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気軽に海外に行きにくい状況が続いていますが、そんな中でも「世界で挑戦したい」と考える方も多いのではないでしょうか。
そういった方にご注目いただきたいのが、アジア太平洋地域の28の国と地域で開催されている、若者によるソーシャル・イノベーションと社会起業を支援するプログラム「Youth Co:Lab(ユース・コーラボ)」によるSDGsビジネスコンテスト 「ソーシャル・イノベーション・チャレンジ」(以下SIC)です!
ユース・コーラボは、国連開発計画(UNDP)とシティ・ファウンデーションが共催している、SDGsの達成に向けた、若者による社会革新や起業を支援するプログラムです。
このプログラムを通じて、アジア太平洋地域で11,000名以上の若手社会起業家が支援を受け、1,240以上の社会的事業の立ち上げやアクセラレーション(加速)に繋がっています。さらに、SIC最終選考まで残ったファイナリストのうち数名は、ユース・コーラボアジア太平洋サミットへ参加し、新たな学びや、グローバルに事業を紹介するチャンスを獲得できます。
そのアジア太平洋サミットが今年7月にシンガポールで開催され、2021年度のユース・コーラボ SIC日本大会で最優秀賞を受賞した栗本拓幸さんが参加しました。
栗本さんは現役大学生で『一人一人の影響力が発揮できる社会』をつくることを目的に株式会社Liquitous(リキタス)を立ち上げました。「民主主義のDX」をテーマに、独自の参加型合意形成プラットフォーム”Liqlid”の開発・運用、市民参加のデジタル化・DXのコンサルティング、市民参加のデジタル化・DXに関連する調査などをしています。
栗本さんに、SICで最優秀賞を受賞した後の変化や、シンガポールサミットで感じた学びと危機感などをインタビューし、お届けします!
株式会社Liquitous CEO 栗本拓幸(くりもと・ひろゆき)さん
1999年生まれ。株式会社Liquitous 代表取締役CEO。市民の社会参加/政治参加にかかる一般社団法人やNPO法人の理事、地方議員コンサルタントなどとして活動。現場の声や自らの経験をもとに、デジタル空間上に、市民と行政をつなぐ「新しい回路」の必要性を確信し、2020年2月にLiquitousを設立。現在は、大阪府河内長野市・千葉県木更津市・高知県日高村などと連携協定を締結しながら、日本全国の20弱の自治体と協働して取り組みを進める。
ソーシャル・イノベーション・チャレンジが事業加速の突破口になった
――ソーシャル・イノベーション・チャレンジにはなぜ応募しましたか?
栗本さん : 存在そのものは元々知っていて、たまたまFacebookの広告が流れたのをきっかけに応募しようと思いました。
2021年がちょうど自治体とのパートナーシップを頑張っていた年で、SICに応募した8月~9月が一番しんどかった時期でした。どういう風に社会的信頼を得られるのかを考えており、SICでもし受賞したら、自治体の皆様からの信頼に繋がるのではと思っていました。
――最優秀賞を取った後の変化は何かありましたか?
栗本さん : 個人的な変化は、自信がついたことです。私たちの取り組みは実験的な側面が大きく、SICへ応募した際は、自治体との取り組みがまだ進んでいなかったので、本当にうまくいくのかという一抹の不安もありました。しかし、最優秀賞をいただいたことで、形になるという手ごたえが強くなりました。実験としてやりましょう、ではなく、弊社の取り組みは、これからのスタンダードなのでやりましょうとコミュニケーションできるようになりましたね。
事業的な変化として、自治体の皆様から信頼をよりいただけるようになったと感じています。自治体の担当の方と意気投合したとしても、その担当の方が組織の中で、なぜLiquitousであるべきなのかを説明できることがとても重要です。UNDPとシティ・ファウンデーションが開催するビジネスコンテストで最優秀賞を取ったということが、説得材料になりました。まさにSICで最優秀賞を取ったことが事業を加速させる一つのトリガーになりましたね。
昨年のSICでの栗本さんのプレゼンテーションの様子
シンガポールサミットで感じた危機感
――シンガポールサミットは、どんな場でしたか。
栗本さん : プログラムは4日間に渡って開催されました。他国から代表として参加した若手社会起業家とのネットワーキングに加え、シンガポールで活動しているソーシャル・スタートアップの話を聞いたり、UNDPのアジア太平洋地域の本部の方と対話したり、濃密な時間でした。
起業家との横のつながりができやすいイベントだったので、サミットが終わった後もフィリピンから来ていた起業家の方とランチしたり、東ティモールから来た起業家の方からお別れする際に首かざりをもらったりなど、色んな交流がありました。
シンガポールサミットの様子:栗本さん提供
――印象に残っていることや、感じたことは?
栗本さん : フランクに言えば、「やばいなあ」と正直思いましたね。
日本がアジア太平洋地域から言語的に隔絶されているからこそ、お互いに全く見えていない状況にあることを痛感しました。海外に行くと日本人であることに無条件に「いいね」と言われるという思い込みもあると思いますが、特に社会起業の文脈では、それが全く無いと実感しました。日本のエコシステムはアジア太平洋から孤立していると痛感しましたね…。日本で何かやっていますという事のインパクトが全く通じませんでした。
また、サミットに参加していた国の社会的な成熟度はお互いに違いますが、彼・彼女たちの個人的な原体験に根差している事業に強力なインパクトを感じました。喫緊の社会課題に取り組んでいることに加え、それ以上に彼・彼女らの事業に対する熱意がすごかったです。自国で始めた事業をアジア太平洋地域に一気に広げていく上で、英語の浸透力による言語のバリアの無さも含めてパワーがあります!
今この瞬間は日本が経済的には優位で、ある程度お金も回っているから日本市場だけでもなんとかやっていけていると思います。しかし、30年後~50年後のことを考えたときに、日本経済の余力があるか、確実ではありません、お金が回りません、となったときに彼ら彼女らと同じ土俵に立って事業をすることを考えると危機感を覚えました。
自分自身、Think Globally、Act Locallyをと言われるように、これまでもグローバルを見たいという意識を持っていたつもりではありましたが、こんなに孤立していたんだと感じました。
――サミットから持ち帰った学びはありますか。
栗本さん : シンプルですが英語の発信をもっとやろうと思いました。私たちがやっていることを英語で徹底的に発信しなければいけないと気づけたことが最大の収穫です。それが結果として、アジア太平洋地域のエコシステムから取り残されないための戦術だと感じています。
各国から参加する起業家と栗本さん:UNDP提供
グローバル視点を持つことが事業のチャンスや視座の広がりに繋がる
――ユース・コーラボは世界と繋がる良い機会ですが、栗本さんにとってグローバルの視点を持ちながら、現場に根差して活動することの意義は何ですか?
栗本さん : 世界を見ること自体が事業のチャンス・視座の広がりに繋がると思います。自社の文脈だと、幸か不幸かGovTech*をやっている会社は世界的に見ても少なく、特に市民参加に関するソリューションについては、上手くいっているケースはまだまだ少ないです。世界規模で見ると、この国に同じことをやっている会社はないよね、とか、ユース・コーラボに参加しているこの国だったらできそうだなとか、戦略を考える上での思考がクリアにもなりますし、中長期的なチャンスにも繋がると思います。
*GovTechはガバメントテクノロジーの略。行政の業務をデジタル化する取り組みのこと。
――最後に、これからソーシャル・イノベーション・チャレンジに応募される方への応援メッセージをお聞きできますか。
栗本さん : SICの良さは事業のシリーズ・ステージが違っても参加できる、間口の広さだと思います。また、高校生の方が参加できることも良いですよね。僕自身も高校生からいろいろやっていて、当時は何か応募したくても法人格が無いといけないなど制限があったので。アイディアと想いがあれば誰でも応募できるのはとても良いと思います。
サポートも手厚いのも魅力的ですね。アワードはあくまでも入口で、その後、審査員の方とのメンタリングがありました。また、SICの審査員の方からの紹介で、今年の夏以降に形になりそうな国内のプロジェクトもあります。また、各国の受賞者を対象とする、スプリングボードという研修プログラムもあります。SICへの挑戦をチャンスにして次の展開を作る糧ができると思います。
左手からシティの田中さん、栗本さん、2021年日本大会最優秀賞受賞者株式会社エコロギー葦苅さん、UNDP天野さん
:UNDP提供
〈 編集後記 〉
強い想いを持ちながら大きなビジョンを描き、そこに向かって冷静に現実に向き合い、戦略・戦術を考え抜く栗本さんの強さをひしひしと感じる時間でした。加えて、英語での発信の重要性も実感した時間となりました。今後のLiquitousの活躍が楽しみでなりません。
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◇Youth Co:Labソーシャル・イノベーション・チャレンジ2022の概要はこちらから
◇応募締切:2022年9月26日(月)正午
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