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鎌倉投信・新井和宏さん×MAKOTO・竹井智宏さん対談 「会社と地方の幸福論」vol.3 地方で“いい会社”が生まれる理由

2016.11.25 324view 

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連載対談「会社と地方の幸福論」は、一般社団法人MAKOTONPO法人ETIC.ローカルイノベーション事業部の共同企画です。この秋、わたしたち2団体は、東北で生まれている移住・起業の火種を東京で体感するイベント「TOHOKU IGNITION」を、4回にわたって開催します。第3回のテーマは「東北のIT×ドローン×ワクワク」。12月2日(金)19:00から池袋Bathroomを会場に、パネルディスカッションと懇親会を予定しています。「IT」「ドローン」というキーワードにピンと来た方は、ぜひご参加ください! 詳細・ご応募はコチラから。

現代の日本は、ストレス社会だと言われます。

なぜ、お金や仕事がストレスの原因となってしまうのか。これらとどう付き合えば、わたしたちは幸せに近づくことができるのか……。そんな疑問から、それぞれ仙台と鎌倉を拠点に“いい会社”をふやすことに取り組む、一般社団法人MAKOTOの竹井智宏さん、鎌倉投信株式会社の新井和宏さんに、話を聞くことにしました。

2人の対談から見えてきたのは、“地方で働く”“いい会社をふやす”“幸せのものさしを見つける”といったことが、仕事を通して幸せになるための鍵になる、ということ。そんな対談の内容を、5回に分けてお届けします。

第3回は、「地方で“いい会社”が生まれる理由」についてです。

※第1回、第2回の記事も合わせてご覧ください。

竹井智宏さんのプロフィール

一般社団法人MAKOTO 代表理事

1974年生まれ。東北大学生命科学研究科博士課程卒。仙台のベンチャーキャピタルにて、ベンチャー企業への投資に従事していた際に東日本大震災が発生。震災後の2011年7月に一般社団法人MAKOTOを設立し独立。日本初の再チャレンジ特化型ファンド「福活ファンド」を組成し、起業家の投資育成活動を展開。2015年、日本ベンチャーキャピタル協会より「地方創生賞」を受賞。起業家育成の環境作りにも力を入れ、東北最大のコワーキングスペース「cocolin」を仙台市内で運営。東北随一のクラウドファンディングサービス「CHALLENGE STAR(チャレンジスター)」も展開。2016年、日本財団「ソーシャルイノベーター支援制度」によりソーシャルイノベーターに選出。東北大学特任准教授(客員)。

新井和宏さんのプロフィール

鎌倉投信株式会社創業者・取締役資産運用部長・「結い2101」運用責任者

1968年生まれ。東京理科大学工学部卒。現・三井住友信託銀行、ブラックロック・ジャパンに在籍し、ファンドマネージャーとして数兆円を運用する。2007年、大病を患ったこと、リーマン・ショックをきっかけに、10年近く信奉してきた金融市場・投資のあり方に疑問を持つ。2008年、同志と、鎌倉投信株式会社を創業、以降投資信託「結い2101」の運用責任者として活躍。経済性だけでなく社会性も重視する投資哲学の下、「結い2101」は、個人投資家1万6千人以上、純資産総額240億円超(2016年10月時点)の支持を集め、2013年には第3者評価機関の最優秀ファンド賞も獲得。特定非営利活動法人「いい会社をふやしましょう」理事も務める。

グローバルニッチな企業は地方で生まれる

--「地方だからこそ、自分の幸せを見つけることができる可能性がある」という話をしてきましたが、「いやいや、地方って仕事がないし、稼げないでしょう」という声もあると思います。

新井:僕は地方だからできないっていうのは、言い訳にしか過ぎないと思っています。地方だからこそできることはたくさんあるんですよ。

たとえば、地方よりも東京の方がグローバルなビジネスをしやすいというイメージがありますね。でも、僕が高校生をグローバルリーダー教育の一環で連れて行ったのは、飛騨高山なんです。

なぜなら、飛騨にあるFabCafe Hidaが非常にグローバルで、世界各国からクリエイターが訪れているから。3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタル工作機械でものづくりができるFabCafeは東京にもありますが、なぜあえて飛騨に海外の方が訪れるのか、その意味合いを高校生にも感じて欲しいから飛騨に連れて行くんです。

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--なぜ海外の方は飛騨に?

新井:飛騨のFabCafeでは、ものづくりの素材に飛騨の間伐材を使ってるんですよ。その土地で、その土地の素材を使ってものづくりができる。そこに、東京でもニューヨークでもできない、オリジナルなストーリーが生まれるじゃないですか。だから海外の方も面白がってくれるんだと思います。

竹井:海外から見れば、東京も飛騨も「Japan」ですからね。地方だからって、「ウチが日本代表だ」ぐらいの顔をして海外の方と付き合えばいい。

東北も世界で評価されている工芸品がありますよ。リオオリンピックで使われた卓球台を作ったのは、株式会社天童木工という山形県の会社ですし、同じく山形県の株式会社朝日相扶製作所っていう会社は、ニューヨークの国連本部ビルの議場イスを提供しています。

経済がグローバル化した今、地方の企業でも海外から名指しで発注が来るわけです。だから、地域の伝統産業を生かして、グローバルに展開していくことは、これからすごく面白いテーマになってくると思いますね。

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新井:天童木工朝日相扶製作所ものような「グローバルニッチ」な会社は、地方でしか成立しない、ということをドイツの研究者が言っています。理由は単純で、都市では優秀な人財が引き抜かれちゃうからです。

人財が流動的な都市だと技術が流出しやすい、一方で地方都市は技術を囲い込みやすい。だから実は、技術のある会社は地方で育ちやすいんです。

地方の企業に、「ヒト・モノ・カネ」が集まり始めている

新井:鎌倉投信の投資信託「結い2101」もいくつかの地方の企業に投資していますが、その大きな理由は、「地方では企業にストーリーが生まれる」ということなんです。

先ほど(筆者註:第1回の記事を参照)企業が持つストーリーの話をしましたが、東京で事業をしているからといって、それだけでストーリーが生まれることは少ないから、均質化しやすい。それに比べて地方の企業は、その地域でやっているだけで意味がつけられます。「なぜあえてこの土地でやるのか」という理由がありますからね。そこにストーリーが生まれ、他の企業と差別化できるんです。

それに、同じ地域に集まった企業同士は「なぜあえてこの土地でやるのか」という価値観が共通しているから、非常に仲がいいんですよ。たとえば、鎌倉には鎌倉投信の他に、カヤックやパタゴニアなどの企業が集まっていて、「事務所を共有化しない? 」なんて言い合える仲ですからね。

価値観の共有というのは企業がステークホルダーと共に事業をしていく上で非常に重要なことで、それができる素地が地方にはありますね。

--地方に拠点を置くからこそ、ストーリーが生まれ、ヒトが集まり、その結果カネやモノも集まるようになってくる。事業としても、差別化しやすいと。

竹井:わたしも地方にはすごくチャンスがあると思っているんです。地方だと、「産官学」に金融を加えた「産官学金」といったステークホルダー同士の距離感が、とても近いんですね。仙台ぐらいだと、地域にいる主要な方々と全員顔見知りになってしまう。だからいざとなれば、連携するのは早い。変化を起こしやすいのは、東京よりもむしろ地方だと思うんです。

トーナメントの参加者が少ない場所を選ぶ

--とはいえ、やはり起業するとなると東京と比べて多額の資金調達をしにくいのではないかとも思います。

竹井:そんなことはないと思いますよ。今は資金調達の手段はいろいろありますし、地方でもファンドがあるんですが、出す事業がなくて困ってたりするのでチャンスです。

新井:そうですね。アメリカと日本で明確に違うところは何かっていったら、「どこの地域に行っても銀行がある」ってことなんですよ。どんな地方に行っても銀行があるというのは、実はすごいことなんです。

あと、地方の金融の方々も行政の方々も、どうやって企業に来てもらうかを一生懸命考えていますから、チャンスは多いと思いますよ。

竹井:高校野球って、地域によってトーナメントに参加しているライバルが少ない場所と多い場所がありますよね。それと同じで、競争相手が多い東京で一生懸命ビジコンに出るよりも、地方に行った方が頭角を現しやすかったりする。メディアも行政も、比較的すぐ注目してくれますから、この状況をうまく使えば本当に有利です。

そういう地方のメリットをうまく活用して、事業を成長させるのが、これからの起業家の狙うべきところだと思います。

--実際に地方のベンチャーで、資金調達に成功した事例はあるのでしょうか?

竹井:例えば「GO-DJ」っていうポータブルDJマシンを開発した、仙台の株式会社JDSoundという会社は、クラウドファンディングサービス「Makuake」で約5,300万円の支援を集めました。これは、モノ系クラウドファンディングでの日本最高額です。

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あとは、山形の鶴岡に慶應大学の鶴岡キャンパスがあって、生命科学の研究拠点になっているのですが、そこから技術系のベンチャーがどんどん出てきています。

そのひとつのSpiber株式会社は、人工的にクモの糸を作った「合成クモ糸繊維」の量産技術の開発に成功したバイオベンチャーで、約140億円の資金調達をしているんですね。これも日本トップレベルの資金調達額です。

つまり今は、地方の大学院生が起業したベンチャーでも140億円のお金を集められるような時代なんですよ。だから「地方だから」っていうのは新井さんがおっしゃったように、言い訳に過ぎない。「大きいビジネスをするなら東京で」って考えもステレオタイプなので、今後変わっていくのかな、と思います。

(つづく)

この記事を書いたユーザー

山中 康司

山中 康司

働きかた編集者。IT系ベンチャー企業にてオウンドメディアの編集者を経験したのち、現在はNPO法人ETIC.ローカルイノベーション事業部にて、「地方での働き方」に関するプロモーション業務等を担当。立教大学卒、東京大学大学院情報学環学際情報学府修士課程修了。

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