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#ローカルベンチャー

「どんな人がいて、どんな想いがあって、そしてどんな作り方かを知らない限りは、やっちゃいかん」株式会社四万十ドラマ・畦地履正さん―起業家七転び八起きvol.5

2015.03.09 

「四万十川に負担をかけないものづくり」を理念として、地元の農林業の素材にこだわった商品を生み出し続け、道の駅「四万十とおわ」の運営など、幅広く地域の事業を手がける株式会社四万十ドラマ

今回は、そんな株式会社四万十ドラマ社長の畦地履正(あぜち・りしょう)さんに七転び八起きストーリーをうかがいました。 畦地履正さん 長谷川:事業を立ち上げてきたなかでたくさんの経験をされてきたと思うのですが、特に大変だったことはなんでしょうか?

 

畦地:大変だったのは依頼された仕事かな、やっぱり。自分の想いとは別に依頼されて、相手の考えをかたちにする仕事のときが一番しんどかったかな。

なんでかっていうと、俺は物を売りたい。お茶とか、米とか椎茸とか、柚子とか、地元にあるものを売りたい。そこに、まったくお門違い、つまり地元のものでない産物を売ってくれと言われたときは大変だった。

たとえば、アロエ栽培を四万十が始めたばっかりのときだったね。無農薬、有機栽培で作っていて非常に良いアロエだった。四万十流域が群馬県から企業誘致をして、来る前はめちゃくちゃ調子が良い企業だったのね。それが、四万十に来た途端にその製品が売れなくなったの。

商品自体は本当に素晴らしいもので、キタヂアロエっていうのは本当効くの。食べたら胃腸に良いとか……それこそ、お酒を飲む前にちょっとだけ飲んだら、二日酔いになりにくい。本当に良いものなんだけど、四万十に誘致したとたんに売れなくなっちゃったの。生産者も困るわけよ。いっぱい植えて、栽培を既に始めてたのに。

 

長谷川:群馬とまた四万十じゃ気候も違いますしね。

 

畦地さん:いや、四万十の方が群馬よりか暖かいから、気候は合ってる。だからこそ、四万十に合ってたわけよ。でも、できたのに売れなくて、それをどうするのかという問題が出た。企業誘致をしたのは行政で、困って困って。そこで、当時できたばっかりの四万十ドラマに白羽の矢が立った。

 

長谷川:それは何年前のことですか?

 

畦地:17、8年前だね。当時、四万十ドラマには売れるものがなかったから、うちで売ることになって。商品開発をすることになったんよ。

でも、当時の俺は、商品開発もやり方も知らない。考え抜いたあげく作ったのが、アロエを柚子と合わせたものだった。アロエって、めっちゃ苦いやん。でも柚子と合わせたら苦みがまろやかになるかもしれない。「アロエゼリー柚子入り」。もう添加物だらけ。

でも、決めちゃったんですよ。 でもやっぱり、うまくないわね。結局、1個100円で200個はなんとか買ってくれた。1000個作ったから、あと800個。あげるからもらってくれって言っても、誰も受け取ってくれない。

やらされた仕事をやって、俺の思いがこもらなくて、売れないもの作っちゃった、ていうのはありましたね。 当時はまだ、俺ら自身方向がぶれよったころだったから。 今やったら「もうやらんわ」って言ったら終わりやけども、あのころは言い返せるような年齢でもなかったし、苦渋のうえでやったんやけど。自分の本質を持てなかった。

 

長谷川:なるほど。断れる状況じゃなかったのも想像できますし、でも悔しい気持ちも想像できます。 道の駅全景 畦地:あとは、道の駅は、今は失敗は少なくなってきたけど、ここでもひとつあったね。 道の駅構想は12年前からあって、当時の俺っていうたら38歳。四万十ドラマも8年目で、そこそこ事業の土台ができ始めたころ。 12年前というと、市町村合併があってね。ちょうど俺らを第三セクターから民営化するという話になった。

そのときに、道の駅をやってくれないかと話があったんよ。当時の役員は、皆そろって「簡単に受けるな」「もっと考えてから」と言ってたね。「よく考えてみろ、あんな山の奥に人は来ない」と。けど、俺とさこちゃん(四万十在住のデザイナーの迫田司さん。四万十ドラマ設立当初からのパートナー)は二人で乗り気で。

あんな山奥に道の駅作っても、客は来ないと人は言う。でも、誰かがやらんとうちの地域は駄目になると思った。これは、俺からみたら新たな第二創業だったね。四万十ドラマの営業部門と道の駅事業部を作るっていうのだから、第二創業。 それで、なんとか皆さん口説いてスタートできるようになった。

さて、スタッフを選ばないかん。スタッフは道の駅の職員になるわけだね。だけど、親会社は四万十ドラマなわけだ。そこでぶつかった問題が、雇われた方たちがみな口にする「私たちは道の駅の職員だから、四万十ドラマのことをなぜやらなければならない」ということだった。これを3年間すったもんだと突きつけられた。 俺も当時40過ぎたころだから、「こらー、あほー」みたいな感じなわけ。「体育会のノリ」でやりよったから、軋轢よね。当然、想いも違うから……俺らは志があるわけよ、道の駅で地域活性化をしようという。

かたや、雇われているっていう者。俺らは第二創業を始めたけど、雇われた人たちはただの職員。8時から17時まで出て給料貰えたらいいわ、っていう人たちが集まったわけよ。人もおらんし。そういう人たちは必然と辞めていった。それを払拭するのに3年かかった。やっと土台ができるまで、10年くらいかかった。

 

長谷川:そこの方たちはどのように採用したんですか? 採用は行政の方たちがしてきたということですか?

 

畦地:いや、一緒にうちらが選んだやり方。

 

長谷川:でも、まったく分かってもらえなかったと。

 

畦地:分かってもらえない。来る人たちは、行政が作ったと思ってるから。もう民間になってるけど、やっぱりそこは行政の施設でやるから簡単で、楽に仕事をしていたいっていう方たちが何人かおった。

田舎での人の選び方っていうのは相当気を使わなければいけないけれど、いないんだよね、人が。俺はその3年のうちに外から人を雇うことにした。インターンシップを採用したのがそのとき。風を起こそう、人を入れ替えようって思った。その子らが入ってきて、やっと落ち着いて。そして今やっとその子らが若手リーダーに育ってくれたって経験があった。

こんな感じで第二創業のなかで苦労したのが、いくら俺らの想いがあっても起こる、田舎での展開なり、地域で人を雇うということに対しての軋轢だね。

 

長谷川:なるほど。一つ目のアロエのお話でもおっしゃっていたように、やっぱり自分の売りたいという想いだったり、その想いの伝え方、伝える方向が大切ということですね。

 

畦地:そう。「自分が何をしたいのか」っていうことだよね。一つ目のアロエの件でいうと、どんな想いで作るかということがない限りはやっちゃいかんなって思った。だから今でも想いを言い続けるんよ。 とおわ市場 長谷川:最近は、どのようにご自身を鼓舞されてるんですか?

 

畦地:一番ありがたいと思ってるのは、地域ではずっと応援してくれてるメンバーが絶対変わらないってこと。

「辞めるな辞めるな、やれやれ、お前がやらないかん」っていうふうに、常に応援してくれる。その人たちとは腹割って喋れる。その人たちが地域にいることが、絶対的な力になってる。叱咤もされるけども、応援もしてくれる。

四万十ドラマっていうのは、誰に何を言われようが応援団があることが強い。地域にも完全な応援団があるし、外にもこんなに応援団がある。やっぱり、そんな人たちとは本気で話ができるんよね。考え方を作れる――自分たちの考えを持って、自分たちの考えをちゃんと形にできる人たちが応援してくれてるっていうのは、一番の力やね。

 

長谷川:ありがとうございました!

起業家七転び八起きシリーズ

聞き手/NPO法人ETIC. チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト事務局・コーディネーター/長谷川 奈月

1982年青森生まれ札幌育ち。札幌にて大学在学時から大学生と地域の企業をつなぐインターンシップのコーディネーターを経験。ETIC.参画後は、チャレンジ・コミュニティ・プロジェクトの企画運営や、将来地域で仕事を創りたいと考える東京在住若手社会人向けプログラム「地域イノベーター養成アカデミー」の立ち上げ、運営を担当。東京に来てからは、仕事の合間にさまざまなジャンルのライブと舞台を観に行くことが楽しみのひとつ。

この記事を書いたユーザー
桐田理恵

桐田理恵

1986年生まれ、茨城県育ち。医学書専門出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2017年からはフリーランスのライターとして活動している。

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