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自己実現の可能性を広げるチャンスは、人とのつながりの中にある!? コミュニティデザイナー直伝、人と心地よくつながる方法。―ローカルリーダーズミーティング2024レポート(4)

2024.08.27 

ローカルベンチャー協議会(事務局NPO法人ETIC.〈エティック〉)が主催した「ローカルリーダーズミーティング2024」は、今年で第3回目を迎えました。今回の舞台は、宮崎県日南市(にちなんし)にある油津(あぶらつ)商店街。

「つながるって、前進だ!」を合言葉に掲げ、地域のプレイヤーや行政職員、起業家など全国から約140名が集結し、ローカルと結びつきの深いテーマを専門とする研究者との活発なコミュニケーションが行われました。商店街周辺の店舗やスナック、企業の会議室を会場に、研究者と参加者がざっくばらんに語り合ったセッションの様子をお届けします。

 

本記事では、人と人や、企業と企業をつなげるコミュニティデザイナーとして活動する江花梢さんによるセッション、『ワクワクする方へ』をコンパスに!人とつながることから広がる自己実現の可能性!!」を要約・編集してご紹介します。「人とつながることは、新しいアイデアや視点を得るきっかけとなり、自分の考えを深め、成長させるだけでなく、自己の可能性を広げる貴重な機会になります」との見解を持つ江花さん。ご自身の体験談も交えながら、ご縁の広げ方や人と心地よくつながる方法、コミュニティへの属し方について教えていただきました。

 

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江花 梢(えばな こずえ)さん

コミュニティデザイナー、教育・育児カウンセラー

アメリカの大学と玉川大学にて幼児・小学校教育を学ぶ。日本に帰国後、英語の学童保育にて英語、生活指導、保護者のカウンセリング、スクール運営、カリキュラムづくりなどに携わる。2018年、大手シェアオフィスのコミュニティマネージャーとしてコミュニティづくりをスタート。現在でも同シェアオフィスにて、企業、自治体、学生、団体など企業間、企業内、共通趣味など様々なコミュニティを創造し活性化している。現在、仕事以外でもコミュニティデザイナーとして仕事の垣根を超えたコミュニティ形成、「梢の種まき会」を主催。教育業界での経験や知識を活かし、働くパパママの支援を行うスタートアップにて保護者・教育カウンセリングを担当。

 

幸せに生きるための「自己実現」とは?

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――今回のセッションは、参加者との対話形式で行われました。冒頭で江花さんから参加者に伝えられたミッションは「自分の感覚を大事にしてほしい」ということ。特に違和感は、自分の感覚に異なるものが入ってきたときに感じるもので、それが成長や新しい発見につながるため、その感覚を研ぎ澄ましてほしいと話されました。

 

――江花さんが自己実現について考えるようになったのは、自身が受けたコーチングがきっかけでした。アメリカ人の先生から「幸せに生きるには、自己実現が大切」と言われ、自己実現の意味を調べたところ「自分の可能性を最大限に発揮し、目標や夢を実現すること」と定義されていました。しかし、この定義があまりに漠然としていて具体性に欠けていたため、江花さんは違和感を抱きはじめます。

 

「自分の可能性って何でしょうか? それを最大限に発揮する方法は?描いた目標や夢は途中で変わらないのでしょうか?このような疑問が頭の中に浮かびました。そこで、自己実現に必要な要素を細分化して考えるために調べることにしました。皆さんは、自己実現に必要な要素として何が思い浮かびますか?」

 

参加者1 : 笑顔?

参加者2 : お金!

参加者3 : 行動力!!

参加者4 : 人。ひとりでは何もできないから。

 

「人がいて、笑顔とお金と行動力があれば、自己実現できるでしょうか? 私が調べたところ、自分の強みや弱み、興味、価値観を深く理解することが重要であり、明確な目標設定やその継続、変化に適応するための柔軟性や適応性も必要だということがわかりました。これらの要素がなければ自己実現できないのなら、『私には無理かもしれない』と、コーチングの先生に伝えたことを覚えています」

「自己実現」と「人とのつながり」の共通点

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「自己実現に必要な要素を調べているうちに、人とのつながりが持つ意味と自己実現には多くの共通点があることに気づきました。

 

人とのつながりは『社会的支援の提供』『感情的な安定』『新しい学びと成長』『モチベーションの向上』『共感と理解の深化』『アイデンティティの形成と自己認識』といった意味を持ちます。私は、とくに『アイデンティティの形成と自己認識』が重要であると考えています。なぜなら、他人と比較することで自分の価値観や信念を見出すことができるからです。

 

自己実現に必要な要素と人とのつながりが持つ意味を整理してみると、『成長』『刺激』『自己理解』『人間関係』『創造性』『協力』『安心』などの共通項が見つかりました。これだけ多くの共通項があるのなら、人とつながることが自己実現の第一歩であり、人とのつながりが自己実現の可能性を広げるのではないかと感じました」

 

「実際に、人とのつながりが私の力になり、自己実現の可能性が広がった体験談をご紹介します。私はアメリカの大学を卒業していますが、英語ができるようになったのは、人とのつながりのおかげです。私は年子の4人姉妹で、語学留学や英会話を習わせてもらえる環境ではありませんでした。そこで、アメリカ人のお父さんと日本人のお母さんがいる家庭に6年間居候させてもらったのです。そのおかげで英語を話せるようになり、アメリカの大学で学ぶスキルを身につけられました。

 

最近、友人から誕生日プレゼントで名刺をもらいました。名刺には、私の名前と会社のロゴがあるだけではなく、webサイトまでつくられていたのです。『すごくいい活動をしているから、会社としてやっていって』と手渡され、今その目標に向けて動いているところです。これも『ひとりではできないことでも、誰かが一緒ならできるかもしれない』と思った出来事でした」

コミュニティづくりの課題は、誰ひとり置き去りにしないこと

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――次に参加者も一緒になって考えたのは、普段どのように人とつながる機会をつくっているかという点です。この質問に対して、イベントの開催や空き家を使ったコミュニティスペースの運営、SNSでの情報発信、仕事の中でも会社の仲間やクライアントとつながる機会があるといった回答が出てきました。

 

「自己実現のためには人とのつながりが大事だとお伝えしましたが、そもそも自己開示が苦手な人たちもいます。私は、ここにコミュニティづくりの課題があると思っています。その人たちを無理やり引っ張りだすことが必要な場合もありますが、実は本人たちが自覚していないだけで、コミュニティに属しているケースがあることも、ある経験から学びました。

 

私はコミュニティマネージャーを務めるシェアオフィスで、勝手に『毎月のおすすめ本コーナー』をつくっていました。ある時、『誰に響いているんだろう?』と思い、パッタリやめたのです。すると、社内アンケートに『本のコーナーがなくなったのはなぜですか?』というメッセージが届くようになりました。受け身の人たちが、自分でも意図せず属していたコミュニティがなくなった瞬間に『私のコミュニティがなくなった』と気づいたのです。この出来事から、コミュニティづくりでは押したり引いたりすることが大事だと学びました。出しっぱなしだと、受け取る側は満足しきってしまい、自分が属していることに気づかないのです。

 

もちろん、自ら目的意識を持ってコミュニティに属する人もいますが、無意識に属していることも多いです。受け身の人たちに属性を感じてもらうためには、あえて認識させるようにするのも一つの手段だと感じました」

居心地のいいコミュニティづくりと人と深くつながるコツ

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「居心地のいいご縁は、どのように生まれると思いますか?答えは、目の前の人に全集中することです。その人のことを知るために、興味が向くままに質問し、その人の世界観を鮮明に理解しようとすることです。これまでどのような経験をしてきて、頭の中でどのようなことを考えているかを想像する。このように目の前の人に集中すると、その人はあなたに対して居心地の良さを感じるようになります。

 

次に、居心地のいいコミュニティとは何でしょうか?それは、選択肢と自由度があることです。先ほど事例として挙げたシェアオフィスのおすすめ本もそうですが、勝手にすすめられ、それを楽しむ自由があること。興味があるときもあれば、ないときもある。この自由さに、人は心地よさを感じるのです。ありのままでいいのだと、自分が受け入れられている感覚が得られるからです。今後、コミュニティをつくる際には、ぜひ居心地のよさにも着目してください」

 

――江花さんはセッションの最後に、今日から実践できる「人と深くつながるコツ」を教えてくれました。

 

1 : 目を合わせて、笑顔で挨拶する

しっかり目を合わせて挨拶すると、相手は自分に対して挨拶されたと感じます。

 

2 : 語尾に「○○ですよね?」を使う

相手の意見を求める会話の方法です。例えば「今日は雨が降りそうですね」ではなく「今日は雨が降りますかね?」と問いかけると自然と会話が続くようになります。

 

3 : 下の名前で呼ぶ

普段、多くの人が「○○のお母さん」「○○部長」「○○の娘さん」と呼ばれています。名前で呼ばれるとその人の自己認識が高まり、本音で話してくれるようになり、距離が縮まります。

 

4 : 評価をしない

例えば「私、毎朝走っているんです」と聞いたら「すごいですね」「健康的ですね」と言うのではなく、興味を持って「へぇ~、それで?」と相槌を打ちます。評価をすると、相手はそれ以上話を広げられなくなります。

 

「私はこれまで『人をつなぐ合言葉は、ワクワクする方へ』という言葉を軸に活動してきました。名前がこずえなので、コミュニティの種を蒔いて、それがこずえに育っていってほしいという想いも込めています。今は『コミュニティづくり』『教育・育児』『MISSION VISION VALUEの浸透』に関するセミナーやワークショップ、カウンセリングを専門に行っています。もし私とつながりたいという方がいたら、ぜひ気軽にFacebookから申請してください」

 


 

ローカルリーダーズミーティング2024では、この他にも全国の自治体や中間支援組織の参考になる事例紹介やディスカッションが多くされましたので、気になる方はご覧ください。

>> ローカルリーダーズミーティング

 

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稲山倫子

宮崎県出身。大学卒業後、出版社や印刷会社でタウン情報誌の制作に携わる。2016年からフリーランスの編集者として独立し、紙媒体やweb媒体で執筆。2022年からは県立高校の非常勤講師を務め、情報リテラシーや高校生が地域の課題を解決する「地域創生」のクラスを受け持つ。ここ数年は、日本文化(特に茶道)にハマっている。