前編に引き続き、認定NPO法人キーパーソン21に新卒入職された下川原彩さんへのインタビューをお送りします。
悩みを共有することで次に進める
荘司:実際入職されてから、入職前後でのギャップなどはありましたか?
下川原:実はほとんどありませんでした。というのも、学生時代から、時間と気持ちの8割!?(笑)を団体の活動に費やしていましたから、大きく入職前後では変わらないですね。他を知らない強さと言いますか、他を知らないからこそ、目の前のことに集中して自発的に取り組むことができています。
荘司:なるほど、新卒ならではの悩みなどはありますか?
下川原:いま4年目なので、大きな悩みは無くなりましたが、昨年くらいまでは、「しんどい大変」「役に立てていない」と感じることが多かったです。
荘司:具体的にどんなことが大変でしたか?
下川原:スタッフが多いわけではないので、その分責任の量が多いです。色んな人と関わる、つまり、色んな捉え方をする人がいるということなので、メール一通送るにしてもとても時間を掛けていました。また、学校と企業をコーディネートする上で上手くいかなかったことを、重く捉えすぎてしまう傾向もありました。
荘司:なるほど。ただそれって、NPOに限った話ではないように感じるのですが、いかがでしょう。
下川原:本当にそう思います。働き始めた方が、共通して抱く悩みだと思いますし、そういった意味で、私は「NPOだから」「企業だから」という話ではないと実感しています。
荘司:そういった悩みをどのように乗り越えられたのですか。
下川原:時には涙を流しながら電車に乗って帰る日々もありましたが、ターニングポイントは入職3年目の3月12日だったと記憶しています。
荘司:すごい具体的ですね!(笑)何があったのですか??
下川原:私は元々悩んでいることを、あまり人に話すタイプではないのですが、もうどうしようもならないと思った時に、面談の場で、思い切って代表に、自分がこのことに悩んでいるということを打ち明けてみたのです。
その時、「自分が思っていることを人に伝えることで、こんなにも楽になるんだ。」ということを実感したのです。 それからは感じていることは、なるべく口に出そう、というマインドに変わり、肩の力を抜いて働けるようになりました。私と同じように新卒でNPOに入職した方々とも定期的に会う機会を作って、そこで相談や情報交換もしています。同期は社外にいるという感覚ですね。
荘司:「社外の同期」というのは面白いですね。ソーシャルセクターって、企業間競争と違って、競争より共創の意識が強いように感じます。お互いに情報交換し、お互いの団体を高めあう雰囲気があるのが魅力的ですよね。
コーディネーターとして企業と学校を結ぶ
荘司:現在団体での業務は、どういったことをご担当されているのですか。
下川原:いまはキーパーソン21が行う、主に学校で行うプロジェクトの運営推進を担当させて頂いています。学校と打ち合わせをして、事前に生徒の様子を伺い、プロジェクトの説明だけでなく、プロジェクト前後の指導方法についても、ご提案させて頂いています。それに伴って、会員や協賛企業様にも協力をお願いする必要があるので、企業へは営業活動も行い、両者をマッチング、コーディネートしています。
キーパーソン21の活動の様子
荘司:学校と企業の間に立って、調整されている感じですかね。そこで気をつけてらっしゃる点など、ありますか。
下川原:言葉(話し方)には気をつけています。学校と企業、そして私達の三者で打ち合わせする場もあるのですが、実施をさせて頂いている学校側、社員とお金などをご提供いただいている企業側、両者に敬意と感謝を払った話し方を心がけています。コーディネートの基本ですが、この場では誰を大事にしなきゃいけないのかなど、小さな心遣いを大事にしています。すべては過去の失敗から学んだことです。
荘司:純粋な疑問なのですが、なぜ企業側はプログラムに賛同し、お金などを出すのでしょうか。
下川原:協賛企業様はCSRの一環としてだけではなく、最近は人事研修やファミリーデーにも導入して頂いています。子どもたちと触れ合うという非日常の時間の中で、社員に新たなアンテナが立つ点や、熱意をもって仕事をする大切さを気づく点などに、企業は価値を見出してくださっています。
荘司:最後に新卒NPOを考えている方へのメッセージをいただけますでしょうか。
下川原:就職先が企業でもNPOでも、組織形態は何でもよいと思いますが、自分が何にわくわくして、何にエネルギーを注げるのかを考えた上で、それにフィットする場所が、結果的にどこか?という話だと思います。
「NPOで働きたい」その気持ちの根底には、必ず具体的な理由があるはずです。自分で考えて、考えて、考えて、決めたことならば納得感と覚悟が生まれます。それはまさに「自分の人生を主体的に生きる」ということです。自分が何をしたいのだろうかと悩んだら、ぜひキーパーソン21に遊びに来て下さいね(笑)
荘司:本当におっしゃるとおりだと思います。では今後やってみたいということはありますか?
下川原:社会や自分の環境が変わっても、自分の足でしっかりと強く生きていける人になりたいです。また地元・北海道でキーパーソン21のプログラムを普及させたい、という想いがありますね。現在は関東中心に、九州や岩手県など全国でも実施させて頂いていますが、学校側から多くのお声がけを頂いているにも関わらず、要望に応えきれていない現状もあります。今後はそういった声にもっと応えていきたいです。
荘司:さらに全国に広がっていくことを期待しています。本日は貴重なお話ありがとうございました。
インタビューを終えて
「NPOが特別な場所ではない」「主体的な人生」という言葉が非常に印象的なインタビューでした。
「企業」の中にも様々な企業があるように、「NPO」という呼称も、大きな一括りでしかありません。自分が主体的に熱意を傾けられる対象。言い換えれば、「わくわくエンジン®」や「ココロオドルシゴト」を探すことが、一番大事なのでしょう。それらを実現する場所として、学生の視野に「NPO」という選択肢が入ることで、彼らの職業選択の幅が広がることを心から願っています。
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