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「バランス型」の特性を強みに、「変革に挑むリーダーと社会のつなぎ役」になる―むすびえ 花岡洋行さん【DRIVE転職者インタビュー】

2023.08.31 

親を亡くした子どもたちの進学をサポートする民間団体から、「こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会をつくる。」をビジョンに掲げ活動する中間支援組織「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(以下、むすびえ)」に転職した花岡洋行さん。

 

もともと企業で働いていた花岡さんですが、前職の経験から「リーダーがビジョンの実現に向けてアクセルが踏み切れるようバランスをとること」が自分の強みを活かした貢献になると実感したそう。

 

そんな花岡さんが社会に対してどんな願いを持ち、仕事とどう向き合っているのか、これまでを振り返りながら語っていただきました。

 

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花岡洋行さん

 

聞き手 : 野田香織(DRIVEキャリアコーディネーター)

社会をより良くするために、自分が何をすべきか

 

――今回、転職のきっかけとなったことがあれば教えてください。

 

前職は、ソーシャルセクターでも老舗的な存在の団体でした。そこでは約10年働きましたが、私は常に、自分の特性と組織の状況をふまえて、「社会のためには、自分が何をするべきか。どの役割で貢献するのが一番いいのか」と考えてきました。

 

前職を離れる動機として、「一旦やるべきことをやれた」という感覚があり、このまま同じ組織で働くよりも別の組織で働くほうが目指す社会に近づくのではないかと考えた時に、自分の特性を別の組織でも活かしたいと思ったんです。その時、出会ったのがむすびえでした。

 

社会貢献の仕事は、目の前の困っている人を支えることが大事です。ただ、一歩引いて見た時、「根本的な課題解決」を目指すことが、私が理想とする社会をつくるために必要なことだと考えています。

 

――花岡さんが理想とするのはどんな社会ですか?

 

抽象的な言い方になりますが、今よりも笑顔が多い社会であり、2人の娘の父親としては「彼女ら次世代に、自信をもってバトンを渡すことのできる社会」を理想としています。

 

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代表にはアクセル全開で進んでほしいから、本気で支える役を担いたい

 

もう一つ、仕事を選ぶうえで担えると良いと考えている役割は、「リーダーを本気で支える人」です

 

私は、今後、ソーシャルセクターは社会にとってより重要な存在になっていくと考えています。そのなかで、代表の考えに共感をし、「応援したい」と思う人が増えてくるでしょう。代表の強い思いが推進力となり、組織や事業をリードする構図は今後も変わらないと思います。

 

しかし、代表が突き進んでいく中で、その推進を阻害する障壁や大きなリスクが見えた時に、代表を支えながら、時には違う意見も伝えながら、最適な道を共に選び進むサポート役は大事だと思います。そのためには代表以上に客観的に全体を把握し、バランスを取りながら事業推進と組織運営を行う必要があります。

 

これから先、NPOがより社会のなかで重要な役割を果たしていくには、たとえ自分が代表にとって耳の痛いことを進言する役回りを担うことになったとしても、物事を俯瞰して判断し、代表に対しても臆さずに意見を出していくことが重要です。

 

私は大学生時代にまわりからよく「バランス型」だといわれコンプレックスに感じていたのですが、「バランス型」の自分の特性が活きるのはそんな調整役としての立場でもある気がするんです。何かあれば意見する人がいる、だからアクセルが全開で踏める。トップにいる方には、ビジョン実現に向かって突き進んでほしい、そしてその突破力が社会を変える、そう思っています。

理想とする社会を実現するには、既得権益に囚われないソーシャルセクター。「この選択は間違いではなかった」

 

――もともと花岡さんは社会を変える仕事に関心を持たれていたのでしょうか。

 

大学生時代は国連職員になりたかったんです。ただ、大学で国際政治を深く学ぶ中で、国連の限界も理解するようになり、「どんな仕事が最も社会をより良くできるか」という問いと常に向き合っていました。行政や企業やソーシャルの各セクターの構造や社会情勢から、既得権益に囚われないで社会を変えられる可能性があると感じたのが、市民活動やNPOなどのソーシャルセクターでした。

 

ただ当時はNPOもボランティアの意識がまだ強く、卒業後は、一旦、物流会社に就職をしました。やりがいのある国際的な仕事に携わっていましたが、インドで働いている時に世の中の不平等を直に感じる経験をたくさんして、大学時代に持っていた想いが蘇ってきました。そしてもう一度ソーシャルセクターによって社会を良くするにはどうするべきかを考えるようになりました。そこで、働きながら社会起業大学というビジネススクールに通い、ビジネスと社会貢献を両立するビジネスプランを考えて発表してきました。

 

しかし、数名の方から「NPOでの実務経験がないのに、NPOのような社会貢献活動で起業するなんて説得力が弱いよ」と指摘されたんです。自分自身もその意見に納得して、NPOで経験を積むために転職しました。

 

前職で働いているうちにNPOの大きな可能性を感じて、「自分の選択はやっぱり間違いではなかった」と思えました。同時に、ゼロから立ち上げるよりも、社会的なインパクトを生み出せる組織で自分の特性を活かすほうが、良い結果につながるかもしれないという考えも生まれました。

 

――お話を伺いながら、花岡さんは「自分が何をやりたいか」より、「社会のために何者でありたいか」を大事にされているように思いました。

 

もし本当に社会をより良い方向へ変えたいのであれば、「やりたい」「できる」だけでなく、「やるべき仕事」を誰かが担う必要があると思っています。自分が好きなものを突き詰めたほうがパワーや結果を出しやすいと一般的には言われますが、私の場合、全体を客観視したうえで必要だと思う仕事を自分が担うほうが、結果的に理想の社会に近づく気がするんです。

 

子どもの頃、友だちとサッカーをする時でも、みんなフォワードをやりたがるんですが、それだとゲームにならないんですよね。そういう時は、自分からキーパーを買って出るタイプでした。

事業規模200倍で成長する組織をまとめる

 

――むすびえでは、どんな役割が期待されていると感じていますか?

 

むすびえは、現在、ソーシャルセクターでもまれに見るような規模の急拡大期にあります。数字的にも私がこれまで見たこともないようなレベルで、社会的なニーズの高まりのなか、この4年で事業規模が200倍以上に成長しています。

 

組織の運営としては自律分散型で、メンバー一人ひとりが主体的にプロジェクトを立ち上げ、推進しています。この大きな規模の組織が、管理型ではなく自律分散型の運営方法で進んでいくためにも、全体を把握してまとめるチームが必要になります。私は、そのチームを統括し、組織全体を調整する役割を担うことを期待されているのだと理解しています。

 

――今回、ソーシャルセクター間での転職となりましたが、組織規模、組織形態などで何かギャップを感じることはありますか?

 

組織間のギャップは2つあります。1つめは直接支援か中間支援かで大きく違っていて、中間支援は支援先が現場ではない分、関係するセクターが多様になります。事業のこれまでの経緯やセクターとの関係性などを、しっかり学んで仕事をする必要があると思っています。

 

2つめは、組織形態がまったく違います。前職は創業者が代表を続けていることもあり、指示命令が明確な階層型のマネジメントをとっていましたが、むすびえはそれぞれのメンバーが自由と責任を持って、仕事をすることが推奨されています。階層型は意思決定も責任も上層部や幹部が担いますが、むすびえでは、各現場に委ねている部分が多いため、今後全体を取りまとめていくにもどこから手を付けていくか探っている状況で、自分でもチャレンジングな転職だったと思っています。

オープンに転職できる文化と共創で社会を変えていけるように

 

――今回のようなチャレンジも経験しながら、今後、どんなふうにキャリアを積み重ねていきたいですか?

 

まったく異なる道を2つ考えています。1つは、「支援現場で活動したい」というNPO転職時からの思いがあるため、マネジメントではなく現場で支援に従事するという選択肢もあります。この現場経験がほぼないということは自分の不足している部分とも感じています。

 

ただ一方で、自分の特性や社会から求められるのは、ブレーキ係やまとめ役としての役割だと考えると、その役割を突き詰めるかたちでマネジメントを深めるか、ソーシャルセクター全体の連携を作ってコレクティブインパクトを目指すことももう一つの選択肢です。より良い社会をつくるためにどうすることが大事なのか、これからも考えながら判断をしていきたいです。

 

――NPO間での転職を考えている人にメッセージをお願いします。

 

NPOで働く方たちは「みんなで社会をより良く変えていこう」という思いあふれる人が多く、根っこの部分は同じなので、この業界内ではもっとオープンに転職ができる環境が望ましいです。

 

いまは共創・協力の時代で、同じ組織に属していなくても、同じ価値観や想いをもっている人同士が連携しあい、ともに事業を創っていくのも当然のことになりました。人の交流が生み出す新たな関係性、磨かれていく価値観や感性は、今後のNPO業界にとっても有意義なものとなると思っています。

 

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<むすびえ 採用担当者 日詰あずさ さんから一言>

今回のインタビューに同席させていただき、花岡さんの芯の部分を垣間見ることができました。お話を聞く前から本当にバランスの取れた方だなと感じていましたが、調整役という見られ方が嫌な時もあったとは驚きでした。

 

自分が思う特性と他人から求められるものが、必ずしも一致しないというのは私自身も感じているので、どんな仕事が天職になるか分かりません。

 

花岡さんのように「社会をより良くしたい」と思っている方は、まず一歩を踏み出してみてください。

 

※記事の内容は2023年6月取材時点のものです。

※写真提供 : 認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ

 


 

認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえでは、ただいま一緒に働く仲間を募集中です。ご関心ある方は、下記のDRIVEキャリア求人記事をご覧ください。

認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえの人材募集の詳細はこちら!

 

ソーシャルセクターへの転職にご関心ある方は、経験者の方たちのインタビュー・関連記事もあわせてお読みください。

>> ソーシャル転職者インタビュー

 

 

この記事を書いたユーザー
たかなし まき

たかなし まき

1971年愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科卒業後、地元の企業に就職。その後上京し、業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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