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「NPO=ボランティア」ではない!NPO法人クロスフィールズにみる「事業収入型NPO」の事業モデル

2014.03.13 

「NPO」という言葉に対して、あなたはどのようなイメージを持っているだろうか。

NPO(NonProfit Organization)とは「非営利活動組織」のことで、その字面から、サービスの対価を受け取るいわゆる「ビジネス」とは一線を画したものであり、「ボランティア」に近いものという印象を抱く人は多いだろう。

しかし一部では、もはやその考え方は通用しなくなってきている。 社会課題の解決を組織第一の使命としながらも、助成金等に依存することなく、一般的な営利企業と同様にサービスの提供による事業収入で組織運営を行っているNPOが存在する。

その一つが今回とりあげるNPO法人クロスフィールズだ。クロスフィールズは、その収入の大半が事業収入により占められており、いわば「事業収入型」のNPOと呼ぶことができる。

「NPOで働くことに関心があるけれども、その収益の実態がどうなっているのか不安」そんなあなたに向けて、NPOに対するイメージを再考する機会として、「事業収入型のNPO」を紹介しよう。 クロスフィールズ留職プログラム写真

新興国のNGOではたらく「留職」の様子(写真:クロスフィールズWEBサイト)

「事業収入型NPO」NPO法人クロスフィールズ

NPO法人クロスフィールズは、企業を相手に「留職」というサービスを提供しているNPOだ。

「留職」とは、企業で働く人材が新興国のNPO等へと赴任し、一定期間、本業で培ったスキルを活かして現地の人々とともに社会課題の解決に挑むプログラムのことで、2013年11月時点で5か国25名の派遣実績がある。

事業モデルはシンプルで、留職プログラムを提供するクロスフィールズに対し、自社の社員を派遣する企業が対価を支払うようになっている。 派遣企業にとっては、人材の育成や組織の活性化というメリットがあり、クロスフィールズは、留職プログラムを経験した個人や組織の変化を通じて目指すべき社会の実現を成し遂げていく。

収益をあげながらも、組織として目指すものは「理想の社会の実現」、そんな「事業型NPO」の姿が垣間見える。 そんなクロスフィールズの驚くべき点は、2012年度の収入のうち9割超が事業による収入だということだ。 クロスフィールズ事業収入内訳

クロスフィールズ「2012年度事業報告」を元に作成(単位:百万円)

2012年度のクロスフィールズの収入の合計は、約4,200万円。そのうち事業収入は約4,000万円で、なんと全収入の約94%を占めている。

一方で、会費・寄付に助成を加えても、約200万円と、全体のわずか5%に過ぎない。 このように、社会課題の解決を理念に掲げるNPOであっても、必ずしも助成金や寄付を財源としているわけではない。社会のニーズに沿った対価を生み出すことのできるサービスを提供し、事業収入による組織運営を成り立たせることは十分に可能なのだ。

NPO全体としての事業収入は55.3%

クロスフィールズでは事業収入が全体の9割超を占めることを確認したが、NPO全体で見ればその割合は55.3%にとどまっている。(2013年度) 特定非営利活動事業の総収入金額

出典:内閣府WEBサイト「特定非営利活動事業の総収入金額

この数値が高いのか、低いのかの判断は難しいところだ。だが、事業収入が9割を超えるNPOがある一方で、同じ自主財源でも、会費・寄付で運営されるNPOも存在する。

たとえば、児童買春問題の解決に挑む「NPO法人かものはしプロジェクト」は、2012年度の総収入のうち、事業収入が占める割合は16.8%である。かものはしプロジェクトは、事業に共感した第3者からの寄付により事業運営を行っているからだ。

その証拠に、会費・寄付による収入が占める割合は、実に75.2%にのぼる。助成金でも事業収入でもなく、寄付をプロフェッショナルに集めて運営しているNPOもまた存在するのだ。(出典:NPOかものはしプロジェクト「財務・決算情報」)

NPOの事業戦略は「事業収入型」と「会費・寄付型」で大きく異なる

このように、NPO業界全体で見ると、同じ自主財源で組織運営を行っているNPOであっても、「事業収入型」なのか「寄付型」なのかで大きく性質は異なってくる。

それは、サービスの受益者が対価を支払う能力があるか否かで決まってくる問題であり、NPOが社会にインパクトを生みだすための戦略が透けて見えてくる部分でもある。 NPOで働くことに興味をもったら、そのNPOについて、収益構造の内訳を調べてみてはいかがだろうか。その団体の現状や目指している方向性がより一層見えてくるはずだ。

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梅村 尚吾

1992年生まれ、東京大学文学部英語英米文学科3年。学生インターン。大学受験中にマザーハウスのドキュメンタリー番組で「ソーシャルベンチャー」という概念に出会い、その道を志すように。大学1,2年次はアフリカ渡航などを経験。3年次を休学し、認定NPO法人フローレンスで1年間のインターン。ソーシャルセクターにおけるIT技術活用のインパクトの大きさに可能性を感じ、現在キャリアを模索中。生涯スポーツである水泳のため、スポーツジムに通うのが日課。