地域資源を活かしたビジネスを学び、実践する機会を提供する「ローカルベンチャーラボ」では、様々な分野のローカルベンチャーの担い手を東京に招き、今、地域にどんなビジネスチャンスがあるのか、どんな人材を必要としているのかなど、リアルな情報を聞くことができる連続トークイベントを5回にわたって開催してきました。
1月25日に開催された第5回のテーマは「パブリックベンチャー」。パブリックベンチャーは、1社の利益の追求ではなく、民間の立場から公益の担い手となる存在。地域商社や観光DMO (Destination Management Organization)などのように、地域に面的な効果を生み出しています。行政では平等性の縛りのもとにできないことを民間の立場で担うこのパブリックベンチャーが、今注目を集めているのです。
いまなぜパブリックベンチャーというコンセプトが重要視されるのか、その可能性や仕事の内容はどんなものなのか……。今回は、「民間の立場から公益を担う、パブリックベンチャーのキャリア」から、ポイントをピックアップしてご紹介します。
個人の“楽しさ”が公益につながる
パブリックベンチャーというと、どうしても「公」のことを第一に考え、地域のために行動している、という固定観念を持ってしまいがち。しかし、宮城県石巻市を拠点に住まいや働き方といった切り口から新しいライフスタイル発信する「巻組」代表の渡邊享子さんは、次のように語ります。
「地域にいるひとりひとりの“私利私欲”が連鎖反応を起こして、歯車のように噛み合ってまわることで、幸せが外に発信されて、その結果地域に人が集まってくる。人が集まれば、地域にとってメリットがありますよね。だから、“私利私欲”でも公益を生むパブリックベンチャーになるんです」
徳島県上勝町で、地域の高齢者が収穫した葉っぱや花を料理の“つま”として出荷する「葉っぱビジネス」に取り組み、パブリックベンチャーの代表事例とも言える株式会社いろどりの代表取締役の横石知二さんも、「地域貢献を目的としているわけではない」と語ります。
「おばあちゃんが楽しく仕事をすれば、病気にもなりにくくなるし、気持ちも明るくなって家族との関係も良くなる。その結果地域の医療費が減るなど、地域にとっても良いことがあります。つまり、まずはおばあちゃんが楽しく仕事をしてくれるのを大事にすることが、結果として地域貢献になるんです」
2人の話から、意外にも「個人の“楽しさ”が公益につながる」ということが見えてきます。
未来の希望としてのパブリックベンチャー
岡山県西粟倉村役場の井上大輔さんは、近年生まれている西粟倉のパブリックベンチャーが、地域に希望をもたらしていると言います。
「たとえば、主に子ども向けの帽子の販売を行う帽子屋さん『帽子屋 UKIYO』ができました。帽子屋さんがパブリックベンチャーなのか、と思うかもしれませんが、地域の子どもたちは素敵な帽子に目を輝かせている。これも、地域にとっていいことだと思うんです。帽子屋 UKIYOのようなベンチャーが次々に生まれる流れがあるので、来年はどうなっているのかということを考えるとワクワクする。それは、未来に希望があるといい換えられると思います」
岩手県釜石市で活動する株式会社パソナ東北創生代表取締役の戸塚 絵梨子さんは、パブリックベンチャーの存在が地域の未来への希望となっていると語ります。
「かつて、まちに存在していた鉱山が閉山したとき、パブリックベンチャーが多数誕生しました。そんなパブリックベンチャーたちが、困難な状況にあった地域の、未来への希望だったんです。ひとりひとりが20年後、30年後の未来をどうあるべきか、何をするべきかを考えて、活動を起こしていく。その結果としてのパブリックベンチャーが、今また釜石に生まれつつあります」
パブリックベンチャーに重要な“楽しさ”
「公益を担う」と聞くと、とっつきにくそうなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。しかし今回のイベントを通してゲストのみなさんから語られたのは、パブリックベンチャーには“楽しさ“が重要であり、その”楽しさ“が連鎖して生まれた取り組みが”未来への希望“となるということ。そう考えると、パブリックベンチャーのイメージがもっとポジティブなものに変わってきそうです。
今はまだあまり馴染みがないかもしれませんが、地域への関心の高まりとともに今後さらに注目度が高まると思われる「パブリックベンチャー」に、ぜひ注目してみてください。
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