【目次】
Big Society Capital (BSC) の役割
休眠預金とは?
イギリスの休眠預金の管理と払い戻しのスキーム
預金を寝かしておく日本、社会に投資し運用するイギリス
Big Society Capital (BSC) の役割
2012年、イギリスでは内閣府(Cabinet office) が中心となり、世界で初めてソーシャルセクターをサポートするためのファイナンス組織であるBig Society Capital (BSC) が創設されました。
BSCのミッションは、「社会的組織がもたらす社会的成果を最大化するため、持続可能な社会的投資市場を形成すること」にあります。ここでいう社会的組織とは、Non-profit (NPO) や社会福祉団体、社会的企業と呼ばれる組織(日本ではまだ定着していないCIC: Community Interest Companyという株式会社とnon-profitのハイブリッドのような法人形態など) であり、彼らの事業の社会的成果を最大化してより良い社会を目指すファイナンスのエコシステムとなっているのです。
BSCの事業内容は、主に(社会的金融) 中間支援団体への投融資、投資対効果の指標を取り入れることで、ソーシャルファイナンスのホールセラーとしての役割を担っています。
Non-profit (NPO) や社会福祉団体、社会的企業と呼ばれる組織は、基本的には事業収入や会費、寄付で経営を成り立たせることが必要ですが、政府ではない独立した組織(財団など) がファンドとなることで、政府や自治体の単年度予算(補助金など)に左右されないことや、特にスタートアップ時や事業をスケールさせる時期にフレキシブルな資金調達を可能とする重要な選択肢となります。
そのBSCの資金源は、使われなくなった口座や持ち主が分からない(長期間にわたり利用されていない) 口座である「休眠預金」とイギリスの4つのメガバンク(Barclays, HSBC, Lloyds Banking Group and RBS) からの投資資金です。
さらにイギリスは、前回記事でも取り上げたソーシャルインパクトボンド(SIB) の導入を積極的に行っており、国がSIBを運用するためのファンドを創設しています。そのSIBファンドにも休眠預金が活用されています。
休眠預金とは?
休眠預金とは、長期間にわたって、預金の引き出しや預け入れなどの取引がされていない銀行口座にある預金です。メガバンクなどの銀行では10年、ゆうちょ銀行では5年以上経った口座のうち、預金者と連絡がつかないものが休眠口座となります。
例えば、預金者が預金を残したまま亡くなった場合、昔バイト用に作った口座で転居のため銀行側から連絡ができない場合などが考えられます。これらは毎年銀行の利益として計上されていて、日本では毎年800億円以上が休眠預金となっています。
休眠口座白書http://www.slideshare.net/qkk-project/ss-14941874
イギリスの休眠預金の管理と払い戻しのスキーム
休眠預金を語る上で、日本も含め全世界で共通しているのが「預金者の権利」です。これは銀行法でも保証されている権利で、預金者(もしくはその代理人) が申請すれば、いつでも払い戻しが可能です。
イギリスの場合は、web上に「休眠口座検索システム」があり、名前や住所などで休眠口座の検索ができます。その後、その口座を作った金融機関で手続きをして払い戻しされる流れです。
預金を寝かしておく日本、社会に投資し運用するイギリス
イギリスでは、休眠預金は各金融機関からリクレイムファンドに移管され、英国金融サービス監督機関のガバナンスの元、返金に必要な資金を残して、BSCなどに投資されます (上図)
その他、韓国、アイルランド、米国の一部の州でも休眠預金がNon-profit (チャリティー)や地域社会に投資されているのです。日本でも預金者の権利と利便性を担保したスキームが構築され、休眠預金が社会への投資に活用されることが期待されます。
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