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#経営・組織論

答えを探すのではなく創る—CSV時代のコンサルティングを全社で切り開くデロイト トーマツ コンサルティング

2016.06.15 2,741view 

デロイト トーマツ コンサルティングが、非営利団体やソーシャルビジネスを対象に無償コンサルティングを開始することを発表しました。「ソーシャル・イノベーション・パイオニア」プログラムと呼ばれる今回の取り組みは、持続可能な社会の構築に向けて、特定の課題分野において高いビジョンを掲げ、革新的な取り組みを行っている非営利団体やソーシャルビジネスを広く募り、応募のあった中からデロイト トーマツ コンサルティング専属チームが無償のコンサルティングを通じて成長を支援するものとなります。

昨年「100年先に続くバリューを、日本から。」を新たなスローガンに掲げた同社は、どんなビジョンを持ってこのプログラムを生み出したのでしょうか。デロイト トーマツ コンサルティング入社前には国連で緒方貞子氏の補佐官を務め、2016年に同社CSR ・SDGs推進室長に就任された田瀬和夫氏、本プログラムを担当されるシニアマネジャー・小國泰弘氏にお話をうかがいました。

CSR ・SDGs推進室長、田瀬和夫氏(右)とシニアマネジャー、小國泰弘氏(左)

CSR ・SDGs推進室長、田瀬和夫氏(右)とシニアマネジャー、小國泰弘氏(左)

純粋なCSRを提供してきた5年間から、積極的な社会的価値創出へ踏み出すための新プログラム

— 貴社ではこれまでもCSRの活動としてNPO/NGOへのコンサルティングをフルタイムで提供されてきたとうかがっています(参考記事)。そういったこれまでのプログラムと今回のプログラムとでは、どういった違いがあるのでしょうか?

小國: 弊社のCSRの活動としてのプロボノは5年前から始まり、これまで一般企業とのコンサルティングの中で磨いてきた技術やノウハウをNPO/NGOの皆さまに対して提供することを行ってきました。今回新しく生まれたプログラムでは、営利企業も対象とさせていただきます。営利企業という形をとっていても社会的価値の創出に取り組んでいる方はたくさんいらっしゃいますので。

ただ、正直に申し上げますと弊社がやることはコンサルティングで、これまでとまったく変わっていないんですね。そこではなく、会社が目指していくもの、見ている社会の範囲がおそらく変わってきているんだと認識しています。つまり、今までは一企業の利益の最大化を目指して、一企業に対してコンサルティングを提供していたところから、それを通じてより社会や経済にまで影響を与えていきたいと思いだした流れがあります。そこから、スローガンもそうですが、今回のプログラムが生まれました。

シニアマネジャー・小國泰弘氏

シニアマネジャー・小國泰弘氏

— CSR活動が始まった5年前には、そういった社会や経済を見据えたものではなかったということですか?

小國: 1,000人企業になったタイミングで社会市民としての責任を果たすことを考えていかなければいけないと、2011年に始めたのがプロボノ活動でした。それから3年後の2014年に田瀬が国連から参画して、デロイトをより社会に貢献できるような会社にしていきたいという流れが加速してきたんです。

コンサルティングの一番面白いところは、「専門家では思いつかない正解を見つける」こと

— 具体的には、コンサルティングをどう活かして社会に貢献しようとされているのでしょうか?

田瀬: 私自身はコンサルタントではないところから弊社に入ったんですね。そうして現場を見ていると、とても面白い発見があります。まず、コンサルタントは徹底的に分析をして対象の課題を見つけるのはとても早い。例えば「このNGOはファンドレイジングができていない」といった分析はすごく上手です。徹底的に網掛けをして、論理的に、論理的に、論理的にやりますよね(笑)。まず、そういったお手伝いができるということはあります。

それに加えて、私が一番コンサルティングの面白いところだと思っていて、さらにコンサルタントにしかできないことだと思っているのは、「専門家では思いつかない正解を見つける」ということです。同じ業界内の人のほうが事情をわかっているに決まっているけれど、なぜコンサルタントに事業の改善を依頼するのかというと、コンサルタントは他のさまざまな業種、論理を見ているうえで多くの仮説を立て、その中から専門家だったらぱっと飛びついてしまう結論以外に正解を見つけ出すんです。

CSR ・SDGs推進室長・田瀬和夫氏

CSR ・SDGs推進室長・田瀬和夫氏

— それはどういった論理で生まれるものなのでしょうか?

田瀬: 企業秘密なので、内緒です(笑)。でも、大きく言うと「仮説思考」ということです。たくさんの仮説を立ててみてつぶしていくのですが、様々な業界を知るコンサルタントたちが仮説を立てると、その業界で25年やってきた方には考えられないような仮説が生まれてくるんです。加えて、特に経験のあるコンサルタントは絶対に無理だという仮説は自動的に頭の中で落ちていくので、あくまでも実現可能な仮説が20個くらいは提案できます。その中で、例えば専門家は1〜2しか思いつかないけれど、コンサルタントが思いついた3〜20の中で正解が1つ2つあったら、それで事業は改善されていくんですね。こういった能力を、儲かるかということを超えて、経済社会・社会課題の解決に貢献するために使おうと生み出したのが今回のプログラムです。

CSR、さらには、CSV(Creating Shared Value)の視点から言えば、そういった企業価値をどんどん創っていかないと、最終的に世界で日本経済の居場所がなくなってしまう状況ということもあります。欧米を中心にどんどん広まっていますが、SDGsにしても何にしても、社会課題を解決するようなビジネスモデル、あるいは産官学の連携をもっと進めていかないと日本がよくなりませんし、世界にも追いついていけなくなってしまうと感じています。

「立場はフラットだけれども、目指しているところや戦略の考え方が少し違います」

— 実際にコンサルティングを受けられることになったら、どのような方にどういったコンサルティングをしていただけるのでしょうか?

小國: 現時点では、メンバーは社内で広く参加者を募集しようと思っています。なので、今回のプログラムに積極的に関心を持っているメンバーが担当につきます。また、普通のプロジェクトとしてアサインするので、通常の業務と同じようなプロ意識でご一緒させていただくということは言えると思います。要するに、コンサルタントにしてみれば普通の事業会社にアサインされるか、NPOにアサインされるかの違いしかないので、片手間ではなくモチベーション高く本気の仕事として担っていってくれるはずです。さらに、品質管理者としてパートナー、ディレクタークラスが必ず最終責任者として入ります。スタッフ数は、案件の規模によって変わってきます。

— コンサルタントの方が現場でソーシャルビジネスとつながるということの価値を、どんなふうに捉えていらっしゃいますか?

田瀬: 現場の一人ひとりが、会社が見据えるビジョンに近づいていけるということですね。この5年間のCSR推進室の反省としては、当初想定していたほどは社員を巻き込めていないということなんです。案件数が限られていることと他メンバーも現業で忙しく、巻き込めたとしても限定的なものになってしまっていて。そういった意味で、このプログラムは推進室のメンバー以外から多く参加者を募りたいと思っています。そうすると、関心がある人は当然来るでしょうし、そうでない人もおそらく以前よりは関心を持つようになると思うんです。その一助になれば、このプログラムは社内的にも意味があると私は思っています。可能であれば、マネジャーすら推進室のメンバー以外にお願いできればと考えているくらいで。

今回から営利企業も対象となりましたが、今まではある種ピュアなチャリティーに対してやっていたものを、インパクト創出という視点から企業を対象にしたのは、もっと社内のコンサルをCSVに巻き込みたいという気持ちが実は多くあるということです。

小國: 一緒に社会をつくりたいメンバーを今回はもっと入れていきたいですし、そうして社内から社会を創り出すムードが生まれれば本当に面白いですよね。新卒採用の現場でも、やはり社会貢献を希望されている若い方は本当に多いと聞いています。セミナーを開いても、一番質問があるのはCSR,CSVの部分であったりするくらいで。学生さんの関心も本当に高いですし、それがやりたいと望んで入社される方も多くいらっしゃるので、そういった思いを実現する一助になればと思っています。

田瀬: あとは単純に、我々コンサルタントも知見や視野を広げないと、NPOの未来を見据えた視点についていけず、向き合えなくなってしまいますから。そこが面白いですよね。これまでは、「NPO/NGOというのは未熟な組織です」と日本の中では言われている状態で、おそらく我々としても「ビジネスで培われているナレッジを移転します、教えてあげます」という視点がかなり強かったと感じているのですが、今回こういった設定でプログラムを進めていくことで、「立場はフラットだけれども目指しているところや戦略の考え方が少し違います」という関係性を築いていけるのではと感じているんです。

会社入り口に掲げられたスローガン

会社入り口に掲げられたスローガン

既存のものを組み合わせて、マイナスをプラスにするのがコンサルティング

— 今回のような非営利団体への支援のほかに、今後貴社がしていこうとしている取り組みはありますか?

田瀬: 今後コアのビジネスとして考えていこうとしているのは、今まで社会的コストだったものをどうやってプロフィットに転換するか、ということです。例えば「ごみ山」は世界中にありますが、あの土地が更地だったら、どのくらい経済価値があると思いますか? そんなふうに考えていくと、じゃあ何を組み合わせればごみ山を経済価値のある状態にできるのかという話になってくるわけですね。さらに例えを出すと、日本が国際的に人道支援の文脈でどのくらい貢献できるか--。現状は国際機関への資金提供がメインとなっていますが、日本の地震をはじめとした防災ビジネスの知見をもってすると、どのくらいの社会的価値が生み出せて、例えば日中間の関係にいかにプラスの影響を及ぼすのか。そういったことを考え始めると、いくらでも新しい仮説が出てきます。

私自身も、政府にいたときにはそういった仮説はまったく立てられませんでしたが、国連を経験しコンサルティングの業界へ入ったいま、「ああ、こういう組み合わせもあるじゃないか」と考えることができるようになりました。 私たちは、まったく新しい技術を創り出すことを目指しているわけではないんです。既存のものを組み合わせるだけで、マイナスがプラスになったりする場合がある。そういった思考はコンサルしかできないと、僕は思っています。

— これまではコンサルティングは「分析」することかと思っていましたが、今日のお話をうかがい、「価値創造」の方々なんだなとコンサルティングに対する視点がまったく変わりました。

小國: だといいな、と思っています。まさにそこを目指したいというのが、このプログラムが生まれた流れだと思うんですよね。

田瀬: それが私たちにとっての社会的な責任のとり方なんじゃないかなと。せっかくこういうスキルがあるんですから。私たちが一番尖っている部分の能力を使って社会的な価値を創出するというのが、CSV、企業の社会的責任の果たし方でいいんじゃないかなと思っています。

エティックスタッフ2人も加わり。このメンバーでプログラム進めてゆきます!

エティックスタッフ2人も加わり。このメンバーでプログラム進めてゆきます!

この記事を書いたユーザー

DRIVE編集部・桐田理恵

DRIVE編集部・桐田理恵

NPO法人ETIC. DRIVE編集部。1986年生まれ、茨城県育ち。大学時代は文芸の研究をしつつルワンダ人とのコミュニケーションを楽しみ、2011年より医学書専門出版社にて企画・編集職に就く。精神医学や在宅医療、緩和医療の書籍づくりを経て、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。

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