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放課後NPOアフタースクールのマネージャー採用から学ぶ3つのこと

2024.12.19 

マネージャーの採用は、ソーシャルセクターの企業・団体の方々から、とてもよく聞かれる採用課題の一つです。自社で育成することも、採用することも難しいのがこのマネージャーポジション。この度、複数拠点を束ねるエリアマネージャーを採用したNPO法人放課後NPOアフタースクールの人事の出羽さんと、マネージャーとして入職された中村浩士さんに、採用成功の鍵を伺いたく、取材しました。

(※記事中敬称略)

 

【目次】

 

現場の責任者の意識改革とスキルの育成に課題

――放課後NPOアフタースクールの組織課題はどんなところにありましたか?

 

出羽 : 経営スキルが必要なポジションに人材がいなかったことです。放課後NPOアフタースクールは、公立と私学のアフタースクールを運営しており、特に私学では経営感覚が求められます。公立は運営資金の一部が税金で賄われますが、私学の場合は受益者負担での運営です。一般的な店舗運営と同じ経営感覚が求められます。

 

アフタースクールを利用してくださる方のニーズにこたえ、継続的に利用してもらえる環境や仕組みを作っていく必要があります。

各アフタースクールの責任者たちは、子ども対応やスタッフマネジメントに関しては経験豊富でスキルが高くプロフェッショナルです。しかしアフタースクールの経営状況を分析し、戦略立案や運営方針を決めることには苦戦していました。

 

 

また、他社との差別化や集客のための打ち手など、売上を上げていくことに意識が向かないこともあり、マインドの面でも変えていく必要がありました。

 

現場の仕事で自然には身についていかないスキルなので、スタッフの意識改革や成長に向き合い、伴走してくれるマネージャーを探していたんです。

 

――それで中村さんを採用されたのですね。中村さんのどんなところが評価ポイントだったのでしょうか?

 

出羽 : まずは高いビジネススキルをもっていると感じた点です。上流の戦略立案から、実際の施策実施に至るまで、事業を行ううえで必要な観点とスキルをお持ちでした。さらにマネージャーとして経験した失敗と成功は、アフタースクールを経営視点で見て改善する際の懸念や目指したいところと重なりました。

 

出会いは10年前に。友人のNPOを手伝ったことがきっかけ

――中村さんのこれまでの経歴を教えてもらえますか?

 

中村 : 新卒で入社した大手教育系企業で18年くらい働いていました。小学生向けの通信教育サービスの編集長や、継続マーケティング活動に従事し、組織全体のマネジメントを担っていました。マネジメントの立場を数年経験したのち、自分の手でコンテンツを生み出したいという気持ちが高まり、書籍編集の企業に転職。さらに縁があって教育系デジタルコンテンツのマーケティングのトップを経て、現在、放課後NPOアフタースクールでエリアマネージャー職に就いています。

 

―― 一貫して『教育』を軸に転職されているのですね。ビジネスセクターで働いていらっしゃる方はNPOに縁がなく、よく分からないが故に、転職を躊躇されるケースも多いです。勇気はいりませんでしたか?

 

中村 : 放課後NPOアフタースクールのことは10年くらい前から知っていました。1社目で働いていた時、友人の立ち上げたNPOを手伝っていたんですね。「もっとNPOについて学びたい」と、とある研修に参加し、そこで放課後NPOアフタースクールを知りました。

 

 

私は仕事をする中で、教科学習よりも、生活や友達とのつながり、知的好奇心など数字的には分かりにくいけれども人生の価値になることに魅力を感じていて。放課後NPOアフタースクールは、「好奇心」や「自己肯定感」などの非認知能力を大切にしていることもあり、共通するものを感じていたんですよね。ずっと気にはなっていたんです。

 

そんな時に、求人媒体で放課後NPOアフタースクールの記事を発見しまして。自分のこれまでの経験が存分に生かせる領域・スキルだと感じたことが決め手となりました。

 

――ボランティアで関わるという選択肢もあったと思うのですが、転職を後押しした理由は何でしょうか?

 

中村 : 副業ができることが後押しになりました。健康に働き続けるために始めたトレーニングに目覚めて、パーソナルトレーナーの資格を取得しました。そちらも本格的に仕事にしていきたいと思っていたんです。

 

キャリアプランとすり合わせながらオファー

――中村さんが最初に応募したポジションは、マネージャーではなく企業協働事業のプロジェクトマネージャーのポジションだったとか。団体側はどのようにして変更のご提案をしたのですか?

 

出羽 : 中村さんのご経験が、どのようにアフタースクールの運営統括を行うエリアマネージャーのポジションで活かせるかお話しました。中村さんは、大手企業とスタートアップの両方の経験があり、多様な背景をもつ方々の状況を察しながら、チームを作り上げてこられています。団体としては非常に魅力的なご経験であり、ぜひご入職いただきたいことを熱意をもって伝えました。

 

――選考過程で気をつけたことはありますか?

 

出羽 : 他社で内定が出ていらっしゃったので、そのお返事の期限に間に合うよう代表面接まで急ピッチで進めました。また、内定が出た後も、事業マネージャーが何度か面談しています。今後の団体の展開について説明し、そこに対して中村さんにどうコミットしてほしいか、ご本人の希望するキャリアプランとすり合わせながらお話させてもらいました。

 

――お互いに今後の展望を話してすり合わせるところに、胸襟を開いたコミュニケーションをされているなと感じます。

 

中村 : 最終面接では、平岩さん(代表)が心理的安全性が保たれた空間をつくってくださり、どういう経緯で放課後NPOアフタースクールまでたどりついたのか? ということをじっくり聞いてくださいました。非常にリラックスして臨んでいたのを覚えています。選考の場というよりも、気持ちよくお話させてもらった感覚です。

 

代表理事 平岩さん

 

――とても丁寧に選考されるんですね。

 

出羽 : 少人数のチームなので、一人ひとりが仕事に与える影響力は大きいです。また、大人同士の関わりはとても大切です。まずは大人同士の心理的安全があり、思いやそれぞれの豊かな経験をわかちあっていることが必要だと思います。それがひいては子どもたちの安全で豊かな放課後の環境をつくることにつながると考えています。

 

スタッフみんながいい人

――最後に、放課後NPOアフタースクールで働くやりがいを教えてください。

 

中村 : たくさんありますが、心理的安全性が約束された中で「やりたいこと」ができる、それをサポートしてくれる人がいるところです。また、「すべての子どもたちに安全で豊かな放課後を」をミッションに掲げていますが、「放課後」は地域・家庭・学校、のすべてに関わる領域で、まだまだ事業を立ち上げられる可能性がたくさんあります。私は、アフタースクールのエリアマネージャーをやりながら私立アフター事業の戦略立案にも関わっているのですが、仕事を自分で拾っていったり広げていったりしながら、自由にやらせてもらえるところがありがたいなと思っています。

 

出羽 : どのスタッフに聞いても、みんな言ってくれるのは「スタッフみんながいい人」。何かあっても「ポジティブに変換していこうよ」というマインドの方が多いですし、お互いに支え合おうという気持ちが強い。安心感をもって、楽しく毎日働ける職場だなと思っていますし、これからも、そういう風になれるよう支えたいと思っています。

 

採用成功の鍵は何か? 取材を通じて感じた3つのこと

お話を聞く中で、採用成功の鍵としてポイントに感じたことが3つあります。

 

1つめは、求職者の方にあった内容で、熱意をこめて口説くこと。中村さんの場合は、内定後も、複数回、事業マネージャーが面談しています。また、人柄をじっくりみる最終面接により、団体側が中村さんの価値観を理解できていたこともポイントです。他社で内定が出ていた場合でも、ご本人の深いニーズに寄り添った提案ができています。

 

2つめは、多様な接点をもつこと。中村さんの団体認知のきっかけは、NPO支援の研修でした。どこでどんなご縁につながるかは分からないので、幅広く情報発信したり、外部の機会につながっておいたりすることの大切さを感じます。

 

3つめは、働く環境の柔軟性。副業可やフレックス、リモート勤務など働く環境の柔軟性は、選ばれる上で重要なキーポイントになりそうだと感じました。

 

表面的な対策では難しいものも多いですが、採用に悩んでいる企業・団体の方々の参考になりましたら幸いです。

 


 

>> 放課後NPOアフタースクールのWebサイト

>> NPO・社会的企業などソーシャルセクターに特化した求人サイト「DRIVEキャリア」

 

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採用キャリアNPOで働く採用活動のポイント
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乗越 貴子

1982年埼玉県生まれ。早稲田大学卒業後、塾講師、ネットサービスベンチャー企業を経て、NPO法人ETIC.参画。2児の母。志ある人と組織をつなげる求人サイトDRIVEキャリア(http://drive.media/career)で、事務局業務を担当しています。モットーは、「書くことと人をつなげることで、一歩踏み出す勇気を生み出せる人になる」