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「避難者の帰る場所がない」課題の解決が急務―能登半島地震復興支援 第2回活動報告・意見交換会レポート【後編】

2024.04.26 

 

石川県・能登半島の地震から約2ヵ月。現地では、地元の支援団体や町の人たち、また地域外の団体や企業が共に考え、復興のための課題解決に注力する日が続いています。

 

今記事は、2月20日にオンライン開催された活動報告・意見交換会のレポートです。全国の中間支援組織ネットワーク「チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト(チャレコミ)」(事務局 : NPO法人ETIC. [エティック] )をはじめ、多くの人が参加した場を伝える記事の後編として、続けて能登半島で支援活動を続ける支援者・団体の課題感などを中心にお届けします。

 

前編はこちら

※記事の内容は2月20日、意見交換会開催時点のものです。

<登壇者>

森山奈美さん 株式会社御祓川 代表取締役社長/能登復興ネットワーク 事務局長/七尾未来基金設立準備会 事務局

水上志都さん 能登町大箱 民宿「じろんどん」女将

山岸暁美さん 一般社団法人 コミュニティヘルス研究機構 理事長/慶応大学 衛生学公衆衛生 講師

<ファシリテーター>

瀬沼希望、山内幸治(NPO法人ETIC.)

罹災証明が出ない中、自宅に戻る選択をせざるを得ない住民が安心できる支援を―奥能登・古民家ホテル「じろんどん」 水上さん

 

山内 : 奥能登で古民家ホテル「じろんどん」を営む水上志都(みずかみ・しづ)さんからは、能登町の現状、課題感をお話ください。

 

水上さん : 今回の震災では、私が運営する宿屋の建物自体は被害が少なかったため、1月8日から災害復旧のために能登入りする支援者の方に宿泊先として提供しています。

 

現在の支援状況は、命を救う段階から次の生活再建の段階へと移っているのを感じています。例えば、避難所が少しずつ縮小されていく中、住民の方は自宅に戻ることになりますが、自宅自体はまだ罹災証明が出ていないことで修繕が難しい状態です。そのため、一部損壊の自宅にしかたなく住む人が増えています。今後は、住民自ら生活を成り立たせるためのサポートが必要だと感じています。並行して、これまでとは異なる課題が多く出てくることを危惧しています。

 

山内 : 現状を踏まえて、今後、必要だと感じる支援はありますか?

 

水上さん : 罹災証明がなかなか出ない住民に向けて、自宅が倒壊する不安を少しでも解消できる支援があればと思っています。例えば、第三者となる建築士が住居の安全性を診断するホームインセクションのような取り組みで、「今はリビングの基盤が一番安定している」など、専門的な意見を聞けるだけでも不安が軽減できると思うのです。罹災証明が出た後も、修繕の際、セカンドオピニオン的に第三者の専門家から意見が聞けるなど、自宅での生活再建が少しでも安心して整っていけるように、相談相手が増えるとありがたいと思います。右腕派遣に関しても、町で事業を営む小さな事業主や農家などへも広がることを期待しています。

 

山内 : 支援が必要なところにきめ細かく行き届くように、各課題を案件として内容を整えて、力を貸してくれる方を募っていく組み立てが大事だと感じました。

避難者の帰る場所がない、外部支援者の長期宿泊先がない

 

山内 : 一般社団法人 コミュニティヘルス研究機構 理事長の山岸暁美(やまぎし・あけみ)さん、能登での支援活動についてお話ください。

 

山岸さん : 看護師、ケア職の専門家集団として、現在、珠洲市、輪島市、穴水町、七尾市、石川県・志賀町の福祉避難所や介護施設へのサポートを行っています。

 

私たちは、今後、自殺を含めた災害関連死の増加を危惧しています。熊本地震の際には、災害直接死の4倍となる災害関連死が生じました。そういった事態を何とか阻止したいし、災害関連死のリスクは生活の中にあるため、住民一人ひとりの生活再建をしっかりとサポートしていきたいです。

 

現在、住民の方への支援は、避難生活を支える段階から、新しい生活を支える段階へと変化しています。輪島市や珠洲市では、若い年齢層を中心に二次避難が進みましたが、二次避難先から「3月上旬には出てほしい」と言われている方も多くいます。しかし、仮設住宅の数が十分ではないなど、「帰るところがない」「生活再建をする場所がない」人が多いことも大きな課題です。

 

また、発災直後、ヘルスケア領域の支援は手厚い傾向にありましたが、避難所から自宅などへ戻る段階になると、同じ質の支援を期待することが難しくなります。私たちは、団体での活動を通して、地元の方々や支援者の方と横のつながりを作りながら、長期的なヘルスケアリフォームの支援活動を推進したいとと考えています。

 

一方で、宿泊先の課題があり、特に奥能登では、1日20人~30人の専門職メンバーが各地域に散らばって活動していますが、車中泊をしているメンバーが少なくありません。

 

地域によって交通手段がないことも大きな課題となっています。東京、大阪、名古屋の方面から奥能登に入るメンバーの大半は、雪道での運転経験がなく、特に輪島市内の移動では、車がない、雪道の運転ができないといった課題が日常的に発生しています。

 

山内 : 宿泊先や交通手段がない課題を抱えながら体制を整えていくオペレーションの難しさを感じます。

 

森山さん : 被災者の方が住む場所、また支援者の方の宿泊先と拠点の課題が同時並行で起こっているのを感じています。能登には空き家はたくさんありますが、損傷が激しい空き家が大半のため、今後、長期の宿泊需要にどう対応していくかが大きな課題だと思っています。

 

山内 : ボランティアの方が能登で長期的な活動をするための環境整備が必須です。七尾市の中心街と奥能登でも状況が異なり、二次避難先の金沢でも状況が違うなどフェーズのばらつきが生じています。今回の現状の特徴だと思っています。

 

森山さん : 各集落の集会所は、大きな集会の場として利用する部屋のほかに、冠婚葬祭のために小さめの部屋を作っていることがほとんどです。大きな炊事場もあります。以前、そういった集会所を宿泊先として借りたことがありますが、拠点を整理する場として利用できるように連携が取れないかと思いました。

もともとあった地域の課題が震災で押し寄せるその時に備えて、共に支援活動を

 

水上さん : 奥能登は観光が一つの大事な収益源で、今後、能登の優美な風景を残すことは、地元の生業を再び発展させるためにも大事だと思っています。また、この先50年後に起こり得る地域の課題が、震災をきっかけに一気に押し寄せていることもたくさんあると思います。地元の方は一生懸命頑張っています。みなさんにもご協力いただけるとうれしいです。

 

山岸さん : ビニールハウスに避難されている方のヘルスケアマネジメントを依頼された時、コーディネート役の地元の方がお風呂を沸かしてくださったんです。山水を引いて。私たちはお風呂に入れないことを覚悟で支援入りしたのですが、実は、私たちがお風呂に入ることで、その方が元気になっているようにも見えて、役割があることの大事さを強く実感しました。

 

輪島市や珠洲市の避難所には高齢者の方が多く、日中座っている状態です。そうすると、認知機能が低下したり、起きたり立ったりがつらくなってきたり、もともとの疾患の症状が少しずつ悪化したりしてしまいます。そういった状況を防ぎつつ、地元の方々が元の生活に戻り、自分の役割をしっかりと担うための支援が大事だと痛感しています。皆さんと一緒にサポートできたらと思います。

 

森山さん : ビニールハウスの避難など、報道で見ると悲惨に思われるかもしれませんが、実は、ビニールハウスの持ち主の方は、そこに避難されている方々の世話をされていることで、自分の役割を感じて、ふんばっている状況があります。今やらなければならない役割で地元の人たちが前を向いていけるように、地域の支え合いや共生社会をつくっていくことが今後向かう道筋なのだろうと感じています。一方で、今解決しなければならない課題はたくさんあります。みなさんの力を借りながら一つひとつ解決していければと思っています。

 


 

現在、能登の復興に携わる仲間を各団体・企業で募集中です。ご関心ある方、力を貸してください。

>> 復興を支え、能登の未来をつくる仕事

 

………

「能登半島地震・報告会&意見交換会」は、次のスケジュールにて行っています。

各内容は、レポート記事としてDRIVEに掲載予定です。

 

・第1回目 : 1月23日(火)16:00~17:30(※終了しました)

・第2回目 : 2月20日(火)14:00~15:30(※終了しました)

・第3回目 : 3月12日(火)16:00~17:30(※終了しました)

・第4回目 : 4月18日(木)11:00~12:30(※終了しました)

・第5回目 : 5月31日(金)14:30~18:00 または 6月1日(土)11:00~12:00

※第5回目は、「and Beyondカンファレンス2024」(羽田イノベーションシティ)

プログラムの一環としてセッションを開催いたします。

※報告会&意見交換会の参加費は無料ですが、入場券が必要となります。

(【1日券】一般(5/31金 )¥10,000【1日券】一般(6/1土)【1日券】学生(5/31金)¥1,500、【2日券】一般(5/31金~6/1土 )¥13,000【2日券】学生(5/31金~6/1土 )¥2,000)

詳細・お申込みはこちらから

https://peatix.com/event/3920580

 

能登復興ネットワークでは、2月からSNSでも情報を公開しています。

最新情報はこちらからチェックしてください。

・facebook

https://www.facebook.com/noto.iyasaka

・instagram

https://www.instagram.com/noto.iyasaka/

 

1月23日から3月4日まで行った「能登復興ネットワーク クラウドファンディング」では、目標額の7,700,000円を達成し、計11,576,411円のご寄付をいただきました。想いを寄せてくださったみなさま、ありがとうございました。

 

能登半島地震から未来に向けた力強い一歩を。復興に向けた活動を強力に推し進めたい!

https://camp-fire.jp/projects/view/736115

【主催】能登復興ネットワークいやさか

 

………

エティックでは今後、中長期にわたる支援を続けていくための寄付を受け付けています。

>> SSF災害支援基金プロジェクト 能登半島地震緊急支援寄付

>>Yahoo!JAPANネット募金 令和6年1月能登半島地震地域コーディネーター支援募金(エティック)

……………

こちらもあわせてお読みください。

>> 「避難所の立ち上げ、物資支援、炊き出し」能登が、能登らしく復興するために―能登半島地震復興支援 第1回活動報告・意見交換会レポート【前編】

>>【能登半島地震・報告会&意見交換会】いま必要な支援とリソースについて、一緒に考えませんか?

>>それぞれの個性や地域資源を活かした復興へ。能登半島で生まれている未来へ向けた動き

 

この記事を書いたユーザー
たかなし まき

たかなし まき

1971年愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科卒業後、地元の企業に就職。その後上京し、業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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