日本だけでなく、世界を舞台に働いていきたい。そんな若者にとってヤング・グローバル・リーダーズから得る学びは多いはず。今回は、先日来日していたヤング・グローバル・リーダーズのお二人から、特別に日本の若者への言葉をいただきました。全3部作でお届けする1本目は、「世界的な視点で見る日本の若者像」についてです。
2030年のありたい世界を実現する「ヤング・グローバル・リーダーズ」
まずは、「ヤング・グローバル・リーダーズ」についてのおさらいから。専門性やセクターを越えて、世界中から40歳以下の若手リーダーが集うコミュニティがヤング・グローバル・リーダーズです。彼らは国境を越え、2030年に世界がどのような姿であってほしいのかビジョンを描き、その実現へ向けて動き続ける、世界中の若者を牽引する存在です。
Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏、日本からはMr.Childrenの桜井和寿氏も!
過去には、Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏、ウォルト・ディズニー・カンパニー取締のシェリル・サンドバーグ氏、元・イギリス首相のデーヴィッド・キャメロン氏、俳優のレオナルド・ディカプリオ氏、その他ノルウェー皇太子やセネガル国務大臣、香港の歌手の方やスイスの社説漫画家などが表彰されており、日本からは楽天株式会社・代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏、株式会社マザーハウスCEOの山口絵理子氏、元サッカー日本代表・Take Action Foundation会長の中田英寿氏、歌手の桜井和寿氏などが表彰されています。関わる人々の多様さを感じとることができます。
世界規模で、ビジネス・政治・アカデミアが交わる「世界経済フォーラム」
2005年にこのコミュニティを生み出したのは、1971年にスイスの経済学者・クラウス・シュワブ氏によって創設された、ジュネーブに本部を置く非営利財団「世界経済フォーラム」です。
いずれの利害関係にも関与せず、主要国際機関と中立的な立場で連携し活動している「世界経済フォーラム」は、パブリック・プライベート両セクターの協力を通じて、世界情勢の改善に取り組む国際機関です。ビジネス界から政界、学界まで、多様な社会のリーダーと共に、世界・地域・産業のアジェンダを創り出しています。
7歳で両親をエイズで亡くしたウガンダ出身の社会起業家、学術研究と政策を繋げるためにグローバルに活躍する教授から学ぶ
今回、来日のタイミングでお話をうかがったのは、ヤング・グローバル・リーダーズのメンバーであるお二人です。 Rides for Lives 創業者兼CEOのChristopher Ategeka氏
The Good Lobby創業者のAlberto Alemanno氏
Christopher Ategeka氏は、7歳で両親をエイズで亡くしてから5人兄弟の長男として兄弟を育て上げるという、大変な逆境を乗り越えた社会起業家です。機会に恵まれない環境に生まれ、自らの努力と周囲の協力で現在の姿を作り上げた彼の言葉からは、背中を押してもらうような力強いヒントをもらえるかもしれません。
Alberto Alemanno氏は、イタリアで生まれながら22歳で国を出て、現在では4か国語を話されます。多様な文化への造詣があり、EUをはじめとした国の仕組みへの深い理解から紡ぎ出される知見は必読です!
“パラドックス”を抱えてませんか?
──まず、日本の若者への印象についてうかがってみると…。
Christopher Ategeka氏(以下、Ategeka) とてもエネルギッシュで、これからどのようなことを彼らが創造していくのかを見届けるのがすごく楽しみです。それに尽きますね。
Alberto Alemanno氏(以下、Alemanno) 私は少しパラドックスのようなものを感じました。今の日本の若者たちは、世界でもトップの先進国に住んでいて、平均寿命も長く、彼らの祖先よりも裕福で、安全な環境の中で生活しています。しかし、どこか不安を抱いているという印象を受けました。
──なんと、それはどういうことでしょう!?
Alemanno 日本は栄えていて、多くの機会を若者に提供しています。若者は、多くの機会に恵まれているわけですが、なんとなく自信がないようにも見えます。現代社会において、自分たちがどのような立ち位置をとり、どのように振舞えばよいかを把握しきれていないのではないでしょうか。自分たちの感じている無力感や停滞感をどのように克服していくかも把握しきれていません。
同時に、現実社会と、その現実をどのように捉えられているかということにも、一抹の不安を抱えているようです。完全なるパラドックスの世界です。学業や就職、語学学習、旅といった、多くの機会に恵まれているにもかかわらず、そういった機会に取り組もうとしていないのです。自分の殻に閉じこもり、外の世界から自分を隔離してしまっているように見えます。それと同時に、変化しようとする姿勢やチャレンジしようとする気概も同じように感じることができました。
イノベーションの鍵は、心を開いたコミュニケーション
──Ategeka氏は、特に日本女性の姿に感じることがあったようです。
Ategeka 女性があのような場所で発言しない、物静かなのは文化的な背景があるからなのか、少し疑問に思いました。もしそういったものがあるとするなら、進化や発展といったものが抑止されてしまいますよね。というのも、社会事業を立ち上げるのであれば、相手に自分の思いや考えを伝えていかなければいけません。それにより相手も自分のことをサポートしてくれるようになり、お互いに成長していけるわけです。もしシャイで、自分の考えなどを共有しなければ、自分を理解してくれるはずもありません。
Alemanno 特にこのことは、社会起業の分野において当てはまりますね。社会起業の分野においては、さまざまな利害関係者との関係性やいろんなコミュニティとのつながりを形成していかなければいけません。特定の団体や組織の人とだけの関係性というのは、あり得ませんから。
もし自分自身がオープンマインドではなく、自分の考えなどを共有することが苦手であれば、そういった関係性を築くのがより難しくなってしまうのです。イノベーションが起きにくくなってしまう要因のひとつでもあります。イノベーションの鍵は、自分の殻を破り、周囲の人とアイデアや情報をシェアすること、そして、相手に自分の考えを伝えるということの感覚やセンス、義務といったものを伝えていくことなのです。
Ategeka その良い例が私たちだと思っています。私はウガンダ出身ですが、もし私がシャイであったなら、今日本には来れていないんです。相手に自分の感情や考えを表現することは大切なことです。
日本の内なる多様性を理解すること
──そうは言っても、そういった力はどのようにして育んでいけるのでしょうか? 教育も関係していそうですが。
Alemanno 教育という部分に関しては同感です。しかし、どのような教育が必要なのかということです。旧来の教育では不十分ということは明らかです。旧来の教育というのは、私が話してあなたが聞くといった、一方的な類いのものですね。
体験や経験による学習というものが大切です。多様性の環境に自身をさらけ出していく機会を提供すること。しかし、今日の日本において、多様性のなかに身を置くことができないのは、日本の社会そのものが多様性に富んだ社会であると言えないからです。それを私は「隠れた多様性」と呼んでいます。
──日本では、日本は単一民族であるという見方が話題になりやすく、多様性としての見方が話題に上がることは少ないように感じます…。
Alemanno 国内をみても、異なった伝統を持っているにもかかわらず、それらを同質であるというものの裏側に隠してしまっているわけです。みんなが同じであるということなどはあり得ません。日本人も多様性に富んだ民族なのです。日本人として、自分たちの多様性にもっと目を向けて、自分たちの国を理解し、お互いの違いを尊重するべきです。自分たちの内なる多様性を理解してはじめて、海外からのゲストを迎えることが可能となり、逆に国外に出て海外の人と交流することができるようになるのです。そうして、経験を通した学習のなかで、多くの人に出会い関わり合うわけです。
──経験を通した、ですか。
Alemanno これは、単に語学を一人で習得しているのとはわけが違います。多様性の中に身を置くということは、異なる視点を学ぶことであり、外の世界を見て、また日本に戻って来たときに、それまでとは違う視点で物事を見ることができるようになるわけです。5カ国を舞台に仕事をしてきた私の経験上、ひとつの物事をフレッシュな視点で多角的にみることができるようになったのも、そういった理由があります。
とにかく実践あるのみ!
──Ategekaさんからも、アドバイスをいただけませんか?
Ategeka 実用的なレベルでの話をすると、シンプルにプレゼンの練習をしたり、発言するための自信を付けさせることが大切です。自分の考えをしっかりと理解し、どのようにそれをプレゼンするかを理解していれば、自然と自信はついてきますし、さらに実践を重ねていくことが可能となります。
しかし、もし何がいいたいかが不明で、シャイであれば、それも難しいわけです。プレゼンの練習をすることや、話したいことを明確にすること、集団の前に立って、大衆にむかって話しをすることを鍛えていかなければいけません。実践あるのみです。クラス単位であろうが、とにかく人前で自分の考えなどをシェアするトレーニングを積むことです。
──プレゼンは、日本では最近こそ機会が増えてきましたが、まだまだ苦手な人が多い印象です…。練習あるのみですね!
Alemanno 少し付け足すと、私はイタリア人で妻はスペイン人です。ルクセンブルグに住んで長いわけですが、毎日4カ国語を駆使してコミュニケーションをとっています。なので非常に多様性に富んでいるわけです。最近、子どもをアメリカンスクールに入学させることを決めました。それは、彼らが掲げる教育要項のひとつに、優秀なパブリックスピーカーに育てあげるというものがあります。これはどういうことかというと、本人に自信をつけさせるためのプロセスであり、自分を理解することであり、社会における自分の立ち位置を考えることにつながります。
──そうなのですね!アメリカンスクールでは、実際にどんなことをされるのでしょう?
Alemanno 5歳になる娘は、初めてのプレゼンは3歳のときでした。show and tellというゲームでした。毎週、みんなの前に立ち、おもちゃを手にもち、「これがわたしのおもちゃです」というわけです。たったの10文字です。3歳でまともに話せるわけではないんですが、その一文を一生懸命話すわけです。それをクラスのみんなが拍手喝采でサポートする。その経験をもとに、次はもっと上手く話そうと準備をするわけです。彼女は、実践を通して学んでいるわけです。
また、「10,000時間ルール」というものがあります。どんなことでもいいですが、時間をかけて習得していくことが大切です。即興でやろうと思ってもうまくいくはずがありません。時間をかけて、経験を通して学んでいくことが大切です。若いうちからこのようなトレーニングの機会を子どもたちに持たせることが大切です。歳を重ねれば、習得は難しくなります。
──素敵な機会、うらやましいです。でも、そのような機会に恵まれずに大人になったら、もう逆転は難しいのでしょうか…?
Alemanno 私自身も22歳まではイタリア語以外の言語は話せませんでした。22歳で国を出て目覚めたわけです。それからスペイン語、フランス語、英語を習得してきました。自分を人前にさらけ出し、実践を重ね、否が応でも話す環境に身を置きました。体験を通して学習するしかありませんでした。とにかく、実践、実践、実践あるのみです。
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>>次回、「世界経済フォーラム選出のリーダー・YGLが語る、世界の10年後(2)」へ続きます。
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