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NPOの事務局長は「プロ番頭」!「想い」を「カタチ」にする、経営者の右腕に必要なスキルとは?

2013.08.30 

ある研究調査結果によると「自分の使命を見つけ、それを追求する勇気を持っている人はたったの3%」だそうです。 そして、その「3%」の人たちが、NPO経営者(とくに創業者)になるんだろうと思います。

 

だからか、NPOやソーシャルベンチャー(以下「NPO」と省略)への転職に関心のある方々から「崇高な想いがなければやっていけないのでは?興味はあるけど、自分にはそんな強い想いはないから…」という言葉をよく聞きます。

 

断言します。 そんなことはありません!そんな人達ばかりではありません! 現実的にNPOという組織を運営していくには、幅広い多様な人材が必要です。そんな崇高な使命感を持っている稀有な人達だけが集まって組織になり、活動をしていくというのは奇跡に近いです。

 

もちろん「ミッションへの共感」や「社会公器としての責任は果たす」という想いは大切です。でも、それはNPOだからではなく、企業や行政機関などあらゆる組織が本来必要なものであるはずです。

 

当然、NPO経営者には強い「使命感」や「想い」が必要不可欠です。NPO経営者の最大の武器は「想い」です。ある問題に出会ってしまい、どうしても見過ごすことができずに、遂には決断して大きな一歩を踏み出すほどの強い「想い」。これは本当に凄いことであり、誰もができることではないと思います。心から尊敬します。

 

ただ「想い」と「カタチ」との間にある大きな隔たりに四苦八苦しているNPO経営者もたくさんいます。あまりにも四苦八苦しすぎて「想い」が萎えてしまったり、目の前の資金繰りや人間関係の調整に気が行き過ぎてしまったりしている方もいます。

 

僕はそういうNPO経営者の方々を見ると、「もったいない」と思ってしまいます。それだけ強い「想い」を持てたのは、運命だと思うし、才能ではないでしょうか。だから、出来るだけ、NPO経営者の皆さんには「ミッションの達成」のことだけを考えていてほしいです。それはその人にしかできないことですから。

 

もちろん、資金繰りや人間関係の調整も含めて活動ではあります。NPO経営者の方の中には、一人でそういったことまで全て高いレベルで的確にできる方もいます。でも、そんなスーパーマンは凄く稀なのではないでしょうか? 右腕のような存在が、NPO経営者には必要 だから、そういったことを任せられる『人材』が、NPO経営者には必要だと心から思っています。「想い」を「カタチ」にできる存在です。

 

そういった『人材』にはいろんな呼び方があります。 ・事務局長 ・COO ・右腕 ・事業化のプロ、etc... まだ決まった呼称がないのですが、今回は仮に「プロ番頭」と呼ぶことにします。 プロフェッショナルな番頭 Wikipediaで「番頭」を調べてみると、

商家における番頭とは、主に江戸時代、商家使用人の内で最高の地位にある者を指す。 10歳前後で商店に丁稚・小僧として住み込んで使い走りや雑役に従事し、手代を経て番頭となる。商業経営のみならず、その家の家政にもあたっており、勤務時の着物も手代までと違い羽織を着用することが許された。また、丁稚はもちろんのこと手代までは住み込みを原則とする商家が多く、番頭になってようやく住み込みから解放され、通い(自宅通勤)が許されるといったケースが多かった。さらに、結婚も番頭になるまでは許さないことが多かった。番頭は、暖簾分けされて独立することもあったが、番頭を任されるまでには厳しい生存競争を勝ち抜く必要があった。店や地域・時代により多少違いはあるが、この競争を勝ち抜いた者が概ね30歳前後で番頭職につくのが多かった。

と説明されており、現代の「理事」や「支配人」などの名称も「番頭」が原型らしいです。「プロ」と付けたのは、「裏方」とか「参謀」とか「縁の下の力持ち」という言葉で都合よく逃げることなく、プロとしての高い意識を持ち、役割を完遂することのできる人材をイメージしているからです。

 

では、『プロ番頭』にはどんなスキルセットが必要なのでしょうか? 完全に私見ですが、NPO経営戦略のプロセスに沿って、経験則を踏まえてまとめていくと… プロ番頭に求められる8つの要件

第1のスキル:「ロジカルシンキング」

「想い」を「カタチ」にし、「成果」へと地に足つけて結びつけるには、論理的に考えられる力がベースとして必要です。

・MISSION (社会に何をもたらす存在なのか?) 

・VISION (どのような社会を創るのか?) 

第2のスキル:「コーチング・メンタリング」

とくに多くのスタートアップ期のNPO経営者は、自分の中にある強い「想い」を適切な言葉で表現できていないことがあります。

 

言葉にできていないと、人には伝わらず、共感されず、活動が進みません。だから、とことんNPO経営者の「想い」に向き合い、全力で耳を傾け、本人の力でMISSIONとVISIONが言語化できるようサポートする必要があります。

・GOAL (社会的成果の指標設定) 

・SOLUTION (原因分析?問題解決シナリオの仮説作り) 

第3のスキル:「リサーチ」

MISSION・VISIONが明確になったら、次はとことん現実・事実と向き合います。いかにそれを現実のものにしていくかという目標・解決策の仮説を立てます。

 

この時に必要なのは、データ分析や文献調査、関係者ヒアリングなどの調査力です。思い込みや先入観を捨てて、「ファクト・ファインディング(事実のみを見る)」に徹します。

第4のスキル:「コーディネーション」

とくにSOLUTIONの計画を考える際に、多くの場合、自団体だけでは問題解決には壁がありすぎることに気づきます。

 

その時に、他の団体・企業・行政・人物との連携をすぐ思いつき、思い切りをもって飛び込んでみる「考動力」が大切です。

第5のスキル:「ドキュメンテーション」

そして、ここまでの流れを関係者や潜在支援者にとって分かりやすい形になるよう資料化します。この作業ができる人はとてもとても重宝されます。

・RESOURCE (必要なヒト・モノ・カネ・ネットワークの把握) 

・COST (支出額詳細の算出) 

第6のスキル:「シミュレーション」

次に中長期の各種シミュレーションが立てられることも重要です。資金や人的資源などの必要な資源は、多くの場合すぐに集まるわけではありません。それなりの準備が必要なわけなので、出来るだけ正確かつワクワクする試算が大切です。

・FUNDRAISING (資金調達戦略の策定) 

・HR (推進人員・体制計画の整理) 

第7のスキル:「ファンドレイジング」

問題解決に必要な資源(資金や人的資源)をいかに最適(最大ではない)に調達するかということです。ここの話はとくに書きたいことがたくさんあるので、またどこかでお伝え出来たらと思います。

 

第8のスキル:「PDCA(改善力)」

成果創出までの重要度で言うと、上記までが半分という感覚です。あとの半分がこの「PDCA(改善力)」だと個人的に思っています。ここまではあくまで計画作りです。つまりは仮説作りです。実際は、やってみないと分からないことばかりです。

 

だから、いかに実践の中で様々な要因を考慮しながら、当初の計画を改善し、修正しながら成果へと導けるかということが重要です。成果創出までの道に「魔法の一手」はありません。「PDCA」の愚直な実践こそが最も近道だと思います。 以上です。

 

実際、活動をやっていくともっともっといろんなスキルが必要ですし、これだけのスキルセットを持っている『人材』がいたら十分にスーパーマンな気もします…。

 

でも、一つ一つのスキルを見ていくと気づくことはありませんか? そうです。これらはビジネスセクターで磨かれるスキルばかりです。特別な使命感や特別な知識・スキルではなく、日々の企業活動の中で磨かれていくものなんです。

 

実際に、現在NPOで『プロ番頭』の立場で活躍されている方は、企業経験がある方が多くいます。今、NPO/ソーシャルベンチャーセクターが求めている人材はそういった人たちです。 いつかこの記事を読んで下さった『プロ番頭』の方とお会いできる日が来ることを楽しみにしています。

 

 

 

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山元 圭太

合同会社喜代七 代表 / 株式会社 Seventh Generation Project 取締役 / NPO法人日本ファンドレイジング協会 理事 / NPO法人ソーシャルバリュージャパン 理事 / 島根県雲南市 地方創生アドバイザー / 1982年滋賀県草津市生まれ、同志社大学商学部卒。経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして5年NPO法人かものはしプロジェクトでファンドレイジング担当ディレクターとし5年半のキャリアを経て、非営利組織コンサルタントとして独立。2015年10月に株式会社PubliCoを創業。2018年3月に故郷の滋賀県草津市で合同会社喜代七を創業。2018年12月に株式会社Seventh Generation Projectを創業。