「がん患者さんと支える人たちが自分の力を取り戻す場maggie’s centreを東京に作りたい!」絶望の淵から生還した元がん患者の共同代表と6名の友人が語るmaggie’s tokyo project実現への熱い思い
2014.10.15
「がん患者さんと支える人たちが自分の力を取り戻す場maggie’s centreを東京に作りたい!」とmaggie’s tokyo projectを始めた鈴木美穂さんと鈴木さんの思いに共感した6名のご友人にお話を伺いました。
鈴木さんは24歳の時に乳がんを宣告されましたが、手術、抗がん剤、放射線、ホルモン療法、分子標的治療など様々な治療を受け、幸いにも絶望の淵から生還されました。
「暗闇の中で社会との接点を取り戻すことに苦労している、あの頃の自分のような方々をサポートできないだろうか。」と考えていた鈴木さんは、2014年3 月にmaggie’s centreと運命的な出会いを果たします。「これこそが、自分が闘病中に一番欲しかったものだ!」と直感的に感じ、maggie’s centreを東京につくるために動き出しました。
maggie’s centreとは、英国発の、がん患者さんと支える人たちが自分の力を取り戻す場のことです。 鈴木さんの思いに共感した6名のご友人が、それぞれの職業上のスキル・経験・人脈をフルに活用してサポートしています。6名のご友人は、島野真希さん、青山加奈さん、金そよんさん、齊藤麻衣さん、山本亜紀子さん、阪口祥代さんです。
クラウドファンディングに挑戦中!
小川:クラウドファンディングに挑戦中とお聞きしました。
鈴木:はい、maggie’s tokyo projectのキックオフイベントを開催した2014年9月23日に、READY FOR?でクラウドファンディングを開始しました。 2014年5月にmaggie’s tokyo projectを立ち上げて以来、多くの医療関係者やがん経験者の方々から待望の声と共に沢山の励ましとご寄付を頂き、湾岸エリアにmaggie’s centre建築用の土地が内定するまでに至りました。
2015年初夏の着工を目指して活動をしていますが、総額で約3,500万円必要となる建築費がまだまだ不足しています。今回、maggie’s centreの内装費として700万円を集めるためにクラウドファンディングに挑戦することにしました。
小川:700万円とは、かなりチャレンジングな目標を設定されましたね。
鈴木:maggie’s centreでは、建築と景観が一体的な環境をつくり、患者の不安を軽減するという考え方を大切にしていて、maggie’s centreの建築概要に沿った高いクオリティの内装を実現する必要があるのです。その高いクオリティを実現するために、700万円という目標金額を設定しています。
小川:なるほど、納得しました。ところで、資金調達には色々な方法があると思うのですが、今回、クラウドファンディングに挑戦しようと思った理由について、山本さんからお話頂けますか?
山本:はい、私たちがクラウドファンディングという方法で資金調達をしようと思った理由は大きく3つあります。1つは、支援者の方々と直接コミュニケーションをしながら、支援金を募ることができること。それから、インターネットの拡散力を活用して、今までmaggie’s tokyo projectの事を知らなかった方々にも情報を届けることができること。
そしてもう1つは、支援金に対するお礼のギフトとしてmaggie’s tokyo projectへの寄付付き商品の開発ができることでした。
小川:お礼のギフトについて、もっと詳しくお聞きしたいです。
山本:まず、お礼のギフトのコンセプトを「木々と木漏れ日」に決めました。maggie’s centreの建築や内装は、無垢材を沢山使った気持ちの良い空間が特徴です。maggie’s centreを、強い陽射しや風雨から大切な人を守ってくれる木々、そして木の葉が作る木漏れ日にたとえて、そこからアイディアを膨らませたオリジナルギフトをご用意しています。
また、モノではない体験型のギフトとしては、共同代表の2人が購入者の方から直接「maggie’s centreについての想い」 を聴くお食事会などもあります。60日間で”ALL or NOTHING”のチャレンジなので11月22日(土)までに700万円が集まらなければ、このプロジェクトは無効となってしまいます。ぜひ一度サイト(READY FOR? 「がん患者が自分の力を取り戻すための場マギーズセンターを東京に」)を訪問し、共感して頂けたら参加やシェアにご協力頂けると嬉しいです。
原点は乳がんの闘病経験
小川:では、共同代表の鈴木さんにあらためてお伺い致します。maggie’s tokyo projectとは、いったいどういったプロジェクトなのでしょうか?
鈴木:英国発の、がん患者さんと支える人たちが自分の力を取り戻す場maggie’s centreを東京につくるプロジェクトです。 maggie’s centreとは、がん患者さんや家族、医療者などがんに関わる人たちが、不安で孤独な時にも安心して訪れることができ、また、明るく癒やされる空間でくつろぎながら病気や治療について気兼ねなく話すことができる、自分らしさや病気に向き合う力を取り戻せる場のことです。
いつでも予約なく訪れることができ、不安をやわらげるカウンセリングや栄養、運動の指導や専門的な相談が受けられます。また、お茶を飲んだり、本を読んだりと自分の好きなように過ごしていてもいい、第2の我が家のような場でもあります。 英国に15カ所、香港に1カ所あり、そのどれもが有名建築家の設計による癒やされる空間で、全て寄付金で運営されているのが特徴です。
小川:素晴らしいプロジェクトですね。では、そもそも、なぜmaggie’s tokyo projectを始めようと思われたのですか?
鈴木:全ての原点となっているのは、乳がんの闘病経験です。私は2008年5月、24歳の時に乳がんを宣告されました。宣告された時は、目の前が突然真っ暗になり、手術、抗がん剤、放射線、ホルモン療法、分子標的治療など、治療のフルコースを受ける闘病期間の辛さと苦しさで、その先の未来が想像できずに生きることを諦めそうになったことが何度もありました。
絶望の淵からなんとか這い上がった後、「今、暗闇の中で社会との接点を取り戻すことに苦労しているあの頃の自分のような方々をサポートできないだろうか」という思いを持つようになり、仲間を探し、若くしてがんになった人を応援する団体「STAND UP!!」、そして闘病中でも安心して参加できるヨガなどのワークショップを運営する「Cue!」を立ち上げて活動を始めました。
「この仲間たちや、今持っている情報に一番苦しいときに出会うことができていれば、あんなにもがき苦しむことはなかったかもしれない。」
安心して相談できる相手や同じ経験をした仲間と出会える場の必要性をますます強く感じるようになっていきました。 仕事をしながらプロボノでそうした活動を続けてきた中、2014年3月に患者団体の国際会議に参加する機会を得て、maggie’s centreと出会いました。「これこそが、自分が闘病中に一番欲しかったものだ!」と直感的に感じ、maggie’s centreを東京につくるために動き出したのです。
写真:闘病中の鈴木美穂さん
小川:乳がんの闘病経験が原点となっているのですね。 今、仕事をしながらプロボノで活動を始められたと言われましたが、お仕事は何をなさっているのですか?
鈴木:テレビ局で報道記者をしています。
小川:報道記者としての経験やスキルが、maggie’s tokyo projectにどのように活かされていると思われますか?
鈴木:報道記者としての経験全てがmaggie’s tokyo projectに役立っていると思います。取材をし、原稿を書き、時にはリポートし、編集し、という表現して伝えるスキル全般は、maggie’s tokyo projectを知ってもらうための文章を書いたり、講演をしたり、VTRを制作したりするのに直接役立っていると思います。
また、本業で築いてきた知識や人脈も、このプロジェクトを進める上でのかけがえのない宝物です。 そもそも、maggie’s centreについて初めて調べ、「maggie’s centreを日本に」と活動してきた共同代表の秋山正子さんの存在を知った時にすぐに彼女を訪ねたところからこのプロジェクトは始まっているのですが、それは本業の突撃取材の延長線上でした(笑)。
小川:なるほど。報道記者としてのスキルや経験が十分に活かされていると感じます。では、鈴木さんがmaggie’s tokyo projectを通じて実現したいことは何でしょうか?
鈴木:がんになっても自分らしく生きられる社会、がんと生きる人にとって温かく優しい社会を実現するための拠点をつくりたいです。
国立がんセンターの研究で、がんと診断されてから1年間の自殺率は一般の20倍以上にもなるというデータがあります。東京につくるmaggie’s centreでは、がんを告知されて絶望の淵にいる患者さんの救える命と心を救っていきたいです。
また、がん患者さんや支える人たちのためにはもちろん、自分はがんとは関係ないと思っている段階の人たちにも、建築やアート、関わっているメンバーなどのがんとは別の視点からも関心を持ってもらえるオシャレでかっこいいプロジェクトに育てることで、多くの人たちに参加してもらい、
知らず知らずのうちにがんを身近に、自分事に感じるようになり正しい知識もつく、そんなプロジェクトを目指しています。 また、寄付でのセンター建築、運営を実現し、日本でも寄付で社会課題を解決していけるモデルになれたらと思っています。
写真:鈴木美穂さん
書道家としてmaggie’s tokyo projectのプログラムやイベントの企画・運営に関わる
小川:では、ここからは、鈴木さんの思いに共感してサポートされているご友人の皆様にお話を伺っていきます。まずは、10年前からのご友人の島野さんから。鈴木さんとの出会いについてお話頂けますか?
島野:美穂とは約10年前に、あるスクールで出会って以来の心友です。国道4号線を青森県の県庁前から東京の日本橋まで、仲間7人と1週間かけて駅伝したり、ママチャリで日本全都道府県を民泊しながら周る旅をしたり、約10ヶ月ルームシェアをしたりと、家族のように濃く楽しい時間を共に過ごしてきました。また乳がん宣告当日から抗がん剤治療を経て現在に至るまで、壮絶な闘病生活を近くで見てきた友人の1人でもあります。
小川:ご友人が乳がんの宣告を受けたと知った時、どのように感じられましたか?
島野:当初は、家族のように大事な心友が病魔と闘っているのに、美穂とどう接するべきなのか、なんと言葉をかけていいのかわからない、モヤモヤ感のようなものがありました。学生時代から仲の良かった友達とビデオレターやアルバムを送って励ます(励ますことがいいかもわからず)ことくらいしかできなかったことが、記憶に残っています。
小川:では、鈴木さんを見守ってきた島野さんが、maggie’s tokyo projectへ参加するきっかけは何だったのでしょうか?
島野:かねてから美穂が目指すもの“闘病中に欲しかった、がんになっても安心して参加できるヨガクラスや、カフェのように気軽に来られる居場所を作りたい”を聞いていて、IEEPOという患者代表の国際会議から帰国後に”Cancer gift”の話や、がん経験者に”Congratulations!”と声をかける文化があると聞きとても感動しました。
ちょうどその頃、私自身も書道家として本格的に始動しようと考えており、何かできることがあるかも、と彼女と話していたら「会わせたい友達がいる!」と招集され、それから「Cue!」の立ち上げ、maggie’s tokyo projectと現在に至ります。 そういえば、2005年夏に奥多摩のキャンプ場で「将来、それぞれがスキルを身につけて一緒に会社でもつくれたらいいよね〜」と美穂と語ったことがあるのですが、今、それが叶って嬉しく思います。
小川:島野さんは書道家としてどのような活動をさているのですか?
島野:書道家・カリグラファーとして、テレビ番組の題字や店舗ロゴの揮毫の他、日本文化に興味のある方や字が上手になりたい方たちに、老若男女問わず書を楽しむワークショップを開催しています。
小川:では、書道家としてどのようにmaggie’s tokyo projectに関わっていらっしゃるのですか?
島野:プログラムの1つとして、書道クラスの講師をしたり、お寺で行うヨガ&写経の会などのイベント企画・運営をしたりしています。 書道のように、楽しく何かに没頭できる時間によって、一時的でも自分が闘病中だということを忘れられるようなプログラムの他、癒しや心が豊かになるもの、また仲間と経験をシェアできるようなもの、そして健康に関わるプログラムなどを、今後展開していきたいと思っています。
小川:maggie’s tokyo projectに参加して、ご自身に変化はありましたか?
島野:まずは私自身のがんに対するイメージが変わりました。仮に今、私自身ががんになったとしても以前のような「がん=死」という恐怖でしかないイメージは抱かない気がします。 それは知識を得たこともそうですが、maggie’s centreのような場があることを知り、私自身がそれを必要だと思ってメンバーとつくろうとしている安心感からでしょうか。「がんとともに生きやすい社会にこのメンバーとなら変えていける!」という自信と確信が日増しに強くなっています。
小川:素晴らしいですね。maggie’s tokyo projectに参加されて、率直な感想としては如何ですか?
島野:maggie’s centreのような場を必要だと共感・応援してくださる方の多さに驚くのと同時に、プロジェクトに携われる嬉しさも感じています。そして私たちが発信することで、多方面から本当に素敵な方々が必要なタイミングで力を貸してくださり、その一人一人の力が強大なものになっていると感じます。 がんに対する免疫も知識もない中、そんなことをしてきましたが、maggie’s centreという場があれば、本人はもちろん、私のような支える友人にもきっと安心できるような場所であると思うのです。
美穂と私とでは、感じた悩みや辛さや苦しみのレベルは違うと思いますが、美穂が闘病中に欲しかったものは、今闘病中の人、これから闘病する人、またそれを支える人たちが本当に望んでいることだと思います。
写真:島野真希さん
maggie’s tokyo projectで必要となる広大な土地の確保及び建物建築をコーディネート
小川:では、続いて青山さんにお話を伺います。鈴木さんとは大学1年生の頃からのご友人だとお聞きしています。青山さんはどのようなきっかけでmaggie’s tokyo projectに関わるようになったのですか?
青山:「かな、maggie’s centreって知ってる?」と、2014年3月末に美穂からメールをもらったのがきっかけです。「maggie’s centreを日本に作りたい」という壮大な想いとmaggie’s centre のURLが一緒に掲載されていて、サイトをクリックすると美しい建築と明るくて穏やかな空間が広がっていました。
「これががん患者さんや支える人たちのための場なんだ」
小さい頃から、空間の持つ力に魅せられてきた私にとって、とても嬉しい衝撃を受けた瞬間でした。何より、連絡をくれたのが美穂だったこと、それが関わる事になった大きな理由です。その翌日に押し掛けるように彼女に会って、実現に向けて夢を語り合い、今日に至ります。
小川: 鈴木さんのメールから始まったわけですね。では、青山さんはmaggie’s tokyo projectのどういった点に魅力を感じたのでしょうか?
青山:maggie’s centreの美しさ、そしてその空間の持つ圧倒的な明るさに魅了されました。街に開かれた公園の様な美術館を建設するとしたら、きっとこんな感じになるのかなと思いました。 本業が不動産デベロッパーであることから、「建築」「空間」「地域」「コミュニティ」について考える機会が多かった私にとって、その全ての要素が揃った上で、誰かの心に寄り添うことができるのだとしたら、とても素敵だなと感じました。
小川:お仕事は不動産デベロッパーをされているのですね。maggie’s tokyo projectでは、どういった役割を担われていますか?
青山:はい、広告代理店から転職して、現在は不動産デベロッパーです。maggie’s tokyo projectでは、現職の経験を活かして、プロジェクトで必要となる土地の確保及び建物建築のための交渉調整業務をしています。 また、ホームページとパンフレットの制作業務を、信頼できる付き合いのある会社に依頼しているのですが、前職広告代理店での経験も活かされている様に思います。
小川:maggie’s tokyo projectにとって非常に重要な役割を担っていらっしゃいますね。ある意味、根幹に関わることだと思います。 一方で、本業を持ちながら、プロボノでmaggie’s tokyo projectに関わることは、かなり大変なことではないかと推測するのですが。
青山:「本当にコミットメント、しっかりできるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるのではないかと思います。実際、本業を持ちながらプロジェクトに関わることは大変でした。それでも、業界の異なるメンバーがそれぞれのスキルや経験を提供しあう事で発揮されるパワーの大きさに、日々驚きと喜びを感じています。優しく女性らしくありながら芯の強い魅力的なメンバーと一緒に、みんなで叶えたいと思える夢ができて毎日とても楽しいです。
小川:maggie’s tokyo projectに関わって、率直な感想をお聞かせください。
青山:実は、美穂から初めてメールが来た日は、尊敬していた上司が異動した翌日でした。とても寂しい気分で出社したその日のデスクトップには、「青山へ、世界一楽しい仕事をしろよ!」と手書きメモが付箋に殴り書きされて貼り付けられていて、「新しい事業に挑戦する心構えや実現していく突破力をずっと忘れるなよ」と言われた日のことを思い出していました。その上司の想いも後押しして、今ここまで真っ直ぐ信じて突き進んで来られたのかもしれないなと感じています。
このプロジェクトの実現が、プロジェクトのメンバーだけでなく患者さんや支えるご家族や友人の夢を叶え、社会を変えることになると信じています。そして、上司に実現の報告をしに行ける日が来たら、嬉しいです。
写真:青山加奈さん
maggie’s tokyo projectのギフトの開発やオリジナル商品の開発に携わる
小川:金さんは、大学時代に鈴木さんと出会われたのですよね。
金:はい、ある会社のインターンシップで出会いました。美穂は、その頃から、ずば抜けた行動力があって、笑顔がパーッと明るくて、周りを巻き込むチカラがありました。就職後は、お互い近い業界にいながらも、なかなか連絡を取りあえず、美穂の闘病のことは、久しぶりに再会した時に知りました。 彼女だからこそ、乗り越えられたのだろうな、と思うと同時に、「大変だったね」「えらかったね」と声をかけることしかできない自分に、心の中では、もやもやしていたことを覚えています。
小川:近い業界といいますと。
金:広告代理店でコピーライターの仕事をしています。普段は、広告キャンペーンの言葉周りを主に担当していますが、その他に、商品開発や売り場づくり、などにも関わっています。 maggie’s tokyo projectでは、クラウドファンディングを通して寄付してくださった方に対しての ギフトの開発やオリジナル商品の開発、などを担当しています。 小川:金さんは、maggie’s tokyo projectのどういう点に共感して活動を続けているのですか?
金:「自分らしさを取り戻す空間」というコンセプトに、心から共感しています。 闘病中の本人だけでなく、彼らの家族や友人にとっても、悩んでいること、不安に思っていること、そのすべてを相談できる場所があることで、ひとりの人として、しっかり歩み出すことができると信じています。
小川:maggie’s tokyo projectに関わられて如何ですか?何かご自身に、変化はありましたか?
金:そうですね、誰かのためではなく、「自分のため」の活動であると思うようになりました。自分、あるいは、家族や友人ががんになった時に、「まずは、maggie’s centreに行こう!」と、迷わず駆け込める空間を作りたいと思っています。 maggie’s tokyo projectメンバー個々人の想いは、さまざまだとは思いますが、それぞれが、この活動を、「自分のこと」として捉えている感じがします。情熱と時間を惜しまず注ぐ姿を見ていると、「私もがんばらなくちゃ!」とミーティングの度に気合いが入ります。
海外では、がんという特別な経験をした人たちへ、「おめでとう!」と声をかけるそうです。「その特別な経験があったからこそ、いまのあなたがいるんだよ!」と、大変な経験をした人たちへのエールを込めた「おめでとう!」。日本ではなかなか根付きにくい文化かもしれないけれども、こういう活動を立ち上げて、ひとりでも多くの方に知ってもらい、参加してもらうことがとても大切だなと思っています。
小川:それは良い話ですね。ひとりでも多くの方に知ってもらいたいと、わたしも思います。 金さん、ありがとうございました。
写真:金そよんさん
プロジェクト・マネージャーとしてmaggie’s tokyo projectに関わる
小川:齊藤さんは4年前からのご友人で、現在、一緒に暮らしていらっしゃるとか。
齊藤:はい、4年前に共通の友人を通して知り合いました。当時、美穂はまだ抗がん剤の副作用の短い髪を隠すためにかつらを被っていたのですが、出会った時はかつらのことにも大病をした後だと言うことも感じないくらい元気な子だなという印象でした。 次に会った時は、会って2回目にも関わらず、がんのことを知らされ、そんな大切なことを話してくれることに戸惑いながらも深く感銘をうけたことを覚えています。3年前からはルームシェアをして、一緒に住んでいます。
小川:3年前から一緒に住んでいらっしゃるということは、鈴木さんのmaggie’s tokyo projectへの思いを身近で感じられていたわけですね。
齊藤:ルームシェアをはじめた当初から、がんになった人たちが集える場のようなものを作りたい、という美穂の思いを聞き、どうしたら実現できるか家のリビングで幾度か議論をしました。美穂から、がんになった人に”Congratulations”と言う文化があること、maggie’s centreという場があることを知った時も、美穂の熱い思いを真っ先に聞いていましたので、自然な流れでプロジェクトに入っていくことができました。立ち上げから参加しています。
小川:齊藤さんは、maggie’s centreやmaggie’s tokyo projectのどういう点に惹かれていますか?
齊藤:居心地が良くデザイン的にも素晴らしい建築や人の温かさや繋がりなど、前向きなエネルギーを最大限活用し、支援だけではなく患者本人が自分の力を取り戻すことを目指している点が、最大の魅力であり共感している点です。 メンバー全員に本業があり、医療のプロフェッショナルだけではなく様々な分野に渡っていることと、幅広い年齢のメンバーで構成されていることは、このプロジェクトの特徴であり強みでもあると思っています。
小川:確かに、それは大きな強みですよね。齊藤さんの本業を教えてください。
齊藤:広告代理店の営業としてアカウントサービスやプロジェクト・マネージメントを行っています。maggie’s tokyo projectでは主にIT系の整備や配信、会議の進行やまとめ、企画書の作成やパーティーの進行など、本業で通常使用しているツールやプロジェクト進行のノウハウを活かしています。
小川:maggie’s tokyo projectに参画して、ご自身に変化はありましたか?
齊藤:ふと感じたのは、少し変かもしれませんが、がんになることがそんなに怖くない、ということでした。それは、例えば自分や身近な人ががんになった時に、すぐに相談できるmaggie’s tokyo projectのメンバーの顔が浮かび、逃げ込んだ時に受け止めてくれると思える場所があるからだと思います。 このプロジェクトは、人のためになるのと同時に自分のためでもあるのだと思っています。誰かのための支援だけではなく自分事化されたことは、プロジェクトを進めていく上で大きな力になっていると感じています。
小川:なるほど。他人事ではなく自分事になっているのが、ポイントなのでしょうね。良く理解出来ます。あらためて、maggie’s tokyo projectに参加してみて、今のお気持ちを教えてください。
齊藤:社会的な事業はいかに自分事として多くの人に捉えてもらえるか、そして目指す社会の姿を共有できるかが重要になってくると思いますが、原体験に基づく強い思いは、必要な時に必要な人や情報などに巡りあわせてくれる力があるのだと幾度も思うことがありました。 また、考えだすと壁が沢山あり、 やらない理由を挙げることは簡単にできるけれども、それでも行動をしてみると道が開けていくし、1人1人の力が合わさると大きなものが動いていくのだと感じています。
写真:齊藤麻衣さん
経営者としての経験を活かしmaggie’s tokyo projectの法人化・事務局業務を担当
小川:では、続いて、山本さんにお話を伺います。鈴木さんとの出会いからお話頂けますか?
山本:2013年の春に、共通の知人の方を通じて美穂さんと出会いました。私は自分でアロマ会社を経営していて、ライフワークとしてヨガを10年程続けているのですが、ある時その方に「ヨガがどれだけ私の人生に役立っているか」について熱弁したことを憶えていてくれたのだと思います。
ちょうど美穂さんがIEEPOという患者代表の国際会議に参加して帰国した頃、「いわゆる患者会ではなく、がんになっても安心して参加できるヨガのクラスや、カフェのように気軽に来られる居場所を作りたい」と動き出していたタイミングで、「一緒にやったら!?」と引き合わせてくれたのです。
すぐに話しが盛り上がり、そこから、がんサバイバーの方向けにヨガや瞑想、書道などのワークショップやチャリティイベントを行う「Cue!」を立ち上げ、1年程活動した後、ちょうどまた同じ時期にIEEPOに参加した美穂さんがmaggie’s centreの話をお土産に帰国してきました。そして現在に至ります。
小川:なるほど。そういう出会いがあったのですね。では、鈴木さんと活動を共にしたいと思われたきっかけは何だったのでしょうか。
山本:「欧米では、がんという命に関わる病気になって、命や周りの人々の大切さに気づくことができたことを、がんがくれた贈り物という意味を込めて“Cancer gift”と呼んだり、がんを経験した人に、リスペクトの気持ちを込めて“Congratulations!”と声をかける文化がある。 日本にもその文化を作りたい。」という美穂さんから聞いた話にとても共感したことがきっかけです。そして彼女自信がまさにそのことを体現しながらとても自分らしく生きている姿を見て、なんて素晴らしい事だろうと感動しました。
小川:それは感動しますね。山本さんのお仕事とmaggie’s tokyo projectでの役割について教えて頂けますか?
山本:本業はアロマとハーブを扱う会社を経営しており、ライフワークとして行っているヨガの活動も含め、「健康や心身のケア」と向き合うことが、maggie’s tokyo projectの活動に繋がっているのだと思います。法人や新規事業を立ち上げた経験が、maggie’s tokyoの法人化業務や主に事務局的な業務に役立っていると思います。また、夫が日本ファンドレイジング協会という組織で働いているので、色々と教えてもらいながら寄付を集める窓口の担当もしています。
小川:maggie’s tokyo projectに参画して、考え方が変わったとかありますか?
山本:「幸せ」の捉え方が変わったと思います。何か良い事やHappyな事が起こることだけが人にとっての「幸せ」なのではなく、人生で起こった事とどう向き合っていくかという事が、その人自身の幸せを作っていくのだという事に気づくことができました。そして、自分の今までの経験や仕事、ライフワークを活かして、一緒に自分達が生きたい未来を作っていける仲間を得られたことにとても感謝しています。
小川:それは貴重な気づきですね。非常に参考になります。山本さん、ありがとうございました。
写真:山本亜紀子さん
国会議員秘書としてconnecting dotsの役割と寄付窓口担当を担う
小川:では、最後に阪口さんにお話を伺います。阪口さんにとって鈴木さんはどういう存在ですか?
阪口:美穂さんは私にとって大切な友人でもあり、妹のような放っておけない存在でもあります。ファンの一人と言っていいかも知れません。美穂さんの周りには、年齢性別問わず、いつも前向きで魅力的な方ばかりが集まっている印象があります。
小川:阪口さんがmaggie’s tokyo projectへ参加しようと思ったポイントは何だったのですか?
阪口:わたしは、NPO改正法成立に尽力した国会議員の秘書をしているため、常日頃よりNPO関係者の方と接する方が多く、そこで培った知識、人脈を少しでも役立てたいという思いで参加を決めました。美穂さんのmaggie’s tokyo projectへの熱い思いを聞いているうちに、一緒に夢の実現のお手伝いをしたいと思ったことも大きいです。
小川:NPO改正法成立に尽力した国会議員の秘書をされているのですね。それは心強い。
阪口:はい、自ずとNPO分野について学習する機会が増えましたので、その経験をmaggie’s tokyo project のNPO法人設立に役立てたいです。また、国会議員秘書という仕事柄、大勢の方と接する機会がありますので、いわゆる”connecting dots”の役割が果たせればと思っています。
小川:阪口さんは、他にも重要な役割を担っているとお聞きしました。
阪口:事務局として、イベント運営裏方、名簿管理、寄付受付といった後方支援全般を受け持っています。組織が上手に回る様に尽力したいと考えています。
小川:後方支援というのは本当に大変だと思うのですが、maggie’s tokyo projectのどういう点に共感して活動を続けられているのですか?
阪口:そうですね。国民の3人に1人が向き合っているがんに対して、本人、家族、友人らのために、がんの種類やステージ、治療に関係なく、さまざまな支援を無料で受けられるというコンセプトに共感しています。病に明るく前向きに向き合い、訪れるだけで癒される空間=maggie’s centreが、一日も早く東京にできるように願っていますし、尽力していきたいとも思っています。
小川:maggie’s tokyo projectに参画されて感じるご自分の変化は?
阪口:良い意味で自分の殻が破れました。自分の親しい人が万一がんになった時、私は以前より強く明るく立ち向かえると思います。また、人それぞれの魅力、能力を活かすことの大切さや、1%でも可能性があるのなら、何事にもチャレンジしたいと思うようになりました。恋も仕事も?!(笑)
小川:現時点での率直な感想としては如何ですか?
阪口:「縁」を感じます。年齢もバックグランドも異なる様々な人が、このプロジェクトによって繋がりました。これほどまでに多くの人が、熱く真摯な志で「人に役立ちたい!」と働く姿を見て、とても良い刺激を受けました。今、このタイミングで従事していることは、自分の人生にとって何か意味あるものであると思っています。
写真:阪口祥代さん
6名の友人に対する思い
小川:6名のご友人にお話を伺いました。鈴木さん、どのようにお感じになられますか?
鈴木:大好きな友達と一緒に仕事をするのが、学生時代からの夢でした。それがこのような形で叶って、とても嬉しく思っています。人としても女性としても素敵で、心が温かくて情熱があって、それぞれの分野においてプロフェッショナルで仕事ができて、心から尊敬し信頼できる仲間たちの存在が、私の誇りです。
「闘病中、こんなものが欲しかった」「こんなことをやりたい」そんな思いを話した瞬間に誰かが動き出し、本当にあっという間にどんどん実現していくんです。この仲間たちとだったら、できないことなんてないのではないかと思うくらいです。たくさん支えてもらい、助けてもらい、感謝してもしきれません。 喜びも楽しみも、時には悲しみも悔しい思いも、ずっと共有していきたい一生モノの自慢の仲間たちです。
maggie’s tokyo projectは自分の使命
小川:では、最後に読者の方にメッセージをお願いします。
鈴木:このプロジェクトは、自分の使命だと感じています。はじめは仕事と両立できるか心配でしたが、maggie’s tokyo projectを立ち上げて本当に良かったです。多くの方々に必要とされ、また支えられながら、大好きな仲間たちと共に同じ夢に向かって突き進んでいる今、とても幸せです。毎日が楽しくて楽しくて仕方がなく、生きている喜びをかみしめています。がんと共に生きる人が、自分を取り戻し、幸せを感じられる社会の実現に向けて全力でがんばります。 小川:是非、頑張ってください。わたしも応援しています。 鈴木さん、皆さん、ありがとうございました。
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