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DRIVE転職者ストーリーVol.5 社会に支えられる側から社会を支える側に 〜発達障害者の就労支援の現場から〜(株式会社Kaien・近藤唯史さん)

2015.12.12 757view 

DRIVEを通じて、未来をつくる仕事と出会った人たちを追うインタビューシリーズ、「DRIVE転職者ストーリー」第5弾!

今回は、発達障害を抱えた人の就労支援を主事業とする株式会社Kaienに転職した近藤唯史さんを紹介します。近藤さんは6月に入社したばかりですが、福祉業界には珍しく異業種からの転職。前職経験の長さや社会問題への意識など、これまでの転職者とはまた一味違うお話を聞くことができました。

株式会社Kaien・近藤唯史さん

株式会社Kaien・近藤唯史さん

株式会社Kaien

2009年9月に設立された発達障害をもった方に特化した人材サービス・就労移行支援・教育事業を行う株式会社。発達障害が障壁となって社会との隔たりを生むことがないよう、「だれしもが社会に貢献できる」を理念に掲げて活動を行う。同社の就労移行支援を通じた就職率は85%、1年後定着率も90%超と業界最高水準。 現在求人掲載中>>「発達障害者と企業との"懸け橋"になる」

30歳を目前に異業種からの転職を決意

―DRIVEを通じて転職されたとのことですが、前職はどのような仕事だったのでしょうか。

前職は会計システム関連のSEをしていました。新卒で入って9年半勤めたところで転職したんです。

―まったく別の業種・職種からの転職ですね。なぜ福祉の世界へ転身したのでしょう。

もともと大学生のころから福祉関連の仕事に関わりたいという気持ちはありました。そのころは手話に興味があったので、発達障害というよりは聴覚障害の方を支援するような仕事を……と漠然と考えていたのですが、実際に就職活動をする段階になって、いきなり福祉の世界に入るのではなく、ほかの世界に行ったほうが自分の世界を広げられるのではないかと思ってSEになったんです。SEとしてずっと続けてきたところで30歳という年齢を迎えるにあたり、ここらで異業種に転職しないとな、と思ったのが転機でしたね。

インタビューのようす1

―30歳の壁ですね。私にも経験があるのでよくわかります(笑)。福祉といってもさまざまですが、Kaienに決めたのはなぜでしょうか。

DRIVEで検索していたら、たまたま出会ったのがKaienでした。最初は聴覚障害に関する仕事を探していましたが、DRIVEを見ているうちに、「別に聴覚障害に限定する必要はないんじゃないかな?」と思うようになったんです。そしていろいろ考えているときに、Kaienの存在を知りました。この会社は「障害を抱えた人も資本主義社会への貢献ができる」という理念に基づいているので、「障害者を助けよう」みたいな「福祉」という言葉を最前面に押し出してはいなかったんです。そうした理念がすごくいいな、と思ったのが応募した理由ですね。

―理念への共感は社会的企業への転職では必須ですね。DRIVEはどういう経緯で知ったのでしょうか。

もともとNPOで働いていた知人から、「いいサイトがあるよ」と教えてもらいました。

―人に紹介していただけるのはうれしいですね。使われた感想として、DRIVEの魅力はどこにあると思いますか。

きれいなサイトだな、というのが第一印象でした。一番の特徴はインタビューの多さじゃないでしょうか。最近、また読み返したりもしましたが、これだけのインタビューを掲載している転職サイトはあまりないように思います。

―ありがとうございます。元々「一般企業からNPOやベンチャーに転職したいけどハードルが高い」という声を受けて、転職や起業した人の生の声を届けようというのが始まりだったので、そのように評価していただけると嬉しいです!

自分ひとりが働くよりも、多くの人が働けるように支援するほうが効率的だと思った

―もともと社会問題については関心が高かったのでしょうか。

いいえ、むしろ全然関心を持っていなかったと思います(笑)。社会問題の中でも興味のあることだけは勉強しようと思ったりしましたが、とくに日常的に関心が高かったということはありません。

―こうした世界に飛び込む人は社会問題に高い関心を寄せている人ばかりかと思いきや、そうとも限らないのですね。障害者福祉に関心をもったのは、やはり身近にそうした方がいらしたからでしょうか。

そうですね。あまり障害をもっているということをその人に対して意識はしていなかったのですが、やはりご家族と接したときに「自分たちがいなくなったらこの子の将来はどうなるのだろう」という不安を言葉の端々ににじませていらっしゃいました。やはり耳が不自由では人とのコミュニケーションが難しくもなりますし、障害を抱えている人はその人自身だけでなく、ご家族にとっても大変な苦労があると思います。そうした方々の不安を少しでも和らげる力になりたいと思ったのがきっかけでしょうか。

インタビューのようす2

―いざ実際に転職しようと考えたときに、最も後押しとなったものは何でしょうか。

仕事というものについて考えてみたとき、「企業で自分ひとりが働いていくこと」と「障害のある方をサポートして、その人がちゃんと働けるように支援すること」というのを比べて考えたんです。どちらが社会的に効率の良いことなのだろうか、という視点で考えてみると、自分がひとりで頑張るよりも、ほかの人を支援したほうが経済も循環するし、なにより国から支えられている人が支える側に回ることができればいいな、と思ったんです。

―9年半かけて積み上げてきた経験が、異業種に転職することで再びゼロからのスタートというのは、プレッシャーもあったことと思います。そうした面での不安はありませんでしたか。

楽観的なものであまり気にしませんでした。結婚はしていますが子どもはまだいないので、そういう面では生活も何とかなるだろうなと。あまり言うと怒られてしまいそうですが(笑)。

仕事の内容に関しても、私がいましているブリッジ・コンサルタントという仕事は特別な経験というよりも、「社会人としての常識・良識」が最も重要な能力と言われています。採用のときにもそこを持っているかを重視して採用したのだから、「自分がこうすればよい」と思った判断を信じて行動すればいい、と言われたので安心することができました。

―楽観的な姿勢というのは大事ですね。いままでお話を伺った方々も、そういう方が多かったようです。

もちろんまったく不安がなかったわけではありませんが、内定をいただいてから入社する前の3月に合宿があったんです。半年に1回全社で行っているものなんですが、内定者も行けるものなので、そこに参加することで雰囲気を知ることができたのは大きかったと思います。

―どのような合宿ですか。

40人くらいで、2泊3日の合宿です。半年間の振り返りと、次の半年間について、新しいことを考えたり、いろいろな議論をしたりというものです。そうすることで自分たちが掲げているミッションを再確認したり、一緒に働く仲間のことをより深く理解したりすることができるのです。面白いですよ。

―入社前に多くの社員と交流できて、さらに会社のことを肌感覚として理解できる場があれば確かに自然に溶け込めるでしょうね。

実際、いざ入社したときも、すでに合宿で顔を覚えられてますから、最初から仲間という感覚でいけましたね。「はじめまして」ではなく「久しぶり」でスタートするおかげか、まだ入社して半年も経っていないのに、もっと前からいるような感じです。

―居心地がよさそうですね。職場はアットホームな感じなのでしょうか。

実はそれほどアットホームというわけではありません。どちらかという厳しく指摘しあう文化を大事にしています。ギスギスしているわけではありませんが、こうした業界にありがちな「のんびり和やかに」というのは排除したい、というのが社長のカラーです。

やはり株式会社という形態をとっているため、きちんと利益もあげなければいけません。さらに言えば、私たちが支援する発達障害をお持ちの方々も「資本主義社会の一員」として組み込んでいかなければならない、その人の人生に影響を与えることを考えると、ものすごく真剣に取り組まないといけないわけです。

―なるほど。株式会社という形態をとるところは、概して似たような感じかもしれません。会社として見たとき、一般企業とはどんなところが違いますか。

決断の早さが比べ物になりませんね。前にいた会社は600人規模だったので、一つの物事に関わる人数も多く、なかなか物事が前に進まない世界でした。やはり中小ならではの早さというのはあると思います。

もうひとつは、進取の気質でしょうか。明確なミッションを掲げていることもあり、「これは自分の仕事」とどんどん積極的に自分から仕事を生み出す人が多いです。私も最初のころは「もっと自分で考えて動いちゃっていいよ」と言われました。とくに研修制度が充実しているわけでもなく、異業種からの転職で知識が不足していたので戸惑いもありましたが、先ほど話したように、とにかく「社会人としての常識・良識」に従って行動することを心がけています。

「助ける、支える」より、その人の力を発揮できる方向を示す

―いまのお仕事の内容について教えてください。

ブリッジ・コンサルタントという仕事ですが、訓練生に対する仕事、就職先の企業に対する仕事、行政に対する仕事の3つに大別できます。訓練生については、いわゆる社会常識やビジネススキル、ビジネスマナーを教える仕事です。企業様への対応としては、主に採用後のフォローアップになります。訓練生が就職した後、きちんと定着するかどうかは大事ですので、定期的に訪問してサポートを行うようにしています。行政に対しては、新たに訓練生となる人がいないかどうか、紹介をお願いしたりしていますね。

訓練中のようす

訓練中の近藤さん

―訓練生というのは、どういう方々が中心なのでしょうか。

年齢でいえば20?30代の方が多いです。1拠点につき約30人くらいで、現在5拠点あるので全部で150人ほどでしょうか。12月に川崎に6拠点目が開設されるので、現在募集中となっています。ひとりのスタッフが5?6人の訓練生を担当して、2週間に1度はカウンセリングを行って就職の相談などをして、最初から最後までずっと付き合うことになります。なので、就職が決まると、真っ先に報告してくれたりして、それがとってもうれしいです。

―やりがいはそこでしょうか。

そうですね。やはり一緒に頑張った訓練生が、無事に就職が決まって報告をくれたときが一番ですね。そうしたやりがいを求めて入ったわけではありませんが、前職ではとくにお客様との接点がたいしてあるわけではなかったので、こうした実感を得られるのは大いに励みになっています。

インタビューのようす3

―訓練期間はどの程度なのでしょうか。

人によってそれぞれですが、半年くらいで訓練を終える人が多いですね。福祉サービスなので8割以上の方が自己負担なしで受けているのですが、2年間という期限つきなので、その期間内に就職できるように頑張っています。

―訓練期間が半年ってかなり短いですが、それでも定着するんですよね。

同業他社さんと比べると短いかもしれませんが、定着率は1年後で9割以上になので高いといえるでしょう。

―なぜ短期間の訓練でもきちんと定着するのでしょうか。Kaienの訓練プログラムの強みはどこにあるのでしょう。

就労支援というサービスはほかにもありますが、Kaienでは発達障害に特化したプログラムを組んでいることが大きな特徴です。アスペルガー症候群から注意欠陥(ADHD)、学習障害(LD)などの事例が多くあるので、障害の内容に応じて細分化されたプログラムがあるのは大きいと思います。実際に、障害の度合いも幅が広いため、同じ分類の障害であっても対応は変わってきます。たとえば知的レベルは十分だけれども情緒レベルでの障害を抱えている方についてはPC操作を基本とした技能訓練を行っている反面、知的レベルに少し問題を抱えている方については、印刷・封入などの軽作業を中心としたプログラムを組んだりしています。

―利用者に合わせた訓練プログラムというのは、利用者にとっても、採用企業にとってもありがたいものですね。実際に採用した企業からの反応はいかがでしょうか。

おかげさまで定着率が高いこともあり、良い評価をいただいていると思います。企業様を訪問したときに、担当者から「Kaienから就職した人はホウレンソウ(報告・連絡・相談)がちゃんとできているね!」という声などをいただくことが多くあります。実際、訓練プログラムのなかでも「ホウレンソウ」は大事だからちゃんとやるように、と何度も言っています。

―「ホウレンソウ」がきちんとできるだけで信頼できますよね。障害を抱えているというだけで、働ける場所が限られてしまうように思っていましたが、実際には「ああいう場所で働きたい」という憧れがちゃんと実るということに感心しました。

いわゆる特例子会社という、障害者だけを採用している会社であったりはしますが、なにより働く環境が整えられているので、そうした会社は障害を持った方が働くのを憧れる場所であるようです。働きやすい環境であるかないかは、普通の人たちと同じように大事なことです。

―そういう環境が整っていない企業からの受け入れ相談などもあるのでしょうか。

配慮の仕方がわからない、どうすればいいのだろうか、という相談業務も行っています。発達障害に限らず、配慮さえあれば働けるはずの障害を持った人が働けていない環境がもったいないと思っているので、そういう企業の相談には喜んで応じたいですね。

―どんな会社も、「障害をもった方に働ける場を提供する」という考えには賛同してくれると思いますが、実際には取り組みは遅々として進んでいません。これはなぜでしょうか。

単純にわからないんだと思います。精神障害をもった方って難しいよね、という程度の認識しか人事採用担当にもないのが現状ではないかと思います。私も転職前に興味があって調べたからこそ、ある程度の知識を得ることはできましたが、事実としてそういう状況にあります。精神障害といってもものすごく幅広いですし、いろんな人がいるため、一概に説明できるものでもありません。専門でなければそうした知識もありませんし、一般の人にとってはそれを調べる時間もないでしょう。本当にそうした気持ちがあるのであれば、専門の方に声をかけて相談してもらいたい、というのが正直なところです。

―障害者と密接にかかわるようになって、意識が変わった部分というのはありますか?

変わったことはとくにありませんね。「助ける、支える」というよりも、その人なりの力を発揮できる場、幸せに生きていける方向を示す、という感じで仕事をしています。

専門性が集えば、よりKaienの輪を広げられる

―いま、Kaienには100人ほどの従業員がいらっしゃるんですよね。

だいたいそうですね。スタッフと、フルタイムではない講師を合わせるとそのくらいです。講師は定年退職した方などにお願いしています。

―リタイアされた方にも仕事をお願いしているんですね。シルバー人材の活用という側面もお持ちとは知りませんでしたが、そうした方々にとっては、普通に培ってきたものが価値を生み出して、定年後でも社会貢献が果たせるというのはうれしいことですね。

そうした人材活用という目的で講師採用をしているとは、社内では聞いたことがありませんが(笑)。ただ、やはり経営者や管理職などで腕を揮われてきた方々の社会経験を、別の人たちに活かしてもらいたい、ということで採用を始めました。

―スタッフの方は転職してきた方が大半でしょうか。

やはり社会人経験が必要な仕事であるため新卒採用はあまりなく、転職者ばかりです。30代の人が中心ですね。何かしらの福祉の仕事についていた方が多いようですが、私のように他業種から転職してきた人もいます。

―今後入ってくる人はどんな人がいいと思いますか。

いろんな経験をもった方に入ってきていただきたいと思います。社会人としての常識を備えたうえで、自分の専門を持った人に加わってもらえると、Kaien全体としての輪が広がるな、と思っています。私自身、別業種でしたが社内SE的なこともしているので、前職の経験はちゃんと活かせて、役に立てる部分もあるんだと実感しています。

―ほかの企業にいった訓練生が戻ってきて働いてくれたらうれしいですね。

そうですね。訓練修了後も戻ってこられる場があるのはいいことです。いまでも土曜日などにOB・OGの方に就職セミナー的なものを開いてもらって、訓練生に聞いてもらうこともしています。少しずつでもこうして、障害を持った人が、同じ障害を抱えた人を支える力になる環境が生み出せていることは、とても素晴らしいことだと思います。

現在、株式会社Kaienではメンバーを募集しています!詳しくは以下のボタンから。 発達障害者と企業との”懸け橋”になる(株式会社Kaien)

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この記事を書いたユーザー

中林 智

中林 智

1981年生まれ。神奈川県鎌倉市出身。自由学園卒業後、金融コンサルタントとしてリスク分析の仕事に従事。中堅出版社に転職、編集者を経てフリーランスに転向。ライター兼編集者として活動。「人に楽しんでもらえる辞書づくり」をライフワークとする。趣味は楽器演奏。

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