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ウェルビーイングな社会への鍵とは?地域の実例も紹介【第2回 Beyond カンファレンス 2023開催レポート】

2023.08.09 

家

 

多様なゲストスピーカーを招き「持続可能性・SDGs」をテーマに世代を超えて問答する企画、「SDGs問答」。5月26日(金)から27日(土)にかけて開催された「第2回Beyondカンファレンス2023」内でシリーズ34回目となるSDGs問答が開催されました。

 

テーマは「産学公民連携でウェルビーイングを高める」。関西大学社会学部教授の草郷孝好氏、ロート製薬株式会社の戸崎亘氏、京都大学大学院地球環境学堂准教授の浅利美鈴氏が、ウェルビーイングな社会の実現に向けた企業、大学、自治体、市民の連携について語りました。

 

※こちらは、「サステナブル・ブランド・ジャーニー」掲載記事からの転載です。

市民の主体性でウェルビーイングな地域へ

 

セッション

SDGs問答セッションでの、京都大学浅利氏(左)、関西大学草郷氏(真ん中)、ロート製薬戸崎氏(右)

 

草郷氏は、2022年の夏に『ウェルビーイングな社会をつくる──循環型共生社会をめざす実践』という本を出版するなど、ウェルビーイングな社会への変革につながる研究に力を入れています。草郷氏は、これからの社会で目指すべきウェルビーイングモデルを提唱しています。これまでの経済成長モデルは、経済成長を追求し、物質的に豊かな社会を実現することが一番の目標でした。一方、ウェルビーイングモデルは、よりよい生き方につながるウェルビーイングを重視し、持続可能な社会を実現することを目標としています。

 

ウェルビーイングモデルのキーワードは、循環型経済・共生重視・協働・対話・共創で、この実現には、市民の主体性が必要だと言います。草郷氏は「例えば地域づくりのカリスマが来て、こうしよう、と決めたとしてもそれを自分ごと化していかない限り持続しないと思う」と言います。市民一人ひとりが「自分は何者か」「どう生きたいのか」という点を含め、自分なりのビジョンを持ち、色々な人と対話を重ねて協働していくことが、ウェルビーイングな地域の実現に繋がります。

ウェルビーイングな社会を実践する地域の例

 

(1) 水俣市の事例

賞状

画像 : 環境モデル都市│水俣市環境サイト

 

草郷氏からは、ウェルビーイングな地域づくりを実践している自治体の例が紹介されました。例えば、そのうちの一つに水俣市があります。草郷氏が大学の講義で水俣市について聞くと、多くの学生が水俣病を連想するそうです。水俣市は水俣病によって大きなダメージを負いましたが、市民と行政の対話と協働を進めまちの再生に取り組んできました。水俣市で取り組まれている「もやい直し」はコレクティブインパクトの先進モデルではないかと草郷氏は話します。もやい直しとは、元々は港に停めている舟と舟をつないで嵐に備えるように、共同で困難に立ち向かうことを意味します。水俣市においては、1994年に当時の吉井市長が水俣病犠牲者慰霊式典の場で、水俣市に住む立場の違う人同士が水俣の再生に向け協働していくことをもやい直しとして提唱したものです。公害発生当時、社会も疲弊し、まちの人々の間の関係が悪化していたといいます。まちの再生のためには、住民同士の心と心の繋がりを取り戻していくこと、もやい直しが不可欠であると考えられていました。

 

もやい直しの他にも、水俣市では住民の主体性を引き出す仕組みづくりに工夫を凝らしました。例えば、住民によるごみの分別を始め、現在では20種類以上の分別を住民が担っています。生活ごみの削減を検討するために、市内にある16の女性グループで女性連合会を作りました。女性団体同士が意見を出し合い、市役所の職員は会議に参加しても裏方作業に徹し一切口を出さず、最終的には水俣市のスーパーとの間で食品トレイ廃止申し合わせ書を締結するなどの成果に繋がりました。水俣市は2008年に環境モデル都市に選定されています。

 

(2)長久手市の事例

アクションbook

画像 : 市民まちづくり計画 まちを育てるアクションブック│長久手市

 

愛知県の長久手市では少子高齢化する日本では珍しく、ほぼ毎月人口が増えています。2021年の「住みよさランキング」では全国第4位にランクインしています。長久手市では、住民自身がまちの課題に向き合い、知恵を出し合い、協働して共生する地域づくりを目指しています。長久手市は2050年のまちのあるべき姿をビジョンにしています。その中には3つの基本理念があります。(1)つながり:一人ひとりに居場所と役割があるまち、(2)あんしん:助けがなかったら生きていけない人は全力で守る、(3)みどり:ふるさとの風景を子どもたちに、という3つです。

 

顔の見える関係性づくりを広げながら、その関係性をまちづくりに活かすために、小学校の学区ごとに地域共生ステーションを設けました。この地域共生ステーションは、地区内のさまざまな課題に取り組むための地域協働の拠点ですが、特徴はこのステーションをどう活用するかを構想する段階から市民ワークショップを行い計画に反映させていった点です。アクションブックは、まちの中で市民がどんな取り組みをしているかをわかりやすく紹介するもので、「気軽にまちに関わるまちづくりの仲間」を増やしていくことを目指しています。

 

草郷氏は「いずれの都市からも学ぶべきことがたくさんある。これまでは、専門家主導で進めることが多かったが、地域の協働のためには1番最初のアイデア出しから地域の当事者主導で、まちをデザインすることが大事」と話しています。例えば、市民ワークショップを行う際にも、行政は完璧な資料ではなく、余白の多い資料を用意することで、ワークショップで集まってくれた人が自由に想いを出し合えるようにするのが良いそうです。行政が設計した場に市民に参加してもらうのではなく、市民の考えや取り組みに行政が参加することが重要といいます。結果的に、スマートな提案にならなくても、それは自分たちで決めたことなので、納得感もあり、さらにその状況を変えていくための意思も生まれやすいと話しています。

地域づくりと組織づくりに共通する当事者意識

 

ロート製薬では、グループ総合経営ビジョン2030でConnect for Well-beingを掲げています。世界の人々がウェルビーイングを実感できる時間が長くなるように、これまでの事業領域である医薬品やスキンケアに加えてさまざまな事業を繋げ、シナジーを創造していくことを目指しています。それを実現するためには、社内外の仲間同士、組織と組織をしっかり繋げていくことが必要であるとしています。同社の戸崎氏も草郷氏の話を受け、当事者意識を持つことの重要性は、組織づくりでも同様だと言います。同社では、例えばプレゼン資料を作る時も資料の見てくれよりも、自分が主体として熱量を持って語っているかという点を大事にしているそうです。「地域づくりと同様に、会社もみんなで一つのコミュニティ、まちとしてやっていかないとと思っている」と話しています。

 

これからの時代、中核的な考えになると予想されているウェルビーイング。専門家や行政、企業、市民が対等に協働し、市民自らがデザイン、行動するまちづくりが全国で推進され、ウェルビーイングな社会の実現に近づくことが期待されます。

 

【参考】ウェルビーイングな社会をつくる──循環型共生社会をめざす実践(草郷孝好、2022)

 


 

「Beyond Conference 2022 」開催レポートの記事はこちら

>> 社会課題解決のための新規事業、時代の要請に応えるイノベーションには「越境」と「物語」が必要 【 Beyond Conference 2022 開催レポート】

 

 

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