宮城県南三陸町で2015年に設立された「南三陸石けん工房」。町内の資源を生かし製造されるカラフルでかわいい石けんは、SNSなどで話題となっています。
震災後に南三陸に移住し、現在は代表取締役として本プロジェクトを推進する厨勝義(くりや・かつよし)さんに話をうかがいました。
南三陸石けん工房・厨勝義さん
―まず、南三陸石けん工房プロジェクトの概要を教えてください。
2015年1月に起ち上がった「南三陸石けん工房」は、アカモクやワカメなどの海藻類や、竹、トウキ、シルクなど地元の資源を生かした手作りのオーガニック石けんの製造販売を行っています。現在は、今年の夏以降に販売を開始すべく、商品開発中です。手作り石けんの体験ワークショップや販売を通して、地域に雇用を生み出すことを目指しています。
―厨さんと南三陸町の関わりのきっかけはなんですか?
震災から2週間後、ボランティアとして初めて南三陸町を訪れました。初めて訪れたときにはただただその光景に途方に暮れるしかなかったのですが、できることを続けていこうと震災から3か月後、移住を決断。その後、地元住民とNPOとのマッチングや、起業支援など、地元の人たちに寄り添いながら活動を行ってきました。
―そうした活動を行ってきたなかで、なぜ起業をしようと思ったのですか?
活動を通して直面した課題が、雇用の創出でした。とくに「若い女性」にとって魅力的な雇用の場が少ないことが、人口流出、高齢化といった地域課題に繋がっている現状に気づかされました。ならば、そうした女性にとって魅力的な職場さえ作ることができれば、若い女性が自然と地域に残ってくれる。そしてそのまま地元で結婚し、家庭をもつことで、少子化の歯止めにもなりえます。
女性中心の会社が地域の中で存在感を高めていくことができれば、彼女たちにとって住みやすい町になっていくのではないか、また、若い世代が増えていくことが、高齢者を支えていくことに繋がるのではないか、と考えました。まさに、地域課題のボトルネックを解消することができると考えたのです。 自然素材を使い、余計なものを極力はぶき、てまひまをかける。 肌もライフスタイルも本来を取り戻す。そんな夢をみながら石けんをつくっています。
―地域において、様々な加工品や工芸品などの起業があるなかで、なぜ“石けん”にしようと考えたのでしょうか?
その理由は二つあります。一つ目は、事業のビジネスとしての天井が高いこと。二つ目は、南三陸という地域で作る強みが存分に生かされる、ということです。
一つ目には、現在、安価な石けんが多く市場に出回る中でも、LUSHやBODY SHOPなどの、香りやデザインの種類が豊富で高単価な商品も広く浸透し、人気を博しています。雇用を生み出すには利益を得なくてはなりません。その可能性が石けんにはあると感じたのです。
二つ目には、南三陸が海も山も近く、その両方の豊かな資源に恵まれていること。これは地方においても多くはありません。地方でのモノ作りは、そこの資源にどうしても依存してしまいます。しかし、海も里も山もある南三陸には、すべての資源があるといっても過言ではないほど。そしてどんな素材とでも無限のコラボの可能性がある石けんこそが、南三陸であることの強みを最大限生かせるのではないか、と考えました。
原材料と石けん。ふのり(左上)、シルク(中央)、干しわかめ(右上)
―実際に作られた石けんへの反応は? 今後の展望はどのように考えていますか?
体験や見学に来られた方は、まず間違いなく「わあ、きれい!」と声をあげてくれます。そして、携帯などで写真を撮っていかれます。何かしら、こころをつかむ要素があるのだと思います。
まずは、仙台や東京などの都市部に住む女性をターゲットに販路の拡大をしていきたいです。また、少量生産も可能なので、個人や企業の細かい要望を聞きながら、オーダーメイドでの製造も行っていくことで、「ここでしか手に入らないこだわりの石けん」として価値を生み出していきたいですね。
まるでお菓子のような石けん
さらに、日本食などに代表されるように、日本文化の価値を海外が買う時代がきています。日本のスキンケア製品も海外で高く評価されています。そうした状況のなかで、この南三陸発のオーガニック石けんも、アジアや欧米への展開を視野に入れています。
南三陸産の石けんが海外で評価されれば、石けんの原材料を提供していただいている方々にもよいご報告ができると思います。 ここで作る石けんで、町内の人が町に残るだけでなく、仙台や東京といった都市部の人がこの石けん工房に就職したいと思ってもらうこと。田舎から人が出ていくのではなく、流入するくらい魅力的な石けんを作っていきたいです。
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