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世界の人口が2080年代に103億人でピークを迎えると予測される今後、課題解決のカギとなるのは?(2024年版)

2024.10.10 

1970年には36億3,200万人だった世界の人口は、2024年までの約50年で倍以上の約82億人まで増加しました。しかし、今年7月11日の「世界人口デー」に国連が発表した『世界人口推計2024年版:結果の概要』では、2080年代半ばには103億人でピークに達し、それ以降、2100年の世界人口規模は10年前の推計と比べて7億人減少するとしています。

 

今回、最新の推計をもとに、特徴的な傾向、注視される世界的な課題について、また、NPO法人ETIC.(エティック)の周辺で起きている関連の動きを参考までにご紹介します。

80%の確率で今世紀中に世界の人口はピークに

10年前に国連が発表した推計では、「世界の人口増加が 21 世紀中に終わる確率は約 30%」でした。しかし、2024年は、「80%の確率で今世紀中に世界の人口がピークに達する」と発表。21世紀中に世界の人口増加がピークを迎える確率は30%から80%へと大きく変化しました。

 

国際連合広報センターのプレスリリースより

 

また、2054年以降に人口がピークに達すると見込まれているのは、インド、インドネシア、ナイジェリア、パキスタン、米国など世界でも人口規模の大きな国々をはじめとする126の国と地域です。

 

こうした国々の人口は2054年までに38%増加すると推測され、アンゴラ、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ニジェール、ソマリアを含む9つの国と地域では、2024年から2054年までの間に倍のスピードで人口が増えると国連では推測しています。

 

さらに、今後、これらの国の人口がどう増加するかが、世界の人口の規模とピークを迎える時期にも影響を与えるとしています。

世界で起きている課題とは?

では、世界の人口が減少傾向にある中、どんな課題解決が必要だとされているのでしょうか。国連では、「全世界での出生率の低下」を挙げています。

 

なかでも人口規模の大きな国々、特に中国での出生率の低下を、世界人口の推計値がピークに達する時期が早くなった最も大きな要因の一つとしています。中国をはじめ、ドイツ、日本、ロシア連邦など、2024年時点で世界人口の28%を占める63の国と地域では、2024年以前にはすでに人口増加がピークに達していたとも示しています。

 

全世界の出生率は、1990年の3.31から、2024年は2.25に減少。つまり、約10年前と比べ、平均して1人減少。中国、イタリア、韓国、スペインを含む世界の約5分の1の国と地域では、女性が生涯に産む子ども数が1.4を下回り、こうした「超低出生」と呼ばれる24ヵ国では、女性1人にあたる出生数が2.1に戻る可能性は極めて低いと考えられているとのこと。

 

一方で、世界の平均寿命が上昇傾向にあり、「2080年までに65歳以上の人口は18歳未満の子ども数を上回る」と推測するなど、出生率の低下と高齢化は、これからますます世界的な課題として向き合わざるを得なくなりそうです。

地方の労働人口、関係人口を増やす取り組み

今回の結果で挙げられている世界的な課題の中で、DRIVE編集長と筆者が注目したいのは2つあります。

 

1つめは、労働人口です。2つめは、生物多様性です。これらは、今後、課題解決の取り組みが国内外でどんな影響を与えていくか、関心を持っていきたいテーマです。

 

まず労働人口について、国連が発表した結果では、日本のように2024年までに人口の規模がほぼピークに達したとされる国、また、2025年から2054年までの間に人口がピークに達すると予測される国の4分の3についてこう伝えています。「若年人口と出生率低下に伴う経済成長加速の時限的な機会がすでに閉ざされている」と。

 

一方で、2054年までに20歳から64歳までの労働人口の割合が増える国や地域も約100あり、出生率が大幅に、かつ持続的に低下することを背景に「人口ボーナス」といわれる一人あたりの成長を促進する機会がもたらされるとしています。しかし、国連では、この機会を拡大・延長するためには、健全な経済成長と社会政策が必要だと課題に挙げています。

 

では、実際、少子化と高齢化が深刻化し、あわせて労働人口の低下が今後の大きな課題となっている日本では、どんな課題解決の取り組みに可能性が見出せるのでしょうか。

 

例えば、日本のローカルと呼ばれる地方では、これまで地域を中心とした人口減少や労働不足に危機感を持った行政、団体、個人らが様々な取り組みを行ってきました。その中には、危機感の高まりとともに仲間や活動拠点を増やし、他地域でもじんわりと広がりを見せている活動もあります。

 

総務省は2014年に地方創生を掲げ、地域おこし協力隊や交付金事業などの取り組みを進めてきました。2022年11月には、人材不足を解消し、地域の新たな担い手を生み出すため、“特定地域づくり事業協同組合制度”をつくり、地方でのマルチワーカーを推進しています。例えば、宮崎県日南市の「ACにちなん事業協同組合」は、農業や宿泊業、飲食業などに人材を派遣しています。(記事はこちら)

 

地方自治体の取り組みとしては、ローカルベンチャー協議会は、2016年に8つの自治体から始まり、地方に新しい経済を生み出すしくみ作りに取り組んできました。

 

担い手育成の場としては、「ローカルベンチャーラボ」を協議会とエティックで立ち上げ、これまでの7期で全国に350名以上のプログラム卒業生がいます。(特集記事はこちら)全国で活動する地域おこし協力隊の起業支援にも活用されています。

 

近年は、大手企業が自社のリソースを活用して、ローカルを舞台に、地域の担い手とともに新しいビジネスを開発する「地域×企業共創ラボ」にも多くの関心が寄せられています。

 

また、日本郵政グループは、気候変動や人口減少などの社会・地域課題を解決することを目的にした「ローカル共創イニシアティブ(以下、LCI)」を2022年4月にスタート。以来、グループ社員を全国の企業・団体に派遣し、全国各地の郵便局のリソースを活かした新規事業づくりを推進しています(関連記事はこちら)。

 

個人が起点となった動きでは、食べ物付きの情報誌「東北食べる通信」を創刊し、2015年に株式会社雨風太陽を設立した代表の高橋博之さんは、都市と地方の間に「関係人口」を生み出すという考え方を世に広げてきました。

 

「関係人口」によって、都市と地方それぞれの課題を解決し、人口減少や働き手不足、さらに地域の活力が失われるなどネガティブな流れを食い止め、地域や社会に前向きな影響をつくるために様々な取り組みを行っています。

 

 

これまで高橋さんは様々な仲間と新しい動きをつくってきました。

 

例えば、日本航空株式会社の仲間とは、2021年2月、「都市と地方をつなぎ、新たな人流を生み出し、日本に生気を吹き込む」をミッションとするコンソーシアム「Japan Vitalization Platform(以下JVP)」を発足し、多様な暮らし方や働き方づくりを加速させています(記事はこちら)。

 

こうした企業・団体・個人らが中心となり、地域と都心をつなぎ、関わる人や働き手を増やす取り組みは今後も地道に広がり、少しずつでも各地や社会に変化を起こしていくことが期待されています。

生物の絶滅傾向を止めて、生物多様性を守っていく

2つめに注目したい生物多様性は、人が健やかに人生を歩むために必要な環境をつくるベースとなるものです。しかし、今年も全国的な猛暑が長く続くなど、明らかに昔とは大きく違う気候変動を実感する日々から、「何とかしなければ」と焦りを感じる人も増えているのではないでしょうか。

 

私たちが生活を営む環境についても、近代化に伴って緑のある場所が貴重な存在となり、自然や虫が当たり前のようにあった景色がもはや「贅沢」といった見方もされるなど、自然が大きく失われているのは周知の通りです。

 

DRIVEの記事でもご紹介しましたが、生物多様性を全体でみると、1970年代から2018年までの間に「生きている地球指数LPI」の指標が69%も減少しているなど、人間が人口を倍以上に増やしている間に、多くの生物が絶滅している現実があります(※)。

(※)参考 : WWFジャパン「生きている地球レポート2022―ネイチャー・ポジティブな社会を構築するために―

 

人々が望む、「自然と人とが調和した未来」に少しでも近づけられるよう、いま、多くの人がリサイクルなど環境に負荷をかけない方法を生活に取り入れています。今後はますます私たち自身がどんな未来を望み、そのために何を考え、どんな行動をしていくのか、一人ひとりの手に委ねられていくでしょう。

 

 

そんな現状にやはり大きな危機感を抱いた地域や企業、団体らが手を組み、生物多様性と自然の回復、また事業を両立させた“再生型事業”に飛び込む若い起業家や学生、研究家たちが存分にチャレンジできるエコシステムをつくる動きが2024年にスタートしています。

 

PLANET KEEPERS地球環境再生の担い手エコシステム形成プロジェクト―」です。

 

このプロジェクトでは、各地の実践者たちが自分たちにとって身近な地域を中心に、本来の豊かな環境を取り戻し、未来へとつなぐ活動を展開しています。多くの人が参画し、活動の輪を広げているこの動向も、今後関心度が高まりそうです。

地域から、一人の手から、小さな活動が束となって前向きな変化を起こしていく

労働人口、生物多様性、それぞれ大規模なテーマですが、自分の頭で考え、手を動かし、人と人とをつなげるのは、やはり人です。最初は小さな活動から始めることも多く、地域に密着した草の根運動のような活動一つひとつが束になって少しずつ輪を大きく広げることも、これまで社会に新たな仕組みを当たり前にしてきた人々を思い返すと不思議ではないはずです。

 

DRIVE編集部では、今後もそんな取り組み一つひとつに注目し、記事としてご紹介していきます。ご関心を持たれた方は、これからどんな活動が発信されるか、また社会にどんな変化を生み出していきそうか、どうぞご注目ください。

 


 

<参考にしたい記事>

>> 特集「自分らしさ」×「ローカル」で、生き方のような仕事をつくる

>> 特集「PLANET KEEPERS 住み続けられる地球を次世代へ」

 

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たかなし まき

愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科を卒業後、企業勤務を経て上京。業界紙記者、海外ガイドブック編集、美容誌編集を経てフリーランスへ。子育て、働く女性をテーマに企画・取材・執筆する中、2011年、東日本大震災後に参画した「東京里帰りプロジェクト」広報チームをきっかけにNPO法人ETIC.の仕事に携わるように。現在はDRIVEキャリア事務局、DRIVE編集部を通して、社会をよりよくするために活動する方々をかげながら応援しつつフリーライターとしても活動中。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。