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そこには日本の少し未来がありました――「世界ファンドレイジング大会@アメリカ」レポートby株式会社PubliCo・山元圭太(前編)

2015.05.29 

多くの方々にクラウドファンディングにてご支援をいただき、2015年3月に世界ファンドレイジング大会(The International Fundraising Conference:IFC)に参加してきました。 そして、アメリカでの学び・気づきをどう日本に活かせるか皆さまと一緒に考えるために、帰国報告会を開催し、その内容をレポートととして書きました。

本レポートが皆さまの活動やソーシャルセクターの発展の一助になれば嬉しいです。 山元さん

株式会社PubliCo代表取締役COO 山元圭太

APF主催IFC(The International Fundraising Conference)とは

日本におけるファンドレイジングのノウハウ、事例を発表する2日間の大イベントである「ファンドレイジング・日本」。その「世界版」がIFCとイメージしていただけると分かりやすいかもしれません。アメリカのファンドレイジングやNPOマネジメントのノウハウ・事例がセッション内で発表されます。参加人数は約4,000名。3日間にわたって行われるセッションの数は約115セッションと、ファンドレイジング・日本(参加人数約1,200名、セッション数約55セッション)と比べても大規模に開催されています。

IFC2015の開催場所は、ボルチモアというワシントンから電車で約1時間の港町。全米各地にある地域チャプターがIFCを運営するため、開催場所が毎年異なるのも特徴です。ちなみに来年はサンフランシスコです。 僕は2015年3月28日に到着し、29日?31日の3日間IFCに参加してきました。4月1日はIFCの主催団体であるAFP(Association of Fundraising Professionals)本部と現地3団体の見学ツアーに参加してきたので、前編ではそこでの経験と学びを共有します。

違いは「知恵の流通量」と「実践力」

28日、到着してから、まずはIFC会場へ受付に行きました。すると、受付前にはこんな風景が。 ブックコーナー

IFC会場ブックコーナー

これらはすべて、NPOマネジメントやファンドレイジングに関する書籍です。いくつか読んでみたのですが、内容は日本で語られているものと大きくレベルが離れている感覚はありませんでした。しかし、「知恵の流通量」は明らかに異なります。セミナーや研修に行けば知恵に触れることはできますが、地域差もあれば、欲しいときに得られる状況にはまだまだなっていないように思います。 書籍だけでなく、WEBサイトなどでもすでにある知恵を集約し、誰でもいつでもどこでも学ぶことのできる仕組みが必要だなと思いました。

また、のちに現地団体のファンドレイザーと接していても同様のことを感じたのですが、知恵の実践度の違いがあるように思います。プロとして普段の振る舞いや話し方、内容などが安心感と説得力を与え、相手に応じてそれを変えるなどのレベルの高さを感じました。

セッションでの学び例:「トライブマネジメント(tribe management)」

IFCに参加した3日間で約10のセッションに参加したのですが、その中でも面白いと感じた一つを紹介します。 寄付者コミュニケーションで最も理想的なのは、「personalization(パーソナライゼーション)」です。寄付者に対し一人ひとりの価値観に合ったお礼の方法や対価を提供するという、いわゆる「個別カスタマイズ」のことです。

しかし、すべての寄付者に対してパーソナライズな対応をするのは現実的ではありません。そこで、「tribe(トライブ)」と呼ばれる「寄付者を"共通の関心”と"コミュニケーション手段”で結ばれたグループにまとめて対応する方法」を用います。トライブは日本語に訳すと、「種族・部族」という意味。似た関心を持つグループをつくり、効率的・効果的に寄付者との関係を構築することを「トライブマネジメント」と呼びます。

トライブマネジメントの一例として、「レガシーソサエティ(遺贈寄付者会)」をご紹介します。ある現地の団体見学にいった際に、玄関に飾ってあった下記のボードが目に留まりました。 「レガシーソサエティ」のドナーボード

「レガシーソサエティ」のドナーボード

ずらっと並んでいるのは、この団体に遺贈寄付を表明している方々です。この団体では、遺贈寄付を表明してくださる方のトライブを作り、そのトライブに対して特別なスタディツアーの招待やイベントの招待を行うなどカスタマイズしたコミュニケーションを行っています。寄付者マネジメント、ボランティアマネジメントに参考になる考え方です。

今年のテーマは「transformation(変革)」

IFCに3日間参加したあとは、AFP本部と現地3団体――赤十字、AARPという高齢者の貧困・孤独・飢餓撲滅に取り組む団体、WPASという芸術教育を行う団体――を訪問しました。まず、AFP本部に伺った際にCEOのアンドリュー氏が言っていた言葉が印象的でした。 山元さんとアンドリュー氏

AFP本部でアンドリュー氏と

「2015年のテーマは『transformation』だ。社会的課題が大きすぎるということを市民が気づき始めている。今までのやり方ではダメなので、本当に成果が出るように変革していかないといけない。また、ファンドレイザーもこれまでのような在り方や働き方ではいけない

この言葉はアメリカのファンドレイジング界隈で、 1.ソーシャルインパクト志向への転換 2.ファンドレイザーのキャリア転換 という二つの転換が求められていることを示しています。

一つ目のソーシャルインパクト志向への転換は、見学に行ったどの団体も重視していることを話してくれました。詳しくはレポートの後編にて書こうと思います。二つ目は、今まで単なる営業担当として扱われ職務満足度が実は低かったファンドレイザーのキャリアを、より働きやすい働き方に変革していかなければならないということでしょう。実際、IFCのセッションにはファンドレイザーのキャリア開発に関するテーマも多く、関心の高い分野ということが伺えます。

次は、中編:「NPO向けソリューションプロバイダビジネスの活況」に続きます。

2016年6月現在、山元さんの株式会社PubliCoで、コンサルティング等人材募集中です!  

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山元 圭太

合同会社喜代七 代表 / 株式会社 Seventh Generation Project 取締役 / NPO法人日本ファンドレイジング協会 理事 / NPO法人ソーシャルバリュージャパン 理事 / 島根県雲南市 地方創生アドバイザー / 1982年滋賀県草津市生まれ、同志社大学商学部卒。経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして5年NPO法人かものはしプロジェクトでファンドレイジング担当ディレクターとし5年半のキャリアを経て、非営利組織コンサルタントとして独立。2015年10月に株式会社PubliCoを創業。2018年3月に故郷の滋賀県草津市で合同会社喜代七を創業。2018年12月に株式会社Seventh Generation Projectを創業。