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篠鉄平さん 農家志望から“農家を支える”デザイナーへ―いま、地方で働く意味を考えるvol.1

2015.03.19 

近年、地方に移住して活動するクリエイターが増えています。デザイナーやライター、カメラマン、クラフト、芸術家など、地方に拠点を移して必要があれば都内へ行くという、暮らしと仕事を両立するスタイルを実現しています。

NPO法人のふるさと回帰支援センター(東京都千代田区)が2015年2月10日に発表した「田舎暮らし希望地域ランキング2014」では、山梨県が1位に選出されました。都心からは2時間ほどの距離ということで、移住しても仕事を続けられる環境が整っているという理由で移住希望者に人気がある場所です。

今回話をうかがった篠鉄平さんは、居住地である八ヶ岳周辺地域のデザインを中心として、甲府市や都内での仕事も手がけるデザイナーさんです。いま、篠さんの考える地方での働き方をうかがってみました。 篠鉄平さん

横浜から山梨へ

北杜市在住のデザイナー篠鉄平さんは、農家を志して山梨県に移住してきました。

 

もともと篠さんのご出身は横浜市です。東京の美術大学に進学して、メディアアートやプログラミングなどの情報デザインを学びました。在学中から農業に興味があり 、卒業後に研修先を探し、1年経ったころに、山梨で農業研修先が見つかり移住を決めました。

農家志望から“農家を支える”デザイナーへ

農業研修をはじめて約2年経った2011年の年末、研修先の都合もあり農業を離れます。バイトをしながら次の働き方を模索しているうちに、デザインの仕事が向いているのではないかと思い始めるようになりした。

 

「農家はたくさんいる。自分は農業を支える仕事がしたい」――そう思いデザイナーをはじめました。 きっかけになったのは、農業を通じた縁。仲間から農産物のチラシをデザインしてみないかと誘われ、その一件をきっかけにデザインの仕事が入り始めるようになりました。 篠鉄平さん

手書きが伝わるデザイン

篠さんのデザインに共通するのは"手書きの感覚"です。デザインの作業はパソコン上での処理がほどんどですが、イラストなどの原案は自分で描き起こします。小さなころから絵を描くのが好きだった篠さんにとって、手描きのイラストやフォントはデザイナーとしての武器のひとつになっています。

 

「愛着があるもので、シュールさも加われば自分好み」――そう語る篠さん。出来上がったデザインを手にすると、心がほぐれていくような質感が伝わってきます。

予想は裏切るけれど、期待に応える

これからのことをうかがうと、「好きなことをやっていればなんとかなる」と自分を鼓舞するかのように篠さんは語ってくれました。

 

現在は農業関係のデザインだけでなく、フリーペーパーの制作やwebコンテンツデザイン、また甲府市内の企業の会社案内なども手がけています。 覚悟を決めてデザイナーと名乗り始めてから、1年半が過ぎました。仕事は途切れずに、順調に増えています。農産物のチラシ、ロゴ、地元で開催されるイベントのポストカード……デザイナーが関わる仕事は多種多様です。

 

デザインでできることは限られている一方で、デザインだからできることもたくさんあります。篠さんが目指すのは"予想は裏切るけれど、期待に答える"デザインです 。

地方で働く意味、そして今後

地方で働くメリットは何でしょうか?自然が豊か、環境が良い、家族と一緒にいる時間が増えるなど、その答えはさまざまです。

 

また一方で、"都市にいる必要性が少なくなった"と考えてみてはいかがでしょう? インターネットが普及して、現場にいなくてもできることが劇的に増えました。ネット会議や画像データのやりとりなど、インターネットを通して仕事のほどんどを済ませられる場合も増えてきました。そう考えると、都市に拠点を構える意味が薄れてきます。 篠鉄平さん 今回お話をうかがった篠さんは、家族との時間を楽しんでいる様子でした。もうすぐ2歳になる愛娘と夕食を楽しむ姿には、都市で夜中まで働くのとは違った充実感があるようにも感じます。

 

都市と地方とを対立関係で考える必要はありません。篠さんのように、柔軟な考え方で暮らし全体をデザインしていくのが、これからの働き方と暮らし方なのかもしれません。

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町田 裕樹

1981年生まれ、農家/ライター。無農薬で花・野菜苗を育てる農家(ataraxia)を営みながら、フリーライターとして活動中。農業系WEBマガジン「つちとて」運営。