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東京から移住者を呼ぶほど大阪はヤバイのか?「ボケない大阪移住プロジェクト」塩山諒さんに聞く大阪のリアル(前編)

2016.09.06 

「ボケない大阪移住プロジェクト」―ソーシャルメディアで拡散されまくっていた企画を眼にして思ったのは、「ついに大阪でさえ移住者を募集する時代になったか」ということでした。

ボケない大阪移住プロジェクト

ボケないといいつつ体を張ってボケているトップ画像。右端に刺さっているのがお話をうかがった塩山諒さん。

地方創生の掛け声にあわせて全国で加熱する人材獲得合戦に、なぜ大阪が名乗りをあげたのか。

そしていったい何をするつもりなのか。地面に人が突き刺さっているイメージ画像を眺めれば眺めるほど色んな疑問が湧き上がってきたので、「ボケない大阪移住プロジェクト」の仕掛人であるスマスタ(NPO法人スマイルスタイル)の塩山諒さんにお話をうかがってみました。

NPO法人スマイルスタイル 企業や行政の経営課題・事業課題を、研究や実践をもとにしたデザインの力で解決し、あらゆる境遇の人々が「ふつうのしあわせ」を感じることができるソーシャルデザインカンパニー。大阪を拠点に様々なプロジェクトを展開しています。
塩山諒(しおやま・りょう)さん 1984年兵庫県生まれ。2007年に社会変革への衝動を形にしようと「スマスタ」を設立。既成概念にとらわれない「創造力」と、セクターを越えた「つながり」で、この豊かなまちの格差や貧困問題解決に挑戦している。民間の職業安定所「ハローライフ」、高校生とつくる『いしのまきカフェ「 」(かぎかっこ)』は、2014年度グッドデザイン賞を受賞。
塩山諒さん

ボケない大阪移住プロジェクトの仕掛人、塩山諒さん。

大阪には「おもろい若者」が必要だ

石川:まず背景からうかがいたいと思いますが、どうして「大阪移住プロジェクト」なのでしょう?大阪は大都市ですし、移住者を集めなくてもよさそうに思えますが。

 

塩山:意外と知られてませんが、大阪府は2015年発表の国勢調査で、戦後はじめて人口が減少しました*。大阪市単体でみると人口は増えているのですが、大阪府という単位では、これから人口はどんどん減っていきます。 *平成27年国勢調査 速報集計によると大阪府の人口は8,838,908人。平成22年比較で26,337人(0.3%)減少。

 

石川:大阪でさえ、ついに人口が減り始めた。そういった問題意識のもと、移住促進プロジェクトを始められたんですか。

 

塩山:そういった統計もありますし、何より「おもろい人が減っている」という実感があります。特に若い人は東京に行ってしまう。大阪府から東京圏へはざっと年間1万人の転出超過なんです。およそ3万人がやってきて、4万人が去っていく。差し引きの1万人が、毎年東京に召し上げられてしまっているわけです。

 

石川:けっこうな人数ですね。

 

塩山:もう少し細かくいうと、大阪府では大学などを卒業して社会にでる若者が年間約4万人いますが、その多くは東京に流出しています。進学にともなってたくさんの若者が大阪に集まってくるのに、卒業と同時にかなりの数が東京に行ってしまうのです。

 

石川:大阪でさえ、地域の未来をリードする若者の流出が止まらない。

 

塩山:そういうことです。お笑い芸人って売れだすと東京に移っちゃいますよね。ダウンタウンがいい例で、東京に出て行ったっきり大阪に帰ってくる気配は全くありません。お笑いに限らず、各方面でトップクラスに登りつめると、東京に行ってしまいます。マーケットが大きいし、刺激的なのだろうとは思うんですけど。

 

石川:そうしておもろい人が減ってしまう。

大阪のトガった中小企業ではたらく

塩山:その一方で、建築家の安藤忠雄さんのように大阪にとどまり続ける人もいます。「大阪に育てられたから、この街にいるんや」と。大阪に根を張りながら世界で活躍している人たちは、あちこちにいます。そういう人たちは職人気質で、人知れず世界のトップランナーとして活躍していることが多いですね。実際、ものづくりでシェア世界一になっている中小企業がたくさんいるんです。

 

石川:たしかに大阪はユニークな中小企業が多そうです。

 

塩山:僕らが「ボケない大阪移住プロジェクト」を通して伝えたいことのひとつが、「大阪の中小企業の面白さ」なんです。

 

石川:なるほど。移住プロジェクトの中身についても教えていただけますか?

 

塩山:「ボケない大阪移住プロジェクト」は、大阪の仕事と暮らしを体験してもらい、うまくマッチングしたら移住してもらおうという企画です。プログラムの第一弾として、選りすぐりのトガった企業が繰り出す”お題”に対して、参加者がアイディアでツッコむ「職場体験」を実施します。

移住先候補企業

リストアップされた移住先候補企業の一部がこちら。どの企業も個性派揃いです。

石川:参加企業のリストをみると、「突っ張り棒の業界トップシェア」や「わずか5.5kmのローカル鉄道」、他にも「ホラー×テクノロジーの株式会社 闇」などなど・・・めちゃくちゃ個性的ですね。いったいどんなお題が出ているのでしょうか。

「DRAW A LINE」

平安伸銅工業とクリエイティブユニットTENTとのコラボレーションブランド「DRAW A LINE」

塩山:例えば、突っ張り棒の平安伸銅工業さんからのお題は「突っ張り棒に価値を追加するアイディア」。最近代替わりして若返った経営陣と、インテリアとしての突っ張り棒の新たな可能性を追求する仲間を募集しています。

 

石川:突っ張り棒とは思えないくらいオシャレな写真がたくさん・・。ローカル鉄道の求人も目を引きますが、水間鉄道さんからはどんなお題が出ているのでしょうか。

 

塩山:水間鉄道は、大阪府南部の貝塚駅から水間観音駅までを結ぶローカル鉄道です。5.5キロだけなので、始点から終点まで乗っても15分しかかかりません。一時は存続が危ぶまれたものの、駅中でのマルシェやICカードの導入など、様々な手を打って乗客数を回復させたことで知られています。

お題も魅力的で、ローカル鉄道のクリエイティブ・ディレクターとして「貝塚駅で途中下車してもらえるようなアイディア」を考えるというもの。鉄道好きだけでなく、まちづくりに興味がある人にオススメです。

水間鉄道

地元住民の通勤・通学の足として親しまれている水間鉄道。なんと開業は大正14年。

石川:それぞれのお題が大喜利みたいですね。参加者からの回答を読むのも面白そうです。

 

塩山:参加に必要なのは400字のアイディアと自己PRだけなので、気軽に応募してもらいたいと思っています。「これおもろいじゃん!」となれば、実際に大阪に足を運んで仕事体験をしながらプランをブラッシュアップしていきます。もしそのまま採用ということになれば、担当コーディネータが移住までサポートさせていただくというプログラムになっています。

 

石川:大阪らしいノリの良さを感じます。ところで塩山さんは普段から転職者との関わりが多いと思うのですが、活躍されている方ってどんな方なのでしょうか。

 

塩山:地場の中小企業で活躍している移住者はたくさんいますよ。例えば、今回お題を出している企業でもある木村石鹸さんは、東京からやってきた転職者が大活躍している会社です。 >>老舗石鹸メーカーの「WEBデザイナー募集」にやってきたのは、外資系企業で洗剤のマーケティングに取り組んでいた若手女性だった。彼女の活躍については後編で。 大阪への移住、いいかも。そう思った方はぜひ説明会へ。東京・銀座で三日間開催しています。

  • 2016年9月7日(水)19:30〜21:00
  • 2016年9月8日(木)19:30〜21:00
  • 2016年9月10日(土)14:00〜15:30

ボケない大阪移住プロジェクト・プログラム説明会(東京開催)

この記事を書いたユーザー
石川 孔明

石川 孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。

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