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LGBTQ+の若者がありたい未来を語れる居場所を!コンソーシアム団体プライドハウス東京

2022.02.22 

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皆さんは、“プライドハウス”という言葉を見聞きしたことはありますか?プライドハウスとは、2010年カナダ・バンクーバーでのオリンピック・パラリンピック以降に始まったLGBTQ+への理解を深めるための活動コンセプト。

 

日本でも、東京大会が決定したことを受けて、「すべての人が、性のあり方によって取り残されることなく、平等に、すこやかに生きられる社会づくりに貢献し、さまざまな分断を超えるための希望と経験を創出します」をミッションに、ユース向けの取り組み含め8つのチームで構成・活動するコンソーシアム型の任意団体「プライドハウス東京」が設立されました。

 

東京2020大会に際しては、35の団体・個人、15の企業、21の大使館がコンソーシアムとして居場所提供や情報発信など様々に活動され、3000名以上の方に利用され、さらに現在でも継続中です。

 

今回は、プライドハウス東京の発起人でもあり代表を務める、特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズの松中 権(まつなか・ごん)氏と、プライドハウス東京内でユースのプロジェクトを進めている任意団体Proud Futures の向坂あかね氏にLGBTQ+のユースの課題やプライドハウス東京でのこれからの取り組みについてお話を聞きました。

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松中 権

特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ代表 / プライドハウス東京代表 / 公益社団法人Marrriage for All Japan 結婚の自由をすべての人に 理事

1976年、金沢市生まれ。一橋大学法学部卒業後、電通に入社。海外研修制度で米国ニューヨークのNPO関連事業に携わった経験をもとに、2010年、NPO法人を仲間たちと設立。2016年、第7回若者力大賞「ユースリーダー賞」受賞。2017年6月末に16年間勤めた電通を退社し、二足のわらじからNPO専任代表に。LGBTQ+と社会をつなぐ場づくりを中心とした活動に加え、全国のLGBTQ+のポートレートをLeslie Keeが撮影する「OUT IN JAPAN」や、2020年を起点としたプロジェクト「プライドハウス東京」等に取り組む。

 

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向坂あかね

2010年からアメリカ合衆国でLGBTQ+のユースへのユースワークやIPVサバイバーへのサポート等を開始。2013年からセラピストとして有色人種のLGBTQ+のユースとLGBTQ+の人を含む家族へのメンタルヘルスのケアを提供。2021年より日本でジェンダーやセクシュアリティとメンタルヘルスに関するユースへのサポートをProud Futures、プライドハウス東京レガシー、早稲田大学GSセンター等で行っている。公認心理師。

 

NPO法人ETIC.(エティック)は2019年度より休眠預金等活用法に基づき、資金分配団体として「子どもの未来のための協働促進助成事業」を推進しています。全国の子どもを支援する団体が、協働による地域の生態系醸成を実践すること目的に、そのモデルとなりうる実行団体に対して資金的・非資金的な支援を実施中です。

>> 助成事業について詳細はこちら

事業開始から2年目を迎え、6つの採択団体(実行団体)およびその連携団体へインタビューし、6回のシリーズで活動の状況を紹介していきます。

 

――プライドハウス東京(以下、PHT)を始めた経緯やその特徴について教えていただけますか。

 

松中 : 実は、スポーツ競技は、男女分かれていたり、男性性の象徴でもあるパワーやスピードを競うものだったり。ジェンダーの偏見やLGBTQ+への差別が根強く残る“ファイナルフロンティア”と言われており、理解が進みづらい分野です。

 

そこで、スポーツの祭典であるオリパラ開催地で期間中に、安心して気軽にLGBTQ+の方が集まれる居場所を運営しつつ情報発信し、市民の関心・理解を高めようという目的で始まったのが、プライドハウスの取り組みです。

 

東京大会でもやってみようと、複数のLGBTQ+に関する団体に声がけをしました。また、日本にはまだLGBTQ+の方々が安心して集える場所が多くないという実情も。

 

2018年、PHTという任意団体を組成し、2019年のラグビーワールドカップを試用期間とし、教育や啓発活動に加えて、情報発信も開始しました。2020年には、東京大会にあわせて期間限定の施設を開設、2021年以降にLGBTQ+の方を含む全ての方が安心して訪れ交流できる、常設のセンターを正式にオープンするのが当初の計画でした。しかし、新型コロナウイルス感染拡大を受け、結果的には、2020年に常設センターを前倒しで立ち上げています。

 

PHTの特徴としては、次の3つがあると思います。

1. コンソーシアム型の運営になっていること。複数のLGBTQ+に関する活動をしている団体、企業、大使館など、それぞれの強みをかけ合わせながら、社会全体にアプローチ。

2. オリンピック・パラリンピックの組織委員会との連携を試み、世界で初めて公認プログラムとなったこと。また、協賛する企業を巻き込みながら、情報発信も実施。

3. 常設の取り組みにしたこと。性のあり方に関わらず誰もが安心して訪問できるセンターは、期間終了後も「プライドハウス東京レガシー」と称して週5日間でオープン。

 

なお、「プライドハウス東京レガシー(以下、レガシー)」は、場所の選定から内装など、PHTのメンバーと話を繰り返しながら自ら作り上げました。そして、約3,000冊のLGBTQ+やジェンダーに関する書籍が収められたコミュニティ・アーカイブなど、利用者や支援者からのサポートや参画をいただきながら、進化し続けています。

 

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橋本聖子会長の訪問・各チーム理事との対話(Photo by Tokyo 2020)

 

LGBTQ+のユースに必要なのは「自分が大事にされる経験」と「自分を信じて生きたい未来を語れる」こと

 

――日本のLGBTQ+のユースへの取り組みを進めたきっかけは何かありますか。また、ユースはどのような課題を抱えているのでしょうか。

 

松中 : 2020年にコロナの影響でステイホーム期間が始まった時、PHTの団体の間で、LGBTQ+のユースが危機的な状況にあるのではという声がでました。実際、1600人強のLGBTQ+ユースに調査したところ、約37%が自分の性のあり方について安心して語ることのできるつながりがなくなった、約73%が同居する家族との関係に悩むとの回答が。

 

ステイホームで、外の居場所を失い、家のなかでも安心できないという問題があることが判明。同様の課題は全てのLGBTQ+の方にも通じるであろうことから、即時の対応を取るべく、交流できる居場所としてレガシーのオープンを急ぎました。

 

向坂 : ユースだけでなく、社会が抱えるLGBTQ+コミュニティに対しての課題(例:偏見、差別など)は、多くのメディアなどを通じて社会的に認識されるようになってきたように思います。例えば、学校や家庭での否定や差別、いじめ、就職活動での差別など。

 

その結果、何か力になりたいと声をかけていただけるようにもなりました。しかし、LGBTQ+のユースへの社会が抱える課題は、顕在化していないものがあります。それは、LGBTQ+のユースが、「どういう未来を描いているか」など、なりたい自分を自由に語れる環境があまり多くないという課題です。

 

LGBTQ+コミュニティへの差別、抑圧が「よくない」と理解され、減っていくことと同時に「ありたい未来」を一緒に作っていくことも重要です。LGBTQ+のユースにとって、どんな未来であってほしいか、もっと声を聞いて取り入れる仕組みがない、そのものが課題だと感じています。

 

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――PHTの具体的な活動について簡単にご紹介いただけますか。特に、ユース向けにはどのような活動がありますか。

 

松中 : PHTでは、いくつかの役割ごとにチーム分けをしながら活動しています。具体的には、共に学ぶ機会を提供するチームが、「教育・多様性発信」「文化・歴史・アーカイブ」で、共にサポートしあう目的のチームが「ウェルネス・サポート」「居場所づくり」です。その他にも、「祝祭・スポーツイベント・ボランティア」「アスリート発信」など、社会的な認識を高めるためのチームがあります。(それぞれのチームの詳細は、こちらのガイドブックをご参照ください)

 

ユースを対象とした取り組みは、主に、教育・多様性発信チームやウェルネスサポートチームが中心となり徐々に広げています。

 

直近のプロジェクトの一つ目は、教育・多様性発信チームが実施している、ユースによるLGBTQ+関連書籍の発行です。なお、発行にはクラウドファンディング(2/28まで)を活用していく予定です。

 

この書籍のプロジェクトは、PHTと「トビタテ!留学JAPAN」の派遣留学生有志のユースメンバーが、LGBTQ+のテーマを取り扱ったコミックを届けたいとの思いから始まったもの。実際に経験したことをベースに、一つのストーリーとして仕上げているところです。(春ごろには書籍化予定)

 

もう一つは、ウェルネスサポートチームが運営しているラップアラウンドサポート(以下、ラップアラウンド)という対面およびオンラインでの相談サポートの取り組み。24歳以下なら誰でも利用できます。目的も、カウンセリング的に使うのでも、雑談するのでも、なんでもよいのが特徴です。

 

LGBTQ+コミュニティのユースや、そうかもしれないと感じるユースが、話したいことを話せる機会になっています。オンラインでも対応しているので、日本全国からアクセスでき、東京以外のユースにもアプローチしています。

 

ラップアラウンドの取り組みを始めて1年。何か変化を感じていますか。

 

向坂 : 改めて「話を聞いてほしい」というニーズがあったことを認識しました。最近では、他団体からも紹介がくることもあり、もっとラップアラウンドへの認知が広がっていってほしいと思います。

 

先日実施した、利用者アンケートによれば、多数が「ラップアラウンド・サポートでは、自分がどうしたい・どうなりたいかが大切にされていた/されていると感じる」との回答を得ました。

 

ラップアラウンドでは、ユース本人が誰かに大事にされる経験を得ることを目指していたので、うれしいことです。反面、「自分の力を信じられる(自信がついたか)」という問いでは、まだまだの結果でした。「話をする機会」が、ユースの方にとって自分の力を信じることができるようになっていくための場所になるよう改善していきたいですね。

未完成だからよい。参加しながら、作り上げることで、本当の「自分」の居場所になる

 

――レガシーという居場所はLGBTQ+のユースにとってどのような場所でしょうか。

 

向坂 : 私がレガシーを運営する立場として、気を付けていることは、 “不要なジェンダーわけ”をしないことです。

 

例えば、呼称に「ちゃん・くん」の呼び分けをしないとか、彼・彼女という呼び方をしないとか、「さっき来た男の人」のように勝手な思い込みによるジェンダー言論をさけるなど。誰にとってもインクルーシブな場所になるように心がけています。

 

また、レガシーは、オープン当初は、おしゃれなカフェのような雰囲気もあり、来館する人にとっては、少しハードルが高いように感じられたそう。そこで、時に音楽があったりなかったり、壁の装飾をしたり、プライドフラッグを貼るなど、スタッフで色々な試行錯誤をしました。そして、今の形になりました。確かに、見る人によっては、若干雑然としているのかもしれません。しかし、利用者たちからは、洗練されているが行き過ぎずほどよく雑然としていると好評です。

 

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いわゆる「居場所」というのは、ただ集まる場所ということだけではありません。つらいと言えばつらい、うれしいねと言えばうれしいねと、自然な反応が返ってくる、本質的なコミュニティ機能があるところだと思っています。

 

レガシーも、ふらっと立ち寄ったときに、顔色で今日の様子を察してもらえたり、何も話さなくても否定されなかったりと、安心感を得られる場所にしていきたい。そして、レガシーだけでなく、ラップアラウンド のようなオンラインの場所につながれば受け取ってもらえると感じてもらいたいです。

 

――レガシーがユースにとっての安心できる場所になりつつあるようですね。他にも新しいユースの取り組みを始めたそうですが。

 

向坂 : 今年からユースピアリーダーシップ・プログラムという取り組みを始めています。ユースが主体的にユース向けの取り組みを企画し、進めるという試みです。

 

具体的には、ユースピアリーダーがいて、交流会の準備から運営までを担当したり、SNSでのコンテンツ作成をしたり。特に、交流会では、ユースの参加者が円座になって、ユースピアリーダーの司会のもと話をします。リーダーが、ピアの立場を踏まえ、部分的に司会進行をしています。参加者にとっても話しやすい雰囲気になっており、休憩時間も盛り上がるほどです。

 

ユースピアリーダーを務めている方たちも、「たくさんの人と関われ楽しい」「もっとピアリーダーとしてチャレンジしたい」「学ぶことがおおい」など、ポジティブな意見を寄せてくださっています。いずれは、大人のサポートを最小限にして「ユースの活動」になっていければうれしいです。

 

なお、ユースピアリーダーからは、今後レガシーが「何かを踏み出すプラットフォーム」「落ち着ける場所」として期待されているので、PHTも、しっかり受け止め、応えられるようにしていきます!

PHTを世代を超えて残していくために、コンソーシアム型の取り組みとしての進化を続ける

 

――今後のPHTはどのように進化していくのでしょうか?

 

松中 : PHTは、コンソーシアムとしてこれからどのような団体として発展していくべきか、まさにターニングポイントを迎えているところです。コンソーシアムのあり方も、役割分担を明確にしたり、つながりかたを整理したり、持続可能にしていくための協議をしています。

 

これまでは、東京2020オリンピック・パラリンピックにおいて公認プログラムとなり発信を最大化すること、常設型の総合センターを設立することという大きな目標があり、バックキャスト的に頑張ろうと束ねられてきました。しかし、これからは持続可能に続けるために何が必要か、ひとりひとりが考えて、共有していく必要があると思います。

 

そして、最近では、ユース向けの活動が活発に動きつつあるので、PHTのほかのメンバーも「次世代」というテーマをより意識を強めていると思います。PHTの取り組みを次世代に残したいという気持ちが、湧いてきているのではないでしょうか。

 

――最後にひとことお願いします。

 

向坂 : 全国でユースサポートをしている団体の中で、気になるユースがいれば、ぜひレガシーやラップアラウンドを紹介してもらえるとうれしいです。紹介してもらった後も、サポートをしっかりしているので安心してもらいたい。ラップアラウンドであれば、相談内容に応じて別の団体へつなげますので「しっぱなし」にはなりません。なお、日英の両言語での対応ができるほか、筆談にも対応しています。

 

松中 : PHTは、2018年からの黎明期のフェーズから、現在は、安定的に継続していくフェーズにまで成長しました。これまでのPHTの活動の全ては、ひとつの団体では負担が大きすぎて決して実現できなかったでしょう。しかし、コンソーシアムという形で「みんながいる」と思えば、できる力が湧いてきました。

 

確かに、コンソーシアムには複数の団体があるので、目指す未来は同じでも、選ぶ道が違うことも。大変なことも時にありますが、一方で対話する機会が増え、相手を深く理解する機会にもなりました。

 

これからも、ユースを含むLGBTQ+の方々のためにコンソーシアム団体として様々な取り組みを残していくことが重要と感じています。そして、コンソーシアムとしての成長を続け、様々な団体との連携を続けていくことで、社会のLGBTQ+の理解を深め、ユースが未来を自由に語れる社会を実現したいと思います。

 

<ユースからの直接・ユース支援団体等からの紹介問い合わせ先>

LGBTQ+の子ども・ユースのための、無料相談支援プログラム

『ラップアラウンド・サポート』

プログラム内容・問い合わせ先:https://pridehouse.jp/legacy/event/97/

 

エティックコメント:

本インタビューを通して、私もPHTの仲間としてご一緒した社会とPHTの1年8か月の変容を思い出し、感慨深いです。レガシーのペンキ塗りからオープニングイベント参加、基盤整備や事務局採用のお手伝い、理事会参加と理事10名ほどへのヒアリング、PHTのこれまでとこれからを取り扱った2日間のリトリートの企画・ファシリ等色々ご一緒しました。

 

PHTに関わるNPO/個人・企業・大使館等の方々が、いち「わたし」としても想いをのせて協働し取り組んでいる様子は、オリパラを契機としつつ今後のより広く深い社会変容と、多層的な生態系醸成の可能性を感じさせます。

 

より持続的・発展的なPHTに向けて、私も自分事としてご一緒できることを楽しみにしつつ、LGBTQ+ユースをとりまく状況や本記事でお2人が述べたことは、全国のユース支援主体も学ぶと同時に連携可能性を模索できたらと願っています。(佐藤淳)

 

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※2022年2月28日(月)まで

 

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>>  子どもの未来に向けたコレクティブインパクトの実践

 

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この記事を書いたユーザー
望月愛子

望月愛子

フリーライター。 アラフォーでフリーランスライター&オンラインコンサルに転身。夫のアジア駐在に同行、出産、海外育児を経験し7年のブランクを経るも、滞在中の活動経験から帰国後はスタートアップや小規模企業向けにライティングコンテンツや企画支援サポートを提供中。ライティングでは相手の本音を引き出すインタビューを得意とする。学生時代から現在に至るまでアジア地域で生活するという貴重な機会に恵まれる。将来、日本とアジアをつなぐ活動を実現するのが目標。 タマサート大学短期留学、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了。

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