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NPO・ソーシャルベンチャーの「キャリア不安の壁」の乗り越え方

2013.08.16 

NPO職員は組織に「雇用」されているのではなく、「パートナーシップ」を結んでいると考えるべきだと僕は思っています。 僕たち職員のために組織があるのではありません。ミッションの実現のために組織があり、僕たちがあるのです。だから、一部を除きNPOはプロフェッショナルの集団であるべきです。

 

プロフェッショナルとは、「ミッション実現を進める上で欠かせない存在であること」「組織に依存することなく、自立・自律した働き方を実現できる存在であること」です。そんなプロフェッショナルが集い、互いに切磋琢磨し、相乗効果が生まれることでミッションの実現が加速されます。

 

では、どうすれば、「キャリア不安」を乗り越え、社会・組織にも貢献し、自分らしく働けるプロフェッショナルになれるのか? 僕にも正直よく分かりません… が、今回も経験則になりますが、参考までに僕の考えをご紹介していきます。

1. 自分を知る(PDCAをまわす)

NPO・ソーシャルベンチャーの『キャリア不安の壁』の乗り越え方(1) 「キャリア不安」を乗り越えるには、まずは「自分を知る」ことが大切です。

 

しかし、意外と人は自分のことを何も知りません。自分が何が好きで・嫌いで、何が強みで・弱みで、何が得意で・苦手で、何にワクワクして・しないのか、皆さんは明確に答えることができますか?

 

僕は、まだ全然自分のことを本当に理解できていないなと思うことが、今もよくあります。僕はよく「頭の自分」と「心の自分」の二人が自分の中にいて、普段は「頭の自分」が前面に出ていると思います。何かモヤモヤしている時や気分が沈んでいる時、うまくいかないことが続く時は「心の自分」と乖離していることがよくあります。その時は「頭の自分」と「心の自分」を対話させるようにしています。

 

僕の場合は、たまに瞑想をしています。日記を書いたり、誰かに話を聞いてもらうことも有効でしょう。 自己理解を深めるための方法はいろいろありますが、僕がオススメなのは「PDCAをまわすこと」です。つまり「とりあえずやってみよう!」です。(笑)

 

以前の記事でも触れましたが、僕自身もいろいろなことをやってみた中で、自分が何が好きで、強みで、得意で、ワクワクするのかが徐々に見えてきました。たくさんの失敗も積み重ねて来ました…また、真っ白なインターン学生たちの成長過程を見ていても、いろんなことを経験する中で当初思っていた自分とは違う「自分らしさ」を見つけて卒業していくケースがとても多いです。

 

ただ、この時に大事なのは、自覚的にPDCAや仮説検証を回せているかということです。まずは仮説でもいいので、自分の能力や関心事などを明記してみて、それを検証できる機会に飛び込んでみてください。もしそこで思ったような結果が得られなかったとしても、それは「失敗」ではありません。その結果、何が検証できたのかを振り返り、次の仮説を立て、また次の機会に飛び込んでみましょう。この考えを整理する時に瞑想するのが、個人的には効果的です。このサイクルをしなくなった時に初めて「失敗」となります。

2. 自分をマーケティングする

NPO・ソーシャルベンチャーの『キャリア不安の壁』の乗り越え方(2) 自分のことを少し理解し整理できたら、次はそれをベースに自分をプロデュースするプランを立てましょう。

 

ただ、「キャリアプランを描こう!」といったときに「利己的なキャリアの描き方」で終わってしまっている人が多いように思います。要は、「自分はこうありたい!」という観点でしか描いていない・描こうとしていない人です。

 

経営戦略を考える際に用いるフレームワークの「3C分析」というものがあります。「自社・競合・顧客(市場)」の3つの視点の組み合わせで、自社のポジショニングや今後の戦略をバランスよく考えようという枠組みです。

 

「利己的なキャリアの描き方」というのは、つまり「自社(自己)」分析しかできていないのに、自身のありたい姿(= ポジショニング)や今後のキャリアプラン(= 戦略)を描こうとしているということです。外部(競合・市場)という視点が抜けています。当然、一人よがりなキャリアプランになっていて、絵に描いた餅にしかならない可能性が高くなります。結果、キャリアについていつまでも悩み続ける…ということになります。 そこで、そういった状況に陥らないためのヒントを3つご紹介します。

(a)自分 x 顧客 x 競合

これは単純に「セルフ3C分析」を考えてみましょうということです。

 

自分にとってのHAPPYは何か?(自分が提供できる)顧客が求めている「価値」とは何なのか?競合は誰でその人達と異なるどんな強みを持っているか?といったことを考えてみてはどうでしょうか。

 

これは組織内での自身のキャリアを考えるときも同様です。「NPOで働く時にどういうスキルがあれば役に立てますか?」というご相談をよく聞かれますが、答えは「団体によって異なるので、まずは直接聞いてみるか片足突っ込んで、顧客(団体幹部が何を求めているか?)・競合(どういった人材がいるのか?)を知ったほうがいいと思います」とお伝えしています。

(b)社会 x 未来

先ほどは「顧客」という狭い範囲で考えましたが、自分が描くキャリアは一体「社会」全体でどれほど求められているのか?そして、それは今後もどれくらい求められるのか?存在価値は増えていくのか?減っていくのか?という広い範囲でも考えておくといいです。

 

世界や社会の情勢は刻一刻と変化しています。とくに近年は変化のスピードが驚くほど早いですよね。今、僕たちが憧れている職業や組織が10年後もあるという確証なんてありません。逆に、数年後には思いもしなかった魅力的な職業が出てきているかもしれません。なので、常にいろんな情報にアンテナをはり、少なくとも10年後の社会を常にイメージしているということが重要です。

(c)1/100 x 1/100

これは教育改革実践家の藤原和博さんがよく仰っていることで、すごく共感したのでご紹介します。

 

「強み」といった時に、「自分にはそんな特別な才能とかないしな…」と思う人が多いと思います。僕もそうでした。例えば、「天才」と言われる人は「1万人に1人」だとします。

 

そうなるためには、努力はもちろんのこと、センスや運も必要になるでしょう。狙ってそうなれる人はごく一部なんだと思います。 でも、「1/10,000」を分解してみると、「1/100 x 1/100」になります。つまり「100人に1人」くらいの「強み」を2つ掛け合わせることで、「1/10,000」の「強み」となります。100人に1人くらいであれば、努力でなんとかなりそうです。 問題は何と何を掛け合わせるのか。それを前述の(a)や(b)を踏まえて設定できるといいなと思います。

 

ご参考までにいくつかNPOセクターでとくに必要とされていそうな組み合わせをご紹介します。

  • データベース(システム開発) x 寄付
  • 新規事業開発 x 途上国の現地語
  • WEBプロモーション x 寄付
  • 企業経験・知見 x 行政経験・知見
  • ビジネス英語 x 助成金ライティング

などなど。 どれも僕にはない組合せなので、こういった方がいらっしゃるととても助かります。(笑) 皆さんは他にもどんな掛け合わせがあると思いますか?

 

以上のように「自分が社会のために最も活きるようにプロデュースすると?」ということを考えてみることをオススメします。

3. 自分をテストプロモーションする

NPO・ソーシャルベンチャーの『キャリア不安の壁』の乗り越え方(3) 最後に、ここまで考えてきたことが合っているかどうかをテストしてみましょう。

 

その方法として、簡単かつオススメなのは「ブログを始める」ことです。ブログを通じて、自分の「強み」に関する記事をまとめて世の中に発信してみましょう。まずは気をつけることは、

  • 「顧客」(ターゲット)に届けることを意識する(内容・検索キーワードなど)
  • 閲覧者数がどうであろうが「半年は続ける」ということを決めてやる(めげない!)
  • とにかく数を書いてみる(最低でも1週間1記事は死守する)

といったことかなと思います。

 

発信してみて、その反響によって、徐々に自分の描くキャリアがどれほど今の社会や顧客に受け入れてもらえるものなのかが分かってきます。この結果、思うような結果が得られなくてもいいんです。次のキャリアプランを考えるための新しい材料を得られたわけですから。

 

以上です。 これだけ社会の変化が激しく、複雑になっている今、自分がどのように生きるべきかということ(= キャリア)の意思決定を誰かに依存することほど怖いことはありません。

 

最後は自分で決めるしかないと思います。その時に誰のせいにもせず「自分で決めたことだから」と胸を張って言える状態に常にありたいなと思います。そのためにはいくらでも考え抜きましょう!

 

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山元 圭太

合同会社喜代七 代表 / 株式会社 Seventh Generation Project 取締役 / NPO法人日本ファンドレイジング協会 理事 / NPO法人ソーシャルバリュージャパン 理事 / 島根県雲南市 地方創生アドバイザー / 1982年滋賀県草津市生まれ、同志社大学商学部卒。経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして5年NPO法人かものはしプロジェクトでファンドレイジング担当ディレクターとし5年半のキャリアを経て、非営利組織コンサルタントとして独立。2015年10月に株式会社PubliCoを創業。2018年3月に故郷の滋賀県草津市で合同会社喜代七を創業。2018年12月に株式会社Seventh Generation Projectを創業。

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