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「新卒としてNPOではたらくまで」NPOサポートセンター笠原孝弘さんインタビュー

2013.08.13 

民間企業やWE21ジャパン、ETIC.などのNPOのインターンを経て、現在はNPOサポートセンターのスタッフとして働く笠原孝弘さん(28)。

NPOへのマーケティング導入プログラムや、求職者向けのNPO就職・転職支援プログラムの運営、NPO向けのソーシャルメディア活用の講演など、「NPO」や「ソーシャルメディア」という軸で幅広く活動されている笠原さんに、NPOで働くまでの経緯を伺いました。 NPOセンター笠原孝弘さん(1)

ビル・ドレイトンを紹介していたテレビを転機に、ソーシャルビジネスの世界へ

石川:まずは笠原さんの業務内容について、ざっと教えてもらえますか。

 

笠原:業務内容は、研修やプログラムのカリキュラム作りとかその集客、コーディネーションです。あとはNPOのITツールの導入サポートだとか、ソーシャルメディアに関する講義を行ったりというのが外向きの仕事です。社内でのソーシャルメディアの運用とモニタリング、フィードバックなども行っています。オンラインのコンテンツ作りと、コンテンツ作りのための社内環境整備をすることもありますね。

 

石川:プログラムの中身を作って、集客して、コーディネートしてというのを一手に担っているんですね。加えて、ソーシャルメディア導入やITのノウハウを、組織内だけじゃなく外でも提供している。そのスキルって、どこで身につけられたのか、これまでのキャリアとともに、聞かせていただいてもいいですか。

 

笠原:ちょっと長くなっちゃうかも知れないけど、僕はリーマンショック前の就活生なんですよ。大企業やベンチャーでインターンし放題だったんですけど、「なにかもう一歩たりないな」と思っていたんです。そのときに、僕が出会ったのがあるテレビ番組だったんです。アショカ財団のビル・ドレイトンや、社会起業家の活動が紹介されていた。「社会課題解決を担うビジネスってあるんだ!」と思って、日本にあるのかなと調べはじめました。

 

石川:なんでそんなにソーシャルビジネスが笠原さんに響いたんでしょうね。

 

笠原:就活中にベンチャーで面接しているときに、経営者は魅力的に感じたけど、どの事業が好きかを聞かれてもぴんとこなくて。「何をやりたい」って聞かれても、この会社でやりたいことはないなあと思ったし、サービスやプロダクトに愛着が持てなかった。もちろん社長面接や役員面接で「君がうちで働いているところを想像できない」と言われたり。

そんな中で、ソーシャルビジネスは「事業」そのものが魅力的だなと思ったんですね。で、インターネットや書籍で調べたら事業型NPOというキーワードを見つけ、NPOサポートセンターのインターンシッププログラムに参加して、WE21ジャパンという団体で9か月ほどインターンしながらNPOマーケティングを学びました。

 

石川:それが大学生の時ですよね。

 

笠原:そうです。で、「こういう分野もあるんだな」と思って悶々としてたら、大学を卒業して4月1日になってしまって(笑)。 誰かが「ETIC.に相談しに行ったらいいよ」と薦めてくれたので、「NPOでインターンしたい」と相談に行ったんです。

そのときは、まだNPOへのインターン先はまだあまりなくて、「じゃあETIC.に来る?」と、ETIC.のインキュベーション事業部でインターンをすることになって。その3カ月後にNPOサポートセンターの求人がタイミング良くあり、めでたく就職して今に至っています。 NPOセンター笠原孝弘さん(2)

「自分がやらなきゃいけない理由」をETIC.で突き詰める

石川:そうなんですね。ETIC.のインターンで学んだことってありますか。

 

笠原:イノベーショングラントというプログラムを担当していて、その中で同じ事業部の人たちに、相手のことを想像して丁寧に仕事をすることとか、コミュニケーションにおける聴く姿勢、愛嬌のあるメール文章とか、仕事をする姿勢を教えてもらいましたね。夜な夜なプログラムの告知先を探して、パソコン抱えたまま床で寝るような生活でしたけど(笑)。

ETIC.ではコミュニケーションしてる時間がすごく長かったです。「なんでこんなにやってくれるんだろうな」って位に。そういう経験ができたのは大きかったですね。今の団体に来て、カリキュラムを作ったりは最初は正直できなかったけど、人を集めるってことはETIC.でやっていたから出来た。

 

石川:それはすごくよかったですね。社会人基礎力と、集客力を3ヶ月のインターンで培っていて、新卒でもちゃんと役にたてた。

 

笠原:あとはETIC.に入ってもう1つよかったのは、宮城さんとの面談があったんですよ。そこで、「なんで君が中間支援スタッフにならなきゃいけないのか。君より優秀な人は世の中にいくらでもいるし、本当にそれをやりたいのであればキャリアとしてコンサルティング会社とかに1回行った方がいい。それでも、今のタイミングじゃなきゃいけない、自分じゃなきゃいけない理由を、この期間で突き詰めて考えなさい」って言われたんです。

 

石川:3ヶ月インターンをやってみて、何らかの答えは見つかったんですか。

 

笠原:一応、自分の中でこの仕事を続けたいなってひとつ思えたことがあって。インターン時代、カリキュラムやコーディネーションはできなかったけど、プログラムの告知だけは自分が担っていた。で、ある起業家が、僕がyahooボランティアに投稿した告知をきっかけに応募して参加してくれたんです。スタッフの人からも「笠原くんが載せたからだね」と言ってもらえて。その経験で、自分でもこういうふうに貢献できる仕事ができるかなって思えたんですね。

 

石川:笠原さんがテレビ番組をきっかけにソーシャルビジネスに出会ったように、笠原さんが告知してきっかけを作ったんですね。

 

笠原:宮城さんから問われた「僕じゃなきゃいけない理由」は、極論は僕じゃなくてもよかったと思うんです。それでも、僕がそこに載せたから、ここに来てくれた人がいる。起業家やリーダーに、こういう場に来てもらえるようなきっかけをちゃんとつくるっていうところを仕事にしたいと思ったんです。なので、今も泥臭くやっていますし、そこがまたソーシャルメディアにも繋がっているのかなと思います。

NPOに入ることが、特殊な選択だとは思ってない

石川:その当時、NPOの新卒採用って今よりもっと少ない状況だったと思うけど、いきなりNPOに入っていくことに不安とかはなかったんですか?

 

笠原:うーん、不安ってどういう感じでしょうね。たとえば、志ある中小企業がたくさんあるし、仕事をするとか生きるためだったら別にいくらでも選択肢はあるってわかっている。そういう面での安心感はあるんです。

「NPOの中間支援スタッフのキャリアが不安だから、それをどうにかしなきゃいけない」みたいな話はよく聞くんですけど、僕はその感覚がわからない。それだけをずっと仕事にするのであれば確かに不安かもしれないけど、世の中には他にも面白いことや意義があることって沢山ありますし。

 

石川:中小企業に入るとかの選択肢に比べて、笠原さんにとって特殊な選択肢じゃなかったってことなのかな。表面的な組織形態とかを、一貫してあんまり気にしてないですよね。

 

笠原:もっとうまく自分のストーリーを言えた方がいいんでしょうけど、そうなんです。企業でインターンして、テレビ見て刺激を受けて、その業界でインターンして、タイミングがあったから就職した。それが正直なところですね。 石川:そんなに肩肘はってない感じなんですね。

 

笠原:そうですね。だから「そんなに必死に仕事してたんだ!」って驚かれたこともありますよ(笑)。 ビジネスホテルに1年間くらい住んでたこともあるんですけどね。通勤も便利だし、生活の見えないコストを全部そぎ落せる。すごい楽だったし、仕事に集中できていい環境だったんですけど。

 

石川:それはかなりストイックな働き方してますね。ソーシャルメディア上で活躍を見ていると、軽やかな雰囲気に見えるんですけど、実はマッチョなところもあるんですね。

(続き)孫泰蔵さんがきっかけとなり、ソーシャルメディア×NPOに着目

■ NPOサポートセンター・笠原孝弘さんインタビュー一覧

(本稿)新卒としてNPOではたらく

(続き)孫泰蔵さんがきっかけ!ソーシャルメディア×NPOに着目

(3)「NPOキャリアカレッジ」をつくり卒業生の4割をNPO業界に送り込む

(4)「NPOで働きながらプロボノ」自分をドライブするスキルの育て方  

 

特定非営利活動法人 NPOサポートセンター/笠原孝弘

1985年生まれ。大学で法律を学ぶ傍ら、アントレプレナーシップに触発される。事業型NPOのWE21ジャパンでインターンしながら、NPOマーケティングを学ぶ。大学卒業後、起業家支援NPOのETIC.で有給インターンを経験し、次世代の社会起業家と、先輩ベンチャー起業家の連携を生み出すプラットフォーム「イノベーション・グラント」事業を担当。2009年よりNPOサポートセンターに入職。主にNPOを対象としたインターネットツールの活用、ソーシャルメディアの講演や導入支援を務める。「NPO」×「IT」をキーワードにした海外トレンドをNPO/NGOスタッフや日本のビジネスパーソン、社会イノベーターに紹介することに取組む。

NPO法人ETIC. 聞き手/石川孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)と自然を愛する。

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田村 真菜

フリーランス/1988年生まれ、国際基督教大学卒。12歳まで義務教育を受けずに育ち、野宿での日本一周等を経験。311後にNPO法人ETIC.に参画し、「みちのく仕事」「DRIVE」の立ち上げや事務局を担当。2015年より独立、現在は狩猟・農山漁村関連のプロマネ兼ボディセラピスト。趣味は、鹿の解体や狩猟と、霊性・シャーマニズムの探究および実践。