親御さんの負担増を痛感しています。また、「金沢には避難してきたけれど、いつ能登に戻ればいいのか分からない」「4月からどうなるのか先行きが見えない」など、大きな不安を抱えている方が多いです。

 

チャレコミ会員でもある富山市が拠点の合同会社ハピオブの尾藤さん(中央)と第3職員室の仁志出さん(右)。

子どもの居場所作りでは、ハピオブからも人材が派遣された

突然、日常的な選択肢を失った子どもたちに多様な機会を

 

仁志出さん : 子どもたちは、震災前の学校生活、部活など、日常にあった選択肢が突然失われました。また親の関係が良好ではなかった子どもなど、今の状況が続くことによるストレス増が予想され、将来への希望が持てなくなる場合もあると考えています。

 

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金沢市内で利用できる公共シェアサイクル「まちのり」。

サイクルポートがある場所を中心に、電動アシスト自転車をスマホで借りることができる

 

私たちは石川県内の子どもたちに対する多様な機会を個別に提供していくために、1月8日から毎週、情報交換会を行っています。また、能登の子どもたちが金沢市内で困っていることの一つとして移動手段の課題を解決するために、2月9日から市と連携して公共シェアサイクル「まちのり」を無償提供しています。現在、毎日利用している子どもがいるほか、みんなの部屋や買い物、遊びに行くなど便利に使ってくれているようです。

地元の人のためのボランティア活動とは?情報共有会議を定期的に開催

 

瀬沼 : 現在、「ボランティアに入りたいけれど、どうすればいいかわからない」といった相談が能登復興ネットワークに多く届いています。水道の復旧が遅れているほか、宿泊先の不足など課題はありますが、能登から離れて避難されている方々が、今後も地域とつながっていけるよう、能登に戻りたいときにスムーズに戻れる状態を整えていきたいと考えています。そのためにはコミュニティ作りの対応も急務だと感じています。

 

エティックでは、東日本大震災から約10年、東北のリーダーのもとに右腕人材を送り込む右腕派遣の取り組みを行ってきました。今回、能登版の右腕派遣プロジェクトとして、まず3月から夏頃までの展開を考えています。全国の中間支援団体のみなさん、ソーシャルセクター、企業、個人の方が、今後、地域復興のハブとなるみなさんのもとに右腕として参画し、能登復興ネットワークとも連携して現地のニーズとつないでいくことを想定しています。

 

山内 : 会場からのコメントとして、ご参加いただいている京都府災害ボランティアセンター 副センター長の高桑鉄則さんから可能であれば現在の能登半島の支援のお取り組みについご紹介をお願いします。

 

高桑さん : 関西広域圏での枠組みをもとに、京都府と京都市では七尾市の支援が決まりました。現在、支援内容を検討しているところです。まず3月からボランティアバスの運行を計画していますので、七尾市社会福祉協議会の方針に合わせて、皆さんと一緒に先を見据えた活動を行っていきたいと思っています。

 

森山さん : 七尾市内での特徴的な動きとしては、御祓川の事務所のある御祓(みそぎ)地区を中心に地元の人たちが地元の人たちのお助けに入るボランティア団体「チーム御祓」を立ち上げました。また、七尾市では、小規模多機能自治を採用しており、まちづくりの一環として、地域づくり協議会を起点に、地元の方への御用聞きと、ボランティア派遣を行うことが有効ではないかと考えています。

 

ボランティアによるサポートについては、地元の人にとっては、「誰が来るのかわからない」「知らない人に助けてもらう」といった状況は不安やストレスがあるのも事実です。ただ、同じ地区の住民が仲介することでハードルを少し低く感じてもらっているようです。先日、ボランティアセンターのセンター長と調整をし、七尾市で活動している様々な情報の支援団体同士の共有会議を行うことが決まりました。ただ、支援する側にまわる住民たちが疲弊しないことが大事だと思っています。日本ファシリテーション協会さんがサポートに入ってくれているので、力を借りながら慎重に進めたいと思っています。

 

また、地域づくりについては、震災に関係なく解決すべきだった課題が顕在化しているとも思っています。緊急的な解決が必要なことはもちろん、長期的な視点で、我々が震災前から向き合ってきた課題にスピード感をもって取り組まなければならない状況になっているように思っています。

 

後編に続きます。

>> 「避難者の帰る場所がない」課題の解決が急務―能登半島地震復興支援 第2回活動報告・意見交換会レポート【後編】

 

 


 

現在、能登の復興に携わる仲間を各団体・企業で募集中です。

ご関心ある方、力を貸してください。

>> 復興を支え、能登の未来をつくる仕事

 

………

「能登半島地震・報告会&意見交換会」は、次のスケジュールにて行っています。

各内容は、レポート記事としてDRIVEに掲載予定です。

・第1回目 : 1月23日(火)16:00~17:30(※終了しました)

・第2回目 : 2月20日(火)14:00~15:30(※終了しました)

・第3回目 : 3月12日(火)16:00~17:30(※終了しました)

・第4回目 : 4月18日(木)11:00~12:30(※終了しました)

・第5回目 : 5月31日(金)14:30~18:00 または 6月1日(土)11:00~12:00

※第5回目は、「and Beyondカンファレンス2024」(羽田イノベーションシティ)プログラムの一環としてセッションを開催いたします。

※報告会&意見交換会の参加費は無料ですが、入場券が必要となります。

(【1日券】一般(5/31金 )¥10,000【1日券】一般(6/1土)【1日券】学生(5/31金)¥1,500、【2日券】一般(5/31金~6/1土 )¥13,000【2日券】学生(5/31金~6/1土 )¥2,000)

詳細・お申込みはこちらから

https://peatix.com/event/3920580

 

能登復興ネットワークでは、2月からSNSでも情報を公開しています。

最新情報はこちらからチェックしてください。

・facebook https://www.facebook.com/noto.iyasaka

・instagram https://www.instagram.com/noto.iyasaka/

 

1月23日から3月4日まで行った「能登復興ネットワーク クラウドファンディング」では、目標額の7,700,000円を達成し、計11,576,411円のご寄付をいただきました。想いを寄せてくださったみなさま、ありがとうございました。

 

能登半島地震から未来に向けた力強い一歩を。復興に向けた活動を強力に推し進めたい!

https://camp-fire.jp/projects/view/736115

【主催】能登復興ネットワークいやさか

………

エティックでは今後、中長期にわたる支援を続けていくための寄付を受け付けています。

>>SSF災害支援基金プロジェクト 能登半島地震緊急支援寄付

>>Yahoo!JAPANネット募金 令和6年1月能登半島地震地域コーディネーター支援募金(エティック)

 

こちらもあわせてお読みください。

>> 「避難所の立ち上げ、物資支援、炊き出し」能登が、能登らしく復興するために―能登半島地震復興支援 第1回活動報告・意見交換会レポート【前編】

>>【能登半島地震・報告会&意見交換会】いま必要な支援とリソースについて、一緒に考えませんか?

>>それぞれの個性や地域資源を活かした復興へ。能登半島で生まれている未来へ向けた動き

 

この記事を書いたユーザー
たかなし まき

たかなし まき

1971年愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科卒業後、地元の企業に就職。その後上京し、業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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