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#経営・組織論

いいチームをつくる秘訣を、3.11で3000人とチームをつくった西條剛央さんと考えてみた【その1】

2016.07.04 2,151view 

早稲田大学客員准教授で哲学者の西條剛央さんと、NPO法人ETIC.の創業者である宮城治男と鈴木敦子による「これからの組織のあり方」についての対話です。

2011年の東日本大震災で、3000人もが名を連ねるボランティア組織「ふんばろう東日本」を生み出した西條さん。学者(哲学者)としての立場から一転、構造構成主義という独自の理論を活用し、日々変化する巨大なチームを運用する立場になり、たくさんの驚きと発見があったそうです。

対するは、20年間「人を育てる」ことに向き合ってきた非営利組織の代表たち。理論のスペシャリストと20年間実践を続けている二人がお互いの視点を共有しあった先に、多くの発見がありました。 ちょっと長くなりますが、全5回のシリーズでお届けします。

西條さんは現在、「ふんばろう」の経験を基に被災地支援のプラットフォーム「スマートサプライ」を構築、熊本地震においても導入されています。くまモンの生みの親・小山薫堂さんとの対談記事はこちらから>>熊本地震で考える「募金の生きた使いみち」【小山薫堂×西條剛央】

西條さん宮城さん

左から、早稲田大学客員准教授・哲学者の西條剛央さん、NPO法人ETIC.代表理事・宮城治男

マイナス1000点の組織のかたちを減らしていく勝負
宮城治男宮城

ETIC.は、一言でまとめるなら起業家のような事業を生み出す人たちの支援をしている組織なので、その活動のなかでスタートアップをはじめとする小さな組織と関わる機会が多くあります。そうすると、やはり多くの方が組織づくりにとっても悩んでらっしゃるんですね。

どうしたものかなあと思っていた昨年、西條さんのご著書『チームの力』を拝読して、ここに書いてある組織論はどんな規模のチームでも実践していけるし、育てていける取り組みだなと感じました。

西條剛央西條
なるほど、ありがとうございます。「ふんばろう東日本(以下、ふんばろう)」は無償のボランティア団体だったので、NPOとは近しいものがありますよね。両方とも、お金をインセンティブに動かせない組織なので。その意味では、人間の本質に沿えばうまくいくし、沿うように運営するしかない。そういった知見を、今回お話できるのかなと思います。
宮城治男宮城
そう思います。まさにこの本には、われわれ非営利組織が大事にしないといけないところを書いていただいているなと。
西條剛央西條

いい社会を作るというと漠然としていて、どうすればよいかわからなくなりますが、シンプルにいいチームが増えれば、その分だけいい社会になっていく。逆に言うと、社会やそれを構成する「組織」には、誰が悪いってわけじゃないけど、明らかにおかしいよねっていう理不尽が溢れています。社会をよくするというと、90点を95点にするというイメージを抱く人も多いと思うのですが、むしろマイナス10000点のような圧倒的な不条理が多くあって、それを減らしていくだけで、社会は格段によくなっていくと思うんです。

いま原発も、3.11以後、電気のために稼働しているだけじゃないってこともはっきりして、さすがに止める方向に行くかなと思ったら、再稼働が進んでいる。その背景には、これだけのことが起きてすら誰も責任をとらなくて済んだということがあるのでしょう。でも、このままだと、この“圧倒的な負の遺産”を子どもたちに押し付けるわけですから、これ以上の理不尽はなかなかないでしょう。

宮城治男宮城
まさに、そこにはおかしな意思決定がされる構造があるわけですよね。きっと一人ひとりと対面して話せば分かり合えるし、共感できるんでしょうけど、組織という単位になった途端にかなり偏狭な意思決定が生まれる構造というか、状況がある。
西條剛央西條
そもそも何のために組織が必要かが、見失われてしまう。理念が飾りになってしまうんですね。
鈴木敦子鈴木
今まで「昭和」を作ってきたいろいろなルールであるとか、大企業や大きくなっていく組織は、意外とそうした構造のなかで進んできているような気がするんですよね。誰が悪いということはないのだけれど、なんだかすごく、変になってしまうというか。
西條剛央西條
はい、気がついたら、ものすごい変なことになっている。あとから思えば、311はそのことに気づくきっかけにもなった気がします。
世の中すべての組織が楽しく働けるチームになればいい
NPO法人ETIC.事務局長・鈴木敦子

NPO法人ETIC.事務局長・鈴木敦子

鈴木敦子鈴木

私たちはこれまで、地道に起業家のスタートアップの応援をしてきていて。ただ、そうやってスタートアップをはじめとする“事業”を応援するのは、大義名分的なところがあります。本当にやっていきたいのは、そこで働く人たちが夢と目的を持って、みんなと共感し合いながら信頼関係を築いて働くという状態を生み出すこと。

勉強してお金をたくさん儲けて余暇を楽しんでという時代じゃなくなって、改めて自分が何に人生をかけるのかということを考えたときに、仕事が楽しいって感じられる社会にならないといけないなと。だったら、世の中にあるほとんどの会社や組織が、楽しく働けるようなチームになっていくっていうのがすごく大事だと思っています。

そのやり方が理論的では全然なく、天然でやっているところがあって(笑)、そろそろ理論も構築していかなきゃいけないなぁと最近思い始めています。

たくさんの人と共有するために、実践を理論にする
西條剛央西條

理論の中でも、通常の個別理論ではなく、「原理」というものがありまして、これは、「例外なくそうだと言える」というものなんですね。

ETIC.さんはすでに成功事例をやまほど持っているでしょうから、ノウハウも貯蓄されていると思うんです。原理は、それを整理するのに使えると思います。原理を置くと、うまくいったときは確かに原理に沿っていたな、うまくいかなかったときは確かにちょっと外れていたなとか、言語化できるようになる。

そして、「このチームは原理に沿っているからうまくいくな」とか、「あのチームは原理から外れているからこのままだとまずいので、介入していこう」といった予測と制御を、より自覚的にできるようになる。

原理はそういう「視点」、無形量の眼鏡として役に立つと思うんですよね。「理論化」というと雲を掴むような感じかもしれませんが、視点があれば、実践を理論化することってそれほどむずかしいことじゃないと思います。

宮城治男宮城
われわれが理論にしてこなかったのは、それを多くの人にシェアしようと思っても、シェアしたいという気を持っていただける人がいなかったというのもあったかもしれません。自分たちがやる以外に必要性もなかったんですね。それが今では、ぐっとその必要性が高くなってきた。これまでやってきたことを今のまま限られた人だけの実践知にしておくのはもったいないというか。
西條剛央西條
そういうニーズのある状況で、理論・方法論みたいな枠組みができると他の人が圧倒的に真似しやすくなるんですよ。もちろん細かいところは、その場その場で見ながら丁寧にやるしかないとはいえ、そこは各々の強みとなりますよね。
人類の歴史は「自由の拡大」の歴史
西條剛央西條

去年、AERAから『進撃の巨人』特集の際に取材されたのですが、そのとき『チームの力』には書かなかった自由論の話をしたんです。

なぜ『進撃の巨人』が多くの人に評価されているのか。それは、人間の本質に沿っているからだと。そして人間の本質とは、「自由を求める」ことにある。あの『進撃の巨人』に出てくる調査兵団のシンボルは、「自由の翼」なんですよね。エレンという主人公も、自由が得られるならたとえ壁の外で死んだっていいんだというようなことを言っていて。

実際に人類の歴史を振り返ると、多くの人が自由を得るために命を賭して活動し、その権利を拡大してきた歴史なんですよね。100年前の日本には男女平等すらなくて、参政権もなかったけれど、一度自由を得たらもう戻らない。まだ自由が獲得されていないところもありますが、基本的には自由の拡大の歴史だと思っています。

それに対して資本主義の、いわゆる「お金」を一番大事なものと見る価値観はものすごくローカルなものなんじゃないかと思っていて。東京はそうかもしれないですが、東北とかちょっと地方にいくと、あんまりお金を稼ぐことに関心がないんですよね。ぼちぼちでいいやって。

うちの父は以前仙台市で唯一の剥製屋をやっていて、「ホームページはもっとこうしたほうがお客さんがくると思うよ」ってったことがありますが、「いや、もう働きたくないからいいや」って。

一同:(笑)

自由×好きな人たちと組むチーム×社会のためになる、がこれからの時代
西條剛央西條

でも、「自由でいたい」、つまり僕の言葉でいえば「自分の関心を満たしながら生きたい」というところは、同じです。人間は必ず一定の制約のなかで生きざるをえないわけですが、そうした不自由のなかでも、こう生きたいという関心を満たせると確信できるとき、あるいは満たせたときに、自由を感じる。

『チームの力』のなかで、僕は大企業を「巨人」になぞらえているんですが、その「巨人」は人でできていながら、人の制御が叶わないくらい暴走して人を食い物にしてしまう。

高度経済成長期やバブルの時代だったら、組織に入り自分の人生の自由を多少失ったとしても、その先の人生の保障が得られていた。その時代ではおそらく、自由と保障の交換がされていたんじゃないかと思っていて。

けれど、いまはもうそんな状況ではなくなってきている。自由を捧げても簡単に捨てられてしまう。その意味では『進撃の巨人』に出てくる巨人もとても象徴的なんです。巨人は人間を食べるんだけど、そのまま出してしまうんですよ。

実際、人を「使い捨て」している企業は、多くあると思っています。そうした企業に自由を捧げた末に使い捨てされるくらいなら、もっと自由に生きて、好きな人たちとチームを組んで、できれば社会のためになった方が自分も気持ちがいい。そういうふうに生きていきたいと、時代が変わってきているんだと思うんです。

ただ、そのときに必要になるノウハウがまだ存在していなくて。みんなこれまでの企業ベースの考え方になってしまっているから、自分にフィットする生き方、働き方を模索しているんだと思うんですよね。

一度目が覚めたら戻れない
宮城治男宮城

たとえば日本でいえば、明治維新までは外形的に抑圧されていた不自由があったと思うんです。つまり身分差別ですが、これは明治維新である程度突破された。

けれどその後には戦争の時代がきてしまった。とにかく一生懸命働いて、前に突き進まないと殺されてしまう時代。あるいは、すでに多くを失ってしまったから、そこから復興するしかないという時代。こうした時代にはみんなの目指すべきものがわかっていたから、理由も哲学も要らなかった。

つまり、目指すべきものを自分で考えなくても、目の前のことを一生懸命頑張るということが、自分の心も社会的な補償も満たしてくれたという時代が続いていた。

けれどそれが、バブル以降、われわれの世代が世の中に出るころになると、自由が進化していたというか。多くの人が「ほんとうに自由に自分の人生を決められる、生きられる」社会に、何の用意もないまま突入してしまった。なのに、この自由に生きられる社会のなかで「生きていくための術」を、教育を含め誰も考えてこなかったので、誰にもどうすればいいかがわからない。そんな時代に自分たちが生きているという実感があります。

では、この自由な時代における生きがい、豊かさとは何だろう? と。何か変わっていくはずだけれど、教育も含めて社会の仕組みも変わらない。そうしたときに、われわれの世代以降の人たちが求めている生き方と、これまでよしとされてきた、社会で生きる人を育てるために作られた仕組みのなかで生きる人との、ギャップが生じているんじゃないかっていう思いがあったんです。

西條剛央西條
なるほど。
宮城治男宮城
そのギャップを埋めていく起爆剤的な存在として、起業家という人たちに出会ったことが、じつはこの仕事の契機なんです。
西條剛央西條
バブル以降にもリーマンショックが起きて、相当数の人が「どうもお金に軸足を置いていても幸せにはならない」ということを自覚しましたよね。
宮城治男宮城
そうですね、その学びがありましたね。
西條剛央西條

それから震災があって、「家族と幸せに生きることのかけがえのなさ」にみんな目が覚めて、今の時代を生きている。

昨年、「ほぼ日」の糸井さんと鎌倉投信の新井和宏さんを繋げて鼎談をしたんです。そのときにも話していたことなのですが、すでに次の時代に入っているということは誰もが感覚的にはわかっているんだよねと。けれど、そうじゃないと思いたい人たちが必死に抵抗していて。

けれどそう抵抗する人たちも、本当はわかっているはずだって言い方をしていて。ぼくもそれは本当に感じるんですよね。しかも加速してますよね。

宮城治男宮城
加速していますよね。ほんとうに、一度目が覚めたら戻れない。
鈴木敦子鈴木
わからなかったことにできないんですよね。
西條剛央西條
できない。だから、不可逆なんですよね。
宮城治男宮城
震災が起きたときに、いろんな方からインタビューしていただいて。「震災が起きたけど、結局は年を経るごとに、また価値観というのは戻っていくんでしょうか」と、よく聞かれました。復興ボランティアの熱気というか、勢いは年を経て低下してしまうかもしれないけれど、気づいてしまった価値観は戻れない。だから、震災は後世に対してとても大切なインパクトをもたらしてくれた、振り返ればあそこが分水嶺だったってことになるのではと思ってます。

第2回へつづきます>>組織は「内と外」があるけれど、チームは境界をのばしていける。西條剛央さんと考える、チームをつくる秘訣【その2】

現在、西條さんは東日本大震災時に3000か所以上を継続的にサポートした仕組みから開発した「スマートサプライシステム」を、熊本支援プロジェクトに導入しています。2016年3月には、減災産業振興会主催の「第2回グッド減災賞」で最優秀グッド減災賞を受賞したスマートサプライ。熊本への支援にご関心のある方は、こちらから詳細をご覧ください。くまモンの生みの親、熊本出身の放送作家・脚本家の小山薫堂さんとの対談記事「熊本地震で考える「募金の生きた使いみち」 【小山薫堂×西條剛央】」はこちらから。ご著書『チームの力』はこちらから。

この記事を書いたユーザー

桐田 敬介

桐田 敬介

哲学者・遊び研究者/よはく代表。1986年生まれ、埼玉県育ち。大学で哲学理論を作る一方で映画制作や演劇などを楽しみ、大学院では日本各地の面白く豊かで多様な学校を訪れ図画工作と造形的な遊びの研究を行う。現在はベンチャーで勤務しつつ遊びの研究を続けながら、哲学とアートを遊ぶワークショップを運営する団体「よはく」を主催している。

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