経営コンサルタントしてのスキル・専門性を活かし、認定NPO法人かものはしプロジェクトをプロボノとして支援されている齋藤直毅さんにお話を伺いました。かものはしプロジェクトは、子どもが売られる問題を解決するために活動しています。
500名を超えるプロボノ・ボランティアを率いる
小川:齋藤さんのプロボノについてお聞きしていきたいと思います。そもそも、かものはしプロジェクトのプロボノとして活動を開始したきっかけは何だったのでしょう?
齋藤:元々プロボノをしていた会社の先輩に誘われたのがきっかけです。当初は、かものはしプロジェクトがどのような活動をしているか全く知りませんでした。先輩に誘われたので断れなかったというのが本音です。ただ、実際に活動する中で、社会問題の解決に真摯に取り組んでいるスタッフや他のプロボノと出会い、彼らの生き方に共感したので、少しでもそのサポートができればと思いプロボノを続けています。
小川:なるほど。では、齋藤さんがプロボノをしているかものはしプロジェクトの概要についてお話頂けますか?
齋藤:かものはしプロジェクトは、子どもが売られる問題を解決するために活動しているNPOです。2002年の設立当初からカンボジアを対象に子どもが売られる問題の解決に取り組んでおり、2012年からはインドにも活動を拡大しています。
子どもが売られる問題の発生には、需要(子どもを買いたい人がいる)と供給(子どもが貧困などから自身の体を売らなければいけない境遇となっている)が成り立っているという要因があります。
ですから、かものはしプロジェクトでは、需要をなくすために「警察支援(法執行強化)」を、供給を減らすためにカンボジアで「コミュニティファクトリー(い草商品の工房)経営」「孤児院支援」を実施しています。また、これらの活動に必要な資金の調達(ファンドレイジング)を日本で実施しています。
小川:かものはしプロジェクトには、多くのプロボノ、ボランティアが参加していると聞いています。
齋藤:はい、「かもカフェ!」という組織があり、現在500人を超えるプロボノ、ボランティアが参加しています。「かもカフェ!」は、「国際協力・ボランティアについて気軽な話から真剣な議論までできるカフェのような空間」というキャッチフレーズの下、事務作業などのボランティアと自身のスキルや経験を生かしたプロボノの双方を展開しています。
「かもカフェ!」は、主にかものはしプロジェクト本体からの依頼を受けてから、個々のプロジェクトを結成し、そのプロジェクトに興味のある方やスキルセットがマッチする方が参画して活動しています。
小川:500人を超えているとは凄いですね。どういった方が集まっているのですか?
齋藤:男女比率でいうと35:65で女性が多く、年齢でいうと20代と30代が約70%を占めています。皆さん、社会貢献意識が高く、社会のために何か役に立ちたいと思っています。
写真:かものはしプロジェクトのプロボノ・ボランティアメンバーの集合写真
小川:齋藤さんの具体的なプロボノの活動についてお聞きしたいと思います。
齋藤:これまで大きく3つの活動をしてきました。最初は、イベントなどの企画・運営をして資金を調達するファンドレイジングに携わりました。
次に、自身のスキルや経験を活かしてかものはしプロジェクトのサポートをしたいと考え、事業収入の核となっている個人会員の寄付を拡大するための戦略立案を行い、講演会のターゲットやプロセスの改善を実施しました。
その後、本業のスキルや経験を活かして社会問題を解決するプロボノの面白さや可能性に着目し、「かもカフェ!」の代表として500名を超えるプロボノ、ボランティアのマネジメントに従事しています。
小川:ご自身のスキルや経験を活かしてプロボノをするだけでなく、500名を超えるプロボノ、ボランティアの方を率いてらっしゃるのですね。さぞかしお忙しいと思うのですが、プロボノにどのぐらいの時間を割いていますか?
齋藤:時期によって変動はありますが、平均すると1日1時間程度です。私自身は、本業の活動を優先しつつ、空き時間でプロボノをすることが、生活のバランスを崩さず継続的に活動できる(=プロボノとしてのインパクトを最大化できる)と考えているため、プロボノに過剰に負荷をかけないことを意識しています。
経営コンサルタントのスキル、経験を活かして
小川:なるほど。プロボノに過剰に負荷をかけないことは大事ですよね、本業もあるわけですから。あらためて齋藤さんの本業についてお伺いしたいです。本業は何をなさっているのですか?
齋藤:本業は、アビームコンサルティングで経営コンサルタントをしています。主に新規事業立ち上げやマーケティング戦略策定などのプロジェクトに関わってきました。
コンサルティングスキル(ロジカルシンキング・インタビュー・ファシリテーション・ドキュメンテーション・プレゼンテーション)やプロジェクトマネジメントといった、コンサルタントとしての基本的なスキルなどを有しています。これらのスキルを活かして、先ほどお話した会員獲得の戦略策定や組織のマネジメントを行っています。
コンサルタントは「企業の問題を解決する」ことがミッションなので、「社会の問題を解決する」ことをミッションとするNPOとは、必要とされるスキルに親和性があると考えています。
視野が広がり、本業ではできないような経験も
小川:プロボノをすることで、かものはしプロジェクト、齋藤さんご自身にどういった変化がありましたか?
齋藤:時間的な制約やスキル面の制約により、これまでスタッフだけでは手を出せなかった領域をプロボノが担うことで、問題解決をよりドライブすることができたと思っています。
私自身には大きく2つの変化がありました。 1つ目は、普段ビジネスの世界では触れ合うことがなかった人との出会いにより、自分自身の視野が広がったことです。2つ目は、企業では担うことのない立場を経験できたことです。
コンサルティングファームでは事業会社と比較して早くから重要なポジションを任されるケースはあるものの、500人を超える組織のトップとしてマネジメントすることは、「かもカフェ!」に関わっていなければ経験できませんでした。
小川:それは非常に貴重な経験ですよね。では、本業とプロボノを両立される上で苦労されていることや工夫されていることはありますか?
齋藤:プロボノのコミットメントが本業の忙しさに左右されてしまう点です。先ほどお話した通り、本業が優先(給料をもらっている以上、それに見合うValueは発揮しなければいけない)なので、この点は仕方ないと割り切りつつも、いつ本業が忙しくなるかをあらかじめ予測した上で、プロボノを計画的に進めていくことが重要だと考えています。
プロボノを経験した率直な感想、今後の目標、メッセージなど
小川:プロボノを経験されて、率直な感想はいかがですか?
齋藤:そうですね。両立が難しいといった悩みもありますが、それを上回るメリット(私の場合は人との出会いや本業でできない立場の経験)が、プロボノにはあると思います。
また、日本ではプロボノの存在がまだ広く認知されていないので、活動をする上でロールモデルやノウハウがないという難しさはあります。 ただ、それは言い換えれば新たなワークスタイルを作り上げているとも言えるので、それだけチャレンジングな取り組みをしているという充実感も感じています。
小川:確かにそうですよね。では、齋藤さんのプロボノとしての今後の目標を教えてください。
齋藤:プロボノとして、かものはしプロジェクトの問題解決をサポートしていくことはもちろんですが、加えてプロボノという活動がより広く認知され、より多くの方がプロボノとして活躍できる社会にしていきたいと考えています。
21世紀になってから日本でクローズアップされてきたNPOや社会問題という言葉ですが、これまで中心となってきたのは、社会起業家という言葉に代表されるように、これらの活動に専業で取り組む一部の方だったと考えています。
ただし、これからは「組織で働くビジネスパーソン」が社会問題を解決する主役になるのではないかと感じています。 この「組織で働くビジネスパーソン」は、本業もあることから、個々人では十分に成果を出し切れないかもしれませんが、絶対数が多いので、個々人が少しずつ社会貢献に向けて力を出せば、社会問題の解決に大きなインパクトを与えられるのではないかと考えています。 そんな社会を生み出すために、微力ながら貢献できればと思います。
これからの「社会を変える働き方」に求められるもの(齋藤さん作成)
小川:素晴らしいですね。全面的に賛同しますし、応援します。では、最後に読者の方にメッセージをお願い致します。
齋藤:私は、偶然NPOやプロボノといった世界に関わることになりましたが、この世界で貴重な経験を積むことができました。 「プロボノとして成果を出せるだろうか?」「本業とプロボノを両立できるだろうか?」と不安になる方もいるかもしれませんが、まずは小さくてもいいので自分ができる範囲でプロボノを始めてみてもらえればと思います。
一人ではできることは限られていても、それが積み重なれば、社会問題の解決に大きなインパクトを与えることができるはずです。是非、プロボノとしての第一歩を踏み出してもらえればと思います!
小川:齋藤さん、貴重なお話、ありがとうございました。
齋藤:こちらこそ、ありがとうございました。
編集コメント:かものはしプロジェクトでは、社会人/学生ボランティアを募集しています。定期的に説明会やイベントも開催しているそうなので、ぜひこちら(かものはしプロジェクトWEBサイト)をチェックしてみてください。
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