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移住でも旅行でもない?ビジネスパーソンの地域との新しい関わり方・岩手県 田野畑村編

2013.07.02 

「好きな地域で、仕事をつくる」半年間の短期実践プログラム、地域イノベーター養成アカデミー。前回の記事では、参加者の15%が移住する背景やプログラムの魅力をお伝えしました。

今回は、地域イノベーター養成アカデミー2012年度チームが、実際にどのような活動を地域で行ってきたのか、岩手県・田野畑村のケースをご紹介します!

「長期的に被災地支援に関われるかも」ボランティア経験者4名が集う

2012年度の地域アカデミーにおいて田野畑村は、「震災に負けない!未来につながる新たな観光確立に向けた田野畑の挑戦」をテーマに掲げて参加者を募集しました。

前年の東日本大震災によって、漁師生活体験などのプログラムが実施できなくなった田野畑。沿岸部への観光客が減少している中で、首都圏に住む人たちのアイデアによって新たな一歩を踏み出せないか、という思いからでした。

<岩手の県北地域が誇る景勝地・北山崎の風景>

このお題と、受入担当の地域コーディネーター・下平さんのプレゼンにひかれて集まったメンバーは当時30歳前後の男性3人と女性1人。集まった彼ら4人の共通点は、それぞれ東北でのボランティアを経験していたことでした。

「被災地のため、継続してできることはないか」とモヤモヤを抱えて東京で過ごしていたメンバー。そんな中、地域アカデミーの存在を知り、「これなら長期的に被災地支援に関われるかも」と思って参加を希望したとのこと。彼らは、チームで議論したり、飲みにいったりする中で、参加目的や想いを共有していきました。 

<オリエンテーション時の田野畑チーム集合写真>

「観光地としてどうアピールできるか?」地域の人やチームで徹底議論!

1回目のフィールドワークでは、下平さんと田野畑在住の楠田さん(ちなみに彼も同年代)に案内され、北山崎などの景勝地や体験プログラム、漁業や酪農などの地域産業の見学、そして地元青年会の方々との交流など田野畑のあらゆる面を体験。北山崎は、絶好の星空スポットだということで、夜中みんなで星空を眺めたりしたそうです。

観光客目線で田野畑を堪能し、地元の人のお話に耳を傾けながら、「どうしたらもっと観光地としてアピールできるか?田野畑ならではの体験ってなんだろう?」ということを、考え続けました。 

<漁師さんの船に乗せてもらって景勝地を海から見るプログラム「サッパ船アドベンチャーズ」>

<田野畑で酪農をされている山地酪農さんの牛たち>

<ろばたハウスでの海鮮バーベキュー!>

さらに彼らは2泊3日毎晩、下平さんと一緒に振り返りを実施。「自分はどこが楽しいと思ったか、売りにできると思ったか」などをじっくり議論しました。毎日、就寝時間は午前2時すぎ。でも、みんなでわいわい話ができるのが本当に楽しそうでした。  東京でも、プログラムで設定されているワークショップの前に、「忘れないうちに振り返りをしよう!」とカフェに集合。ここで、会った人や訪問先で何を感じたかなどを丁寧に洗い出していきました。そのミーティングはなんと6時間もやっていたそう。いつのまにか時間がたっていたみたいです。 

<そのときのワークの写真(全部で15枚!)>

プログラムで設けられている講義&ワークショップでは、講師のほかにもアドバイザーという立場で、外から地域活性に関わったり、地域で当事者として活性化に関わったりしてきた方々がいます。

参加者は、日々地域で暮らし事業をしている方々の思いをきちんとヒアリングできているのか、自分のやりたいことを押し付けようとしていないかをアドバイザーから幾度も問われ、地域とまったく関係のない仕事をしていても、基本的な考え方やケースなどを、身につけられる仕立てになっています。

<北山崎でレストランを営んでいる松乃屋さんとのディスカッションの様子>

また、フィールドワークでは意見が衝突することや紆余曲折もあります。1回目のフィールドワークでは、「地域の人たちからは「観光」というキーワードを感じられない。地域課題は観光ではないのでは?」と参加者は感じたそうです。

「地域の意図や想いがきちんと伝わっていなかったのでは…」と下平さんも内心焦り始めます。 しかし、2回目のフィールドワークでは「北山崎をもっとよくしたい」というひとつの目的に向かって率直に意見をぶつけ合うことができ、1回目には聞けなかった本音や想いを知っていくことができました。

そうして信頼関係を地域と築いていく中で、「少しでも地域に変化を生み出すんだ!」と参加者も思いを新たにしていきます。 わたしも2回のフィールドワークに同行していましたが、一度来てくれた観光客をファンにするポイントが小さなことの中にたくさん隠れていることを、参加者のみんなは地元のひとに真摯に伝えていました。彼ら自身の強みである観光客目線を大事にし、最後のプランにつなげていった様子がとても印象に残っています。 

<ろばたハウス店員のおかあさんから震災当時のことや、今のお店の状況などを伺う> 

<北山崎の民宿を継いだ双子の兄弟との、夜な夜なディスカッション>

東京にいながらもできることはある!プログラム後も地域をお手伝い

プログラムの最後に東京で行う修了報告会では、「“田野畑ならでは”を満喫できる新しい旅行スタイルを目指して」と題してプランをまとめ、発表。地域を代表して発表を聞きにきていた地域コーディネーターの下平さんは感動のあまり泣きそうになっていたそうです(笑)。わたしも当日資料を拝見して、彼らの4ヵ月が凝縮された内容に胸が熱くなりました。 プランの内容は、田野畑で飲食店や民宿を営んでいる方々むけに、「もっとこうしたらよくなる!そのためにも自分たちも引き続きお手伝いします!」というもの。その後も自主的に田野畑を訪問し、地域のみなさんにもプランを報告。結果として、地元の人も含めた、田野畑を盛り上げていくチームがうまれ、その後も定期的にやりとりしています。

訪問を重ねる中で、地域の方々との関係性が変わっていくのを感じ、自分たちの意見が求められていて、役立っているということを実感することもできたそうです。  なお、参加者のひとりはこの3月に転職し、仙台に移住!東北の拠点が増え、これからの活動の幅も広がりそうです。東京在住の参加者を集めた田野畑ツアー実施を目指して、まず自分たちが企画&体験するプレツアーを今年の夏に開催する予定だそうです。

「東京にいながらもできることはある、役に立てることはある」と確信できたこと。そして率直に意見を伝え、メンバーだけではなく、地域コーディネーターや地元の人たちと本気で議論したことが、今でも楽しく関係が続いている秘訣なのかな、と思います。メンバーは口をそろえてこう言います。

「こんなに熱中できるのは学生以来。仕事以外で6時間もミーティングしたり、新しい友人ができるなんて!笑」 「地域で仕事をしたいな」となんとなく思っている方はもちろん、仕事以外で真剣になれる場を探している方には、ぜひまず7/7のアカデミーキックオフイベントに足を運んでいただき、地域で活躍する方々の想いを聞いていただきたいです。

そこでピンときた方は、ぜひ彼らの仲間になっていただけるとうれしいです。

・地域イノベーター養成アカデミー2013 パンフレット集(PDF)

・地域イノベーター養成アカデミー2013 7/7キックオフイベント

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長谷川 奈月

NPO法人ETIC. チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト事務局・コーディネーター。1982年青森生まれ札幌育ち。札幌にて大学在学時から大学生と地域の企業をつなぐインターンシップのコーディネーターを経験。ETIC.参画後は、チャレンジ・コミュニティ・プロジェクトの企画運営や、将来地域で仕事を創りたいと考える東京在住若手社会人向けプログラム「地域イノベーター養成アカデミー」の立ち上げ、運営を担当。東京に来てからは、仕事の合間にさまざまなジャンルのライブと舞台を観に行くことが楽しみのひとつ。

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