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企業も大学もNPOも様々なプレイヤーで共有できるアジェンダ「SDGs」とは?

2018.05.24 553view 

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皆さんは、SDGs(エス・ディー・ジーズ)を知っていますか?最近、市民活動やビジネスなどさまざまな場面で目にするようになったSDGs。今回は、「そもそもSDGsって、いったいなに?」という基本的なことから企業の実践事例まで、株式会社エンパブリックの広石拓司さんにたくさんの質問に答えていただきました!

このインタビューは、渋谷のコミュニティラジオである渋谷のラジオで毎月1回、昨年度までDRIVE編集部がホストになって放送していた「渋谷若者部」という番組で行いました!アーカイブはこちらからご覧いただけます。

SDGs(持続可能な開発目標)とは?

広石「SDGsとはSustanable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称です。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」 の中核となる、2030年までに達成するべき国際的な目標として、今、世界中で起きている社会問題を、17のゴール・169のターゲットに整理したものです。、SDGsを通して、2030年までに、途上国も先進国も企業もNPOもみんなで世界中の問題を解決しようと言うムーブメントをつくろうとしているのです。

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SDGsの前身として、2000年の国連サミットで採択された2015年を達成目標とした、途上国の教育や貧困の問題人権など8つのテーマを掲げた「ミレニアム開発目標」 がありました。成果もあげましたが、途上国の支援をテーマの中心に置きすぎると先進国や企業にとって他人事になりがちです。でも、途上国の貧困に大きな影響を与えているのは、途上国で生産した非常に安いモノを求める先進国のライフスタイルであることなど、両者の問題は深く関係しています。貧困や環境問題は、困っている現場の途上国を支援するだけでなく、先進国も一丸とならないと解決できないとわかってきました。

また、貧困などは途上国だけの問題でもないとわかってきました。アフリカにも貧困はあるけれど日本にも貧困はある。女性の活躍推進も、途上国に比べて日本は本当に進んでいるのか?という疑問もある。先進国にも途上国と同じような構造的な課題があり、先進国で起きていることとアフリカで起きていることは地続きに共通しているという考えから始まったのがSDGsです。

アフリカでよい雇用を作り出そうとすると、先進国がそうしたことに配慮した倫理的な消費をしないと解決しません。先進国も途上国もみんなで、誰一人取り残されない世界をつくることを考えようとシフトしたことが特徴です。

変化しつつある世界のルールとは?

-SDGsが発表されてからこれまで、世界的にはどのような動きが見られているのでしょうか?

 

広石「国連は当初から、SDGsの運動には積極的に企業を巻き込みたい、SDGsを企業の持つ価値の上昇のために使ってもらいたい、というねらいを持っていました。

その初期の動きとして、ヨーロッパの保険会社や機関投資家が流れをつくった側面があります。機関投資家というと、一般的には短期的に金儲けをする人というイメージがありますが、ヨーロッパにおいては、年金基金などの大きなお金を動かす機関投資家は、中長期的なリターンを求める存在です。つまり、彼らは20年先、30年先まで安心してお金を預けられる先がほしい。今、利益をあげていても、自然破壊をしていたり、労働者が疲弊している会社が30年後も残っているのか? という考え方が投資家や保険会社の間にも広まっていきました。」

-保険会社のような企業がSDGsに取り組むイメージがまだわかないのですが、どのようにSDGsに関わっているのでしょうか?

広石「保険会社の視点としては、自身の会社の存続のためのリスクマネジメントでもあります。ある企業が、途上国で安い労働力を使って製品を作っているとします。でも、そこで洪水が起きたり、貧困から暴動が起きたり、工場がつぶれたとなれば、保険会社は保険料をを払わなければならない。長期的な視野で企業の活動を捉えると、雇用環境や貧困問題にちゃんと向き合っている企業でないと、投資家も保険会社も困るわけです。

たとえば、コカ・コーラは、「ウォーター・ニュートラリティ」という取り組みをしています。飲料会社であるコカ・コーラは水をたくさん使って利益を作り出している会社です。そこで、1年間製品製造のために使う水と同じ量だけ水を自然に還元するめに、森を回復させて水資源を増やすという取り組みを推進しているのです。今、資源があるから使ってもいいという考えではなく、持続可能な環境への投資をしているからこそ、飲料会社としても生き残っていけるという考えで推進しているわけです。」

-SDGsは、企業の利益や存続と別の部分にあるのではなく、企業と世界のつながりを見つめ直すきっかけになるんですね。保険会社や投資家がどこに投資しているか自体が、メディアのような役割を果たすことになりそうです。

広石「それが、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの頭文字をとった新しい投資の考え方、”ESD投資”にもつながっています。企業の長期的な成長のためには、ESD投資で示される3つの観点が必要だという考え方が投資家や保険会社の間で、世界的に急速に広まっています。ですので、SDGsはあくまでも大きな流れの中で出てきたと理解してもらうといいと思います。

20年前と比べて、前提条件となる世界のルールが変わっちゃったんです。昔から、環境にやさしい企業や、NPOを支援している企業に投資しましょうという動きはあったけれど、まだほんの一部でした。意識高い系というか、なかにはそういうところに投資する人もいるよね、という雰囲気だったのが、ここ2-3年で一気に動きました。

Wind Sustainable Wind Farm Energy Green

たとえば、今Appleの株価が上がっています。アメリカの環境保護庁のトップだったLisa Jacksonを雇って100%自然エネルギーで経営すると決め、グローバルな環境対策を推進しているんですね。かつて、iPhoneは分解できないから環境に悪いと言われていましたが、今は資源として有効活用できるように自社で完全分解ロボットを持っています。そんな取り組みが評価されていることが、株価の上がっている一つの理由と言われています。」

-ここ数年で急速に変わったというのは、具体的にどういった状況の変化なのでしょうか?

広石「グローバリゼーションは社会や文化、政治や経済など様々な文脈で広がっていますが、お金を儲けたり、工場を移転をしたりといった、経済の動きや変化のほうが速いです。経済のグローバリゼーションが進むと、それに対する反発の動きも起きます。たとえばローカルフードに注目する動きが起こる。そして、今度はローカルフードが大切だという動きがインターネットに乗りグローバル化していく。すると先行していた経済のグローバル化に続いて、社会のグローバル化が進んでいく。そういったかたちで変化が加速しているんです。」

ーコカコーラやAppleのように、企業の持つ課題や成長のために必要なことを、SDGsと結びつけて考えるためにはどんな考え方が必要なのでしょう。すでにSDGsに取り組んでいる日本企業はありますか?

広石「たとえば味の素は、日本の本社でずっとやってきた社員向けに取り組む女性活用支援と、ガーナでの栄養改善プロジェクトにおける女性への教育や販売員活動の促進は別のプロジェクトとして考えていました。でも、SDGsを通して考えれば、ダイバーシティやジェンダーというアジェンダではつながっていることに気づいたんですね。

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そうすると、ガーナで女性のエンパワーメントに取り組んでいるが、日本の社員たちのエンパワーメントもしっかりとできているのかな?ということも考えられるし、日本での取り組みがガーナの活動にも活かせるようにもなります。グローバルで取り組んでいること・CSRで取り組んでいること・ビジネスとしてやっていることを、ダイバーシティやジェンダーという枠組みで括ることで、より広がりのある活動になるのではないか、という流れに変化しているのです。SDGsと企業の連携は、まさにここがおもしろいところだと思います。」

求められるのは、主体的にこれからの社会を描いていく企業

-そうしたことに企業が気づくかどうかが、企業の今後を左右するような気がします。SDGsをうまく使えている企業の特徴はなんでしょうか?

広石「状況に対して、受け身にならない、ということ。”流行ってるからSDGsに対応しなきゃ”と思う時点で実は負けています。SDGsを、自社のチャンスとしてどう捉えるかです。

もう一つは、社会に対するコミュニケーション力やプレゼンテーション力も大切です。たとえば日本電産は、利益が落ちた年に、”今まで会社の利益はスマートフォンに頼っていたが、これからは電気自動車などのマーケットにシフトする時期なので、今は赤字で仕方ないと説明したら、逆に株価が上がりました。短期的には利益を出せていなくても、長期的な視点をもって、”今は転換期なので、こういうシフトをします”と社会に対してコミュニケーションできる会社のほうが評価されるということです。今の市場は、変化の激しい中で中長期的に会社がどうなるのか、という説得力のあるメッセージを聞きたがっています。今は赤字でも、乗り越えれば未来があると言う企業、受け身ではなく主体的にこれからの社会に向き合っていく姿勢と、それを株主や社員とコミュニケーションしていく力が求められています。

-味の素などの他に、日本でSDGsを使いこなしている企業の例はありますか?

広石「たとえば、伊藤園なども積極的にSDGsを活用している企業です。自分たちの事業をグローバルに認識してもらうためには、ただお茶を売るだけでは社会とのコミュニケーションができないので、社会課題解決型企業としていろいろな取り組みを考えています。その一つとして、高齢化が進み、耕作放棄地の増える茶葉の産地と一緒に地域活性化の計画を作ったり若者の育成をしたりと、地域の課題解決をサポートしています。産地となる地域が盛り上がり続ければ、自分たちの茶葉もサスティナブルに得られます。単にCSRとしての取り組みではなく、企業として社会や地域の問題にコミットしている事例ですね。」

SDGsから生まれるコミュニケーション

-大企業だけでなく、もっと小さな規模のNPOなどの非営利団体では、SDGsをどう使っていけばいいのでしょうか。

広石「SDGsは、先進国と途上国、企業も大学もNPOも様々なプレイヤーで共有できるアジェンダです。女性支援をしているNPOが、企業に対して”うちの村の女性のために”と言っても企業は「どうして自分達がその村のことをしなきゃいけないのか」と考え、支援しにくいですが、”SDGsのジェンダー平等実現のため、まずはローカルで取り組んでいます。取り組んでいる問題は一緒です。”とプレゼンテーションすることができるわけです。」

-SDGsが、NPOなどの活動を企業と一緒に広げるためのコミュニケーションのツールになるということですね。

広石「企業はビジネス。NPOは環境や社会的メリット。というように、存在目的が異なるように思われがちだった両者は、これまでは連携が難しい場合もありました。連携のための目標・ゴールの共有が課題でした。でも、森や海の資源を守ることが、ビジネス側にとっても、環境・社会メリットにとっても重要であることが、SDGsを通して見えてきた。そうすると、”この問題は会社の中長期的な成長のためにも、環境や地域社会にも必要なことなので、一緒に取り組みましょう!”というコミュニケーションができるようになります。企業も社会起業家もNPOも同じ舞台に乗り、それぞれの特徴と強みがあるという関係をつくることができます。」

-広石さんは普段社会起業家支援のお仕事をされていますが、社会起業家にとってのSDGsの使い方についてはいかがでしょうか?

広石「僕の社会起業家支援の活動テーマはコミュニケーションです。地域やソーシャルをテーマに起業するときは、周りとの関係づくりがすごく重要です。たとえば、商店街をよくしたいとビジネスプランをもっていっても、町のおっちゃんたちが、”自分t達も頑張ってきたのに、新参者がよくしたいってなんやねん!”という感じになることもあります。そういった場面でコミュニケーションをしたり関係づくりができたりする人が成功するんだということに気づき、社会起業に役立つワークショップなどコミュニケーションの手法を広げてきました。SDGsは、そうしたコミュニケーションのきっかけになるんですね。」

-なるほど!

広石「自分が“これをしたい”と言うだけだと、相手は乗ってきてくれない。”こういうことが大切だと思いませんか”と問いかけると、相手は協力しやすくなる。”こういう問題に対して、あなたと一緒にどんなことができますか”と問いかけると、さらに相手が乗りやすくなる。相手を説得するんじゃなくて、問いかけをしていくと、実はもっと協力できたり、合意できたりする。

そういう意味で、SDGsは一つの問いかけなんです。「SDGsを実現しなくちゃいけないよ」という世界からの命令がきているのではなく、”誰一人取り残されない世界を実現するために、あなたに何ができると思いますか?”という問いかけが来ている、そう考えたらいいと思います。その問いかけに対して、それぞれの組織や団体、そして個人が、何を返すのかを考えて取り組んでいくことが、今の時代だと思っています。」

株式会社エンパブリック代表取締役/広石 拓司

東京大学大学院薬学系修士課程修了。シンクタンク、NPO法人ETIC.を経て、2008年株式会社エンパブリックを創業。「思いのある誰もが動き出せ、新しい仕事を生み出せる社会」を目指し、地域・組織の人たちが知恵と力を持ち寄る場づくりを活かして、社会課題解決型の事業開発や起業に役立つツール、プログラムを提供している。近著に「ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12のステップ」。慶應義塾大学総合政策学部、立教大学大学院などの非常勤講師も務める。http://empublic.jp

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NPO法人ETIC.のDRIVE事務局です。ワクワクドキドキする記事を皆さんにお届け出来るよう、日々駆けずり回っています。

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