参加者のみなさんの様子
総勢30人の「教育をより良くしたい」という想いを持った参加者が集まりました。
今回、Beyondカンファレンス2024(6月1日開催)で行われたセッション「子どもと大人がごちゃ混ぜで教育をよりよくする新しいサービスを作ろう!」では、世代や職種の垣根を越えた参加者が交流を深めながら、教育をテーマにグループワークを行いました。
盛り上げ役として河野翔一(私立通信制高校教諭)さんと吉川佳佑(株式会社ガイアックス)さんが登壇。お二人を中心にセッションは進行されましたが、あくまで主役は参加者のみなさんです。ファシリテーターとして参加した方々の協力もあり、大盛り上がりだった会場の様子をレポートします。
<登壇者>
河野 翔一(こうの しょういち)さん
私立通信制高校教諭 / Venture Cafe Tokyo アンバサダー / 学校版コミュニティマネジメントスクール開発 / 法政大学イノベーションマネジメント研究科
バングラデシュにて2校の学校を運営。学生時代は空手漬けの日々を送り、空手道で二度の日本一を経験。その後、自身の生徒を日本一に育成。その後、東京都の私立高校で探究学習やアントレ教育の推進を行う。同校の通信制高校の立ち上げに伴い異動。新設した学校全体のブランディングやカリキュラム設計、学校内外を繋げるコラボ授業などを行う。同時並行でアジア一貧困と言われるバングラデシュで2校の学校運営を任され、学校の経営業務も経験。国内・国外で教育とイノベーションをテーマに飛び回り、0→1で何かを作るのが大好き。何かご一緒できるメンバーいつでも募集中
吉川 佳佑(よしかわ けいすけ)さん
株式会社ガイアックス スタートアップスタジオ事業部 マネージャー・起業家教育事業 責任者
金沢大学学校教育学類卒業後、地方の私立高校に赴任。探究学習と起業家育成の推進を行い、取り組みが経産省のプログラムに採択される。その後、N高等学校での勤務とS高等学校の立ち上げを経て、現在は株式会社ガイアックスにて起業家教育事業の責任者として、全国の学校に自社のアントレプレナーシップ教育プログラムを展開する。
<ファシリテーター>
藤田 颯斗さん、金森 琥珀さん、宇野 瑚太郎さん、林 大雅さん、清水 佑太さん、和仁 裕之さん
※記事中敬称略。
ごちゃ混ぜのグループを作ってください!
(左から)和仁さん、河野さん、吉川さん
河野 : こんにちは!河野と申します。普段は学校現場で働いていて、昨日はちょうど体育祭でした。そのせいで喉がやられておりますが、今日はみなさんと一緒に手を動かしながら、教育について考えていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
吉川 : ケッケことガイアックスの吉川です。普段行っている起業支援や投資活動、全国の中高生に向けた起業プログラムで培ったものを使って、今日はみなさんの手助けができればと思います。よろしくお願いします。
では、早速ですがグループ分けをしていきます。①学生、②民間企業やNPOで働く方、③行政や教育現場で働く方、④その他。それぞれが混ざり合う形で、4人一組のグループをつくってください。お願いいたします!
――掛け声と同時に、参加者は指で番号を表しながらグループを組んでいきます。こうして、友達でもなければ、知り合いでもない多様な特性を持った参加者同士によるグループが8個出来上がりました。中学生と企業の社長が同じテーブルに座る光景は、他ではなかなか見ることができないもので、ここから何が生まれるのか非常に楽しみです。
グループ決めの様子
吉川 : 個性豊かなテーブルが出来上がりました。今回、集まっていただいたみなさんには、「共創」をしていただきたいと思っています。共創にはやり方があるのですが、そのセオリーは後ほどご紹介します。
ワークショップにおけるゴールは3つあります。1つは、属性の違う4人が、学校・教育をより良くしたいと思っていることに気付き合うこと。2つ目は各グループから教育をより良くするアイデアが一つずつ見つかっている状態を目指すこと。そして最後に、共創の面白さを体感してもらって、今回のグループの仲間で次に繋がるような機会にできればと思います。
はじめましての方同士だと思うので、まずは簡単なゲームをしてみましょう。「共通点探しゲーム」です。お互いにテンションの上がる共通点を探し、共有してください。コツは質よりも量を目指すこと。利き手が一緒であるとか、どんな些細なことでもいいので、ぜひトライしてみてください。どうぞ!
――やや緊張気味だった各グループも、このゲームから打ち解けていきます。「海外に住んだことがある」「出身地が同じ」「犬を飼っている」などなど。様々な共通点が、参加者同士を繋げます。
付箋に書かれていく参加者の個性
吉川 : このワークショップで大切にしてほしいことを3つ挙げます。1つ目は対等であること。年齢や肩書もバラバラのみなさんですが、ここでは対等です。そして2つ目はバカげた発想をどんどん出すこと。イノベーションは、実はバカげた発想から生まれたりするものです。どんなアイデアでもビビらず発言していきましょう。そして最後は、出てきたアイデアに対してはポジティブなフィードバックを心掛けることです。否定から始めるのではなくて、「いいね」とか「面白い」といったポジティブな言葉を投げかけましょう。では、改めてここから本番です。よろしくお願いします!
グループで共創をしていく
吉川 : 先ほど、共創にはやり方があると言いました。その方法とは、3つの共有をすることです。まずは「技術の共有」。これは各々が持っているノウハウや知識、経験などを指すものです。しかしあまり難しく考えすぎずに、学生なら「毎日、学校に通っている」とかでも大丈夫です。みなさん何かしらの技術を持っているはずなので、それを共有してください!
ワークで使用された模造紙
――参加者は、用意された付箋に自身が持つ技術を書き込み、共有していきます。「英語が話せる」「会社を立ち上げたことがある」「社会科を教えることができる」と様々な技術の共有がなされていきます。そして、互いが持つ技術に驚き合い、それに関するフィードバックをしていきます。
初めは「技術なんて持っていない」と嘆いていた男子学生も、話を聞いていけば「テントを立てることができる」という技術を持っていました。その学生が所属していたグループでは、他にテントを立てられる人がいなかったので、まさしくその技術は彼だけのものです。
吉川 : では、続いて「価値の共有」です。これは互いにどんな価値観を持っているか共有します。例えば「誰の、どんな状況を改善したいのか」「学校教育でどんなことがしたいのか」のように、みなさんがこのセッションに参加した想いなどを共有してください。
――「価値の共有」では参加者の熱い想いが語られました。ある女子学生は「学歴で左右される社会を無くしたい」という想いを付箋に書きました。理由を聞くと「実際に学歴で推し量ることのできる能力って、限度があると思うんです。だから、学歴を無くして、もっと個人に目を向けた教育にしたらいいんじゃないかな」との答え。
その他にも、「教職員の労働時間を減らす」や「生徒が自主的に学びを選択できるようにしたい」など、実際に参加者の方々が日々の生活の中で感じている「価値」が次々と共有されていきます。
吉川 : みなさんの想いが凄くて、驚いています。では、最後に「体験の共有」です。実際に技術と価値観を併せて、アイデアを考えましょう。そして、それを形にするための過程を共有してみてください。本来はメンバーの持っている技術を実際に体験してみたりして、それを元にアイデアを一緒に考えることが「体験の共有」です。今回はそれが難しいと思うので、それぞれが出し合った個性を集結させて、課題解決に向けたアイデアを書き込んでいってください。そして最終的に、自分たちの解決したい課題と、それを解決できるアイデアを発表していただきます。では、始めてください!
ごちゃ混ぜグループだからこそ生まれるアイデア
それぞれの個性が共有され、アイデアが出されます
――各グループはここまで共有した技術と価値を振り返り、そこから課題解決に向けたアイデアを出し合いました。それぞれが違った個性を持っているからこそ、様々なアイデアが生まれました。ここでは一例を紹介します。
個性的なアイデアが発表されました
――上の画像のグループは共通価値として「社会で活躍できる力を伸ばす機会が少ない」ことを挙げました。このグループの持つ技術は「社会性」「起業」「個性」。これらを活用した、課題の解決方法を考えました。
サービスは「個性の共有・交換をする授業・ゲーム・体験会」です。学校でこれらのサービスを展開することで、今以上に個性が重要視される社会を目指せるのではないかとグループは発表します。「個性をビジネスにする」と書かれているように、そのサービスは今まで聞いたこともないような独特なものです。例えば「ダンス×けん玉で表現をする」や「バドミントンを得意な人が髪を染める」といったアイデアは、ごちゃ混ぜのグループだからこそ生まれたアイデアです。グループの発表を聞く参加者からは「どうやって思いついたの?」や「どうなるか見てみたい!」といったポジティブな反応が寄せられました。
子どもと大人が協力して発表します
他のグループからも質問が活発に飛び交いました
――発表に対して、別のグループから疑問が飛んだり、互いにアドバイスを求める合う光景は発表時間を過ぎても続き、参加者同士での議論は尽きませんでした。今回、特に多かったアイデアは学校と社会の間にある隔たりを無くしていくことに重きを置いたものです。社会で働く大人と、学校にいる学生や教員が同じグループ内にいるからこそ、もっとお互いに歩み寄ることで、よりよいサービスが作れるのではないかという考えも出ていました。
吉川 : みなさん、お疲れ様でした。今日のゴールは、素晴らしいアイデアを完成させることではなくて、教育について関心を持つ仲間の存在を知ることや、共創の面白さに気づいてもらうことでした。実際に今日集まったみなさんで、生まれたアイデアを具現化してくれたら嬉しいです。本日はありがとうございました!
吉川さん
取材を終えて
今回のセッションを取材して、仲間は意外と近くにいるのだと感じました。はじめは何の繋がりもないと感じていた子どもと大人が、一緒に共創をしていくなかで様々な共通点を見つけ、セッションが終わる頃には一つの課題解決を目指す仲間になっていました。
教育は社会の根幹を支える部分ですが、参加者のみなさんが示してくれたように課題は山積みです。同セッションのように、子どもと大人、企業と学校のような組み合わせが課題解決に向けて手を取り合うことが、今後はより一層必要になってくるのかもしれません。
取材・文・写真 : 浅野凜太郎
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