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神社お寺の検索サイト「ホトカミ」で、大好きな日本文化を後世に残したい。株式会社DO THE SAMURAI 吉田亮さん

2024.04.05 

多くの旅行会社で御朱印巡りツアーが組まれている他、Instagramでは約425万件もの「#御朱印」タグの投稿があるなど、御朱印集めは世代を問わず人気を集めています。そんな御朱印集めの計画を立てる際にも役立つのが、御朱印・神社お寺の検索サイト「ホトカミ」です。「日本文化が好き」という思いからサービスを生みだし、神社やお寺を未来に残していくことを目指す、株式会社DO THE SAMURAI代表取締役の吉田亮さんにお話を聞きました。

 

この記事は、東京都主催・400字からエントリーできるブラッシュアップ型ビジネスプランコンテスト「 TOKYO STARTUP GATEWAY」出身の起業家を紹介するWEBサイト「 TSG STORIES」からの転載です。エティックは、TOKYO STARTUP GATEWAYの運営事務局をしています。

 

 

吉田 亮(よしだ・りょう)さん

株式会社DO THE SAMURAI代表取締役、TOKYO STARTUP GATEWAY2015セミファイナリスト

月間120万人の神社お寺ファンが使う神社お寺の検索サイト「ホトカミ」を運営する株式会社DO THE SAMURAI代表取締役。 東京大学理科II類入学後、文学部日本文学卒業。

2013年より日本文化や歴史を後世に繋ぐ事業を開始、2016年法人化。

これまで2000人以上の参拝者との対話や、累計1500万アクセスを超えるお参りに関する記事の執筆編集、日本全国の神職僧侶の皆様へアドバイスの経験をもとに、100年後に神社寺院を残すために社会と神社寺院の接点を創出する。

「ホトカミ」公式サイト:https://hotokami.jp/

 

聞き手:栗原吏紗(NPO法人ETIC.)

神社仏閣を守ることが日本文化全体を守ることにつながる。後継者からの悩み相談が事業のきっかけに

 

―今取り組んでいる事業について教えてください。

 

御朱印・神社お寺の検索サイト「ホトカミ」を運営しています。飲食店を探すときによく使われる「食べログ」の神社・お寺版をイメージしていただけるとわかりやすいかと思います。

TOKTO STARTUP GATEWAY(以下、TSG)に応募した2015年の夏頃からアイデアはあったのですが、2016年夏から準備を始め、2017年4月にリリースしました。全国14万5千の寺社を検索することができ、毎月約120万人がホトカミを利用して参拝されています。

 

―事業を思いついたきっかけは?

 

2013年から2015年にかけて、平日に寺社の勉強をして、週末にお寺でイベントをしたり、神社ツアーを開催したりといった活動を個人事業としてやっていたんです。毎回15人くらいの人が2~3千円払って参加しており、この活動を通じて神社仏閣の知り合いが増えていきました。それに伴って、実家の神社やお寺を継ぐか悩んでいるといった相談を受ける機会も増えてきたんです。

 

 

一方で、3年も続けていると毎週勉強して案内するということにも限界を感じ始めました。寺社は全国に何万ヶ所もあるのに、同じところを何度も案内することもあるので、これじゃ来来来世まで案内し続けても案内しきれないぞ、と。

そこで僕自身が全部案内するのではなく、お参りした人が「こんな御朱印をもらいました」、「桜がきれいでした」というような投稿をすることで、全国各地の寺社にお参りする人が増えていくような仕組みを作れないかと思いついたのが「ホトカミ」でした。

 

個人で食べていくことはできていたものの限界も感じる中で、個人事業から会社の事業に変えていきたいという気持ちがTSGに参加した一番の動機です。

 

週末に神社やお寺でツアーを開催していた

週末に神社やお寺でツアーを開催していた

 

―何がきっかけで、自分の心に火が付きましたか?

 

TSG終了とほぼ同時期に、SUSANOO Project(以下スサノヲ)という起業支援プログラムに参加したことで起業しようという気持ちが固まりました。ただ勢いで起業してしまったので、起業した後にやる事業がないなと気付いたんです(笑) そんなときに浮かんだのが寺社を継ごうか迷っている人達の顔でした。

 

TSGに応募したときはサムライや祭といった要素もあったのですが、今の時代って戦国武将もサムライもいませんよね。どうやって城や領民を守ったらいいんだろうなんてことに困っている武士はいないわけです。一方で、神主さんやお坊さんは1000年前と同じようにお仕事をされていて、今も皆さんお参りしていて、寺社は残っている。「日本文化の中心にあるのは神社とお寺だ!寺社を守ることが日本文化全体のためになる!」と心から思えたことが、ホトカミを始めることにつながりました。

 

参拝客の目線で神社仏閣の魅力を伝えて楽しんでもらうだけじゃなく、神主さんやお坊さんの助けになれたらという思いがあります。

バンドマンからの転換。300以上の事業アイデアから考え抜いたから、迷わず邁進できる

 

ー事業のモチベーションは?

 

実は子どもの頃から23歳くらいまでロックスターを目指していて、未来予想図では来年くらいに東京ドームでライブをやっているはずだったんです(笑) 大学を休学して音楽活動もしていたんですけど、曲も作れずそもそも歌いたいこともわからなくなるという時期があって……ボイストレーニングの先生から「吉田くんは何が好きなの?」と聞かれて、「前田利家になりたい!」と答えたことが、戦国時代や神社ツアーへと舵を切るきっかけだったんです。

 

そんなわけで売れないバンドマン時代が長かったもので、ちょっとでも誰かの役に立てているというのは単純にうれしいですね。喜んでくれる人がいることはめちゃくちゃモチベーションになります。

 

それから、僕は大体クラスに1人はいるような歴史好きの少年だったんですけど、歴史好きからすると、ホトカミに投稿してもらうことは歴史を残していくことでもあると思っているんです。参拝者が増えて神社を残していけるようになったとか、実家を継ごうと思いますといったお話を聞くと、記録だけでなく、一緒に寺社や歴史そのものを残していくことができているという実感をもてます。

 

ーTSGにエントリーしてから、事業アイデアはどう進化・深化していきましたか?

 

 

TSGに応募してからホトカミを始めるまでは、アイデアがまとまらない人の典型みたいな感じでしたね。スサノヲ終了後、同じくエティックが運営する20代前半のイノベーター向けの「MAKERS UNIVERSITY(以下MU)」というプログラムにも1期生として参加したんですが、MUのメンターだったピクスタ株式会社の古俣大介さんに教えていただいた、「人生を賭けられる事業の見つけ方」が非常に参考になりました。2ヶ月近く事業アイデアを書き出し続け、300近く考えた中からたどり着いたのが今の事業です。「好きな事」×「役に立つか」で考えるなど「一生かける事業の見つけ方」として僕なりのアレンジで紹介していますので、よかったら読んでみてください。

 

MAKERS UNIVERSITYの仲間

MAKERS UNIVERSITYの仲間

 

ー日本で初めてとなる、見返りを一切求められないソーシャルエンジェル出資で8888万8888円の資金を調達されたと伺いました。なぜこのような形で出資金が集まったと思いますか?

 

出資していただいた黒越誠治さん(株式会社デジサーチアンドアドバタイジング 代表取締役)は、同じくMUのメンターとしてお世話になった方です。事業に熱心に取り組んではいましたが、なぜかと言われれば、メンターとして出会えたおかげという一言に尽きます。

 

MUのプログラム期間中は何かしらメンタリングの場があり、相談に乗ってもらうのですが、その後もメンターの方に近況報告を定期的にするのは大切だと思います。遠慮してしまい、意外とできていない人が多いのではないでしょうか。

 

困った時だけ連絡するのではなく、「相談ではなくあくまで共有です!」という感じで、お相手をなるべく煩わせないようにしつつ、現状をお知らせするようにしていました。一生懸命やっていることなら、「そうだったんだ。がんばれ!」と応援してもらえます。

スキルもビジネスモデルもないままスタート。何でも相談できるコミュニティの存在が支えに。

 

―事業を進めていてぶつかった壁、大きな課題はありましたか?

 

ホトカミは、何かを仕入れて売って利益を得ているわけではありません。寺社側も利用者側も全ての機能を無料で使えます。立ち上げから今までビジネスモデルが見えないままやっているという点が課題と言えば課題です。

 

ですが、「ホトカミ」という場とそこに集う神社お寺・御朱印ファンのコミュニティを活かして、御朱印巡りの企画・運営や、神職僧侶様向けの研修等、ビジネスの幅も広がってきました。2023年からは、寺社さんから月額2万円の広告を出稿していただいたり、月額500円からのサポーター制度を始め、少しずつ安定運営に向かっています。

 

―起業前後でスキルがなくて困ったということはありませんか?

 

創業時と比べて技術も進んでいるので、今必要かは疑問ですが、当時の自分には1ヶ月でいいから死ぬ気でプログラミングを勉強した方がいいと伝えたいです。サービスが始まってしまうと、まとまって勉強する時間は取れません。スタートが1ヶ月遅れたところでその後の人生に大きな影響はないので、何か足りないスキルがあるなら事業を始める前に集中して身に着けるというのもアリだと思います。勉強ばかりでサービスを始めなかったら意味がないので、バランスが大事ですね。

 

僕の場合は起業後も知らないことばかりだったので、手を動かしながら身につけてきました。同時期に起業したスサノヲ、MUの同期や先輩が100人くらいいたおかげで、気軽に相談できるコミュニティがあったことは一番の助けになりました。

 

神職者向けの講演を行う吉田さん

神職者向けの講演を行う吉田さん

日本文化を愛する人が集う場を作れていることが最高に楽しい。400文字から踏み出せる一歩

 

ー起業してよかったことは何ですか?

 

実際にお参りする人が増えたり、自分の妄想でしかなかったことが実現したり、日本の文化を残していきたいという思いが叶っていくのを実感できることです。仏像の建立に携わるなど、40歳くらいまでにできたらいいなと思っていたことも、意外と早く実現できています。

 

もちろん全部が全部実現できているというわけではありませんが、歴史や文化を神主さんやお坊さん、ユーザーのみなさんと一緒に作っていけているという実感がありますし、ホトカミという場を作れていること自体が本当に楽しいです。

 

ー事業を通じて実現したいビジョンや創りたい世界を教えて下さい。

 

茶道や華道、伝統工芸の職人さん、宮大工さんなど、いずれ対象を寺社から広げて、日本の文化全体が未来に残っていくようなエコシステムにしていきたいです。

 

―これからTSGにエントリーする方・起業に挑戦する方へ応援メッセージをお願いします。

 

無理のない範囲でできることなら、絶対にやってみた方がいいです!TSGに関しては応募するだけならリスクはありません。たった400文字なので、がんばれば1時間くらいで書けますし、全員に応募してみてほしいですね。

 

起業に関しては、体調を壊してしまっては元も子もないので、無理はせず、「違うな」と思ったときには違う道に進んでみるのもいいのではないでしょうか。

 

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この記事を書いたユーザー
茨木いずみ

茨木いずみ

宮崎県高千穂町出身。中高は熊本市内。一橋大学社会学部卒。在学中にパリ政治学院へ交換留学(1年間)。卒業後は株式会社ベネッセコーポレーションに入社し、DM営業に従事。 その後岩手県釜石市で復興支援員(釜援隊)として、まちづくり会社の設立や、組織マネジメント、高校生とのラジオ番組づくり、馬文化再生プロジェクト等に携わる(2013年~2015年)。2015年3月にNPO法人グローカルアカデミーを設立。事務局長を務める。2021年3月、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。

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